第7話 古傷抉られまくりです。
現状を整理しよう。
“お”の一字会得。これで“あ”“う”と合わせて三文字会得。
黒の森、ユニコーンさんに囲まれている、俺。
お友達になってくれませんかと願い出る、俺。
純白のユニコーンさんはみんなもれなく紫色の靄に囲まれている。
いやー、不思議だなー。目とか口とか耳とかは足とかはきちんと認識できるんだよなー。
「おい、小童」
「はい」
恐らくは俺が最初に会ったユニコーンさんだ。声が同じだもの。でも紫色の靄に囲まれているから定かではない。
しかし。ああ。自分の顔が見られないのが至極残念だ。
きっと俺は今、菩薩にも負けず劣らずの慈愛に満ち足りた笑みを浮かべているはずなのだ。
口だって、お告げを捧げる祈祷師に負けず劣らずの貫禄に満ち足りた声音を出しているはずなのだ。
おお。なんと素晴らしき優秀な俺の身体と脳みそよ。
精神に負けずそのまま冷静沈着なままでいてくれよマジで。
「魔法を会得しようとしてんだって」
「はい」
はい。ブーイング―。
窪地の真ん中に居るので、一極集中がすごい反響しているフーーーーー。
「止めろ」
「なぜ?」
はい。ブーイング―。
さっきよりも殺気も音量も大きくなっているゼフーーーーー。
「魔法は危険なものだ。だから滅びた。滅ぼさせられたんだ」
「ええ」
ええーーーーー?そうなのーーーーー?
科学に負けて滅ぼらされたんだじゃないのーーーーー?
「魔法会得を認可するなど。あいつも何を考えているんだか」
「あの方は私の想いに応えてくれただけです」
あいつって、師匠だよね。そうだよね。ああ、師匠と知り合いならこの地の永住は回避だねこれ以上の手荒いおもてなしもないよねフーーーーー。
「ふん。あいつが何を考えているのかは知らんが。俺たちユニコーンは見逃すわけにはいかん。魔法会得を諦めると言わん限り、ここからは帰さん」
おー、仕事と私事はきっちり区別するしっかり者さんだねフーーーーー。
周囲のユニコーンさんは物は投げていないはずですよねだって何も当たっていないんだものどこも痛くないんだもの。
「命は取らん。ここに居てもらうだけだ」
「諦めません」
おいおい、優秀な俺の身体と脳みそよ。
嘘も方便って言葉は知っているかい?
「一度でも口にすれば、まことになってしまいます。私は魔法会得を諦めない。諦めたくない。魔法を見せたい相手が居るのです。その人物に見せたい。この世は解析不可能な事象があるのだと知らせたい。感激さえ事細かに説明するその人物の口から言葉を封じてやりたい」
はい。嘘偽りない言葉です。俺が魔法会得する理由の一つです。
「私は魔法を危険なことに使うつもりは毛頭ありません。感激させたいだけです。どうか、私の気持ちを分かってください」
「科学で感激させろ」
ブーイング殺気最骨頂です。
俺の古傷抉られまくりです。
科学で感激ですかハッハッハ。
ええ、違いますよ違います逃げていません。
人には得手不得手があるものですそして俺は科学が苦手。
頑張ればきっと。
いえいえ、苦手な事を頑張るのって相当根気要りますよしかも全然実を結ばなければなおさら。
いえいえ、頑張りましたよがーんーばーりーまーしーった。
義務教育まではそれはそれは頑張りましたっ。
でもやっぱり無理でしたっ。
頑張りだけが評価されて及第しましたっ。
そんで頑張る方向を変えただけですっ。
魔法にシフトチェンジしただけですっ。
「なら科学と魔法以外で感激させろ」
「無理です。魔法に心が奪われました」
「ならここに永住だな」
真正面に向けていた顔を高々と上げた。
走り出した。
菩薩も祈祷師もさよならだ。
「あうおあうおあうおあうおあうおあうおあうおあうおあうおあうおあうおあうおあうおあうおあう」
殺気が一段二段三段と跳ね上がったが知るか。
俺は、
「俺はあいつにすごいねってだけ言わせたいんだー!!!!!!!」
はい。ここで俺の激情に圧されて通してくれたらハッピーだったんだけどね。
「はい。永住決定」
現実ってそう優しくないよね。
「おうあおうあおうあおうあおうあおうあおうあおうあおうあおうあおうあおうあおうあおうあおう」
一か月間俺は森をさまよった
出口と白色を探す為に。
命は取らないとの発言の通り、食料と健康診断を与えられながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます