第3話 辺境伯の屋敷

 私は、リンドラ様とともにレインズス家の屋敷に来ていた。

 そこで、客室らしき部屋まで通され、リンドラ様と向き合って座っている。


「さて、コルニサス家もかなり大変なことになっているみたいですね」

「はい、そうなんです」


 まずリンドラ様が話してきたことは、そのようなことだった。

 コルニサス家の現状については、リンドラ様も知っているだろう。その現状に対して、悲しそう気な顔をしてくれているのは、少し嬉しいことではある。


「まさか、サンドロ様があのような事件を起こすとは……今でも信じられないことです」

「そうですね……私も、そのことについては驚いています」


 リンドラ様は、サンドロが事件を起こしたことに驚いていた。

 それについては、私も驚いていることだ。サンドロは、そのような事件を起こす男ではなかったはずである。

 身内贔屓を抜きにしても、彼が罪を犯すことを選ぶのは考えにくいことだ。彼も、コルニサス家の発展のためにずっと尽力していた。そのため、家の不利益になるようなことをするのはかなり意外なことだったのである。


「それだけ、色恋沙汰は人を狂わせるということなのだと思います」

「なるほど……それは、恐ろしいことですね」


 私の言葉に、リンドラ様はゆっくりと頷いた。

 サンドロを狂わせたのは、色恋沙汰だった。それが、彼を狂わせてしまう程、恐ろしいものなのだろう。


「最も、私には、色恋沙汰というものはよくわかりませんが……」

「そうですね……私も、そこまでわかっている訳ではありません」

「そうですか……」


 最も、私には色恋沙汰というものはよくわかっていない。

 なぜなら、私は恋愛というものをしたことがないからだ。

 あまりそういうものに興味がなかったのである。それには、私が貴族であることが関係しているかもしれない。


 貴族である限り、婚約などは家同士の結束を強める手段のようなものだ。そのため、恋愛に興味を持ってもどうせ叶うことがない。

 そういった面がわかっているからこそ、私は恋というものに興味を持たなかったのだろう。

 ただ、それはサンドロも同じだったと思うので、一歩間違えれば、私も彼のようになっていたのかもしれない。


「まあ、とにかく、我々はこれから婚約者です。これから、よろしくお願いします」

「あ、いえ、こちらこそよろしくお願いします」


 そんなことを考えている内に、リンドラ様が挨拶をしてきた。

 その挨拶に、こちらも頭を下げて返す。

 こうして、私はリンドラ様の婚約者となるのだった。

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