第2話 辺境伯の元へ
私は、レインズス家の領地であるトルマディアという町に来ていた。
ここは、ドーサス王国の国境近くにある町である。
レインズス家は、辺境伯という地位にある家だ。その役目は、国境近くの警備であり、非情に重要な役割である。
そのため、貴族の中では上位の地位にあり、その力は強い。そのような家とコルニサス家が婚約できることは、非常に強力であるといえる。
「寒い……」
トルマディアは、北の辺境にある町で、気候的にはとても寒い。
そのため、私の体は少し震えていた。知識がなかったため仕方ないが、もう少し厚着をしてくれるべきだっただろう。
「よかったら、このコートを」
「え?」
そんなことを考えている私に、厚手のコートをかけてくれる人がいた。
長い金髪に、整った顔立ちの若い男性だ。
「あ、ありがとうございます……」
「いえ、妻になって頂くあなたを労るのは当然のことです」
「妻?」
その言葉で、私は理解した。目の前にいる人物が、私の夫となるリンドラ様であるということを。
「リ、リンドラ様なのですか……?」
「はい。リンドラ・レインズスです」
「そ、そうだったのですね。これは、失礼致しました」
私はすぐに気持ちを切り替えた。
目の前にいるのは、コルニサス家を助けてくれようとしている人だ。そのような人の前で、みっともない姿は見せられない。
「まさか、リンドラ様が直接迎えに来て下さるとは思っていませんでした。感謝いたします」
「私があなたを迎えるのは当然のことです」
私の言葉に、リンドラ様は平然と答えてきた。
なんとも、堂々としている。流石は、レインズス家の現当主だ。
「さて、ここで話していては体が冷えてしまいますから、屋敷に向かいましょう。向こうに馬車を用意しています」
「はい、ありがとうございます」
「それでは、私の手をとってください。雪で足元が悪いので、私の手を決して離さないようにお願いします」
「は、はい」
そこで、リンドラ様は私に手を差し出してきた。
私がその手を取ると、リンドラ様はゆっくりと歩き始める。
確かに、足元は雪が積もっており、とても危なそうだ。私は、しっかりとリンドラ様の手を握りしめて前へと進んで行く。
「大丈夫ですか?」
「は、はい」
手にリンドラ様の温かさを感じながら、私は歩き続ける。
なんだか、色々な意味で緊張してしまう。
こうして、私はリンドラ様と出会ったのだった。
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