第29話
「キャー」「なんだッ!?」「うわー」「怖いよ~」
ロープウェイの中は騒然となる。
今、地上どのくらいなんだろう。
とにかく高い。
そして、たぶんここから落ちたら全員死ぬ。
もちろん、りんこも……。
りんこたち以外の乗客もベンチにしがみつきながら震えていた。
そうこうしているうちに、窓から次々とネザーが侵入してくる。
「きゃあああああ」
りんこが悲鳴を上げる。
「どうしたッ!?」
ブランが声をかけると、りんこはブルブル震えながら「お、おばけが……」と言ってネザーを指差した。
「おばけッ!? そんなもの、どこにもいないぞッ」
そうか、りんこ以外にはネザーの姿は見えないのか。
いや、感心している場合じゃない。
何とかしよう。
ネザーはくんくん匂いを嗅ぐようにして近づいてくる。
探しているのは、りんこか!?
確か以前もりんこはネザーに襲われていた。
どうやら、救世主の存在を喜ばない連中がいるらしい。
俺はりんこに念のため、配給係の女の子からもらったHPプリペイドを握らせた。
「いいか、いざと言う時はこの銀の部分をこすって、目に当てるんだ。そうすればなんとかなる」
「う、うん……」
不安そうな顔をしながらもうなずくりんこ。
レモンたちはりんこの手に突如出現したカード状の物体に驚いた。
「そ、それ、どうやって出したの!?」
レモンが訊くと、「レミエルさんが……」とりんこは答えた。
「レミエルッ!? それってりんこの妄想じゃなかったのかッ!?」
ブランが驚く。
「おいッ、レミエルッ、お前、本当にいるんなら何とかしろッ」
おいおい、なんで命令口調なんだよ!
まあ、いっか。
相手は4体。
この前よりちょっと多いが、S級天使にかかれば瞬殺だろう。
俺は点滴スタンドをアストラルモードで出現させた。
こちらに気づき、じりじりと間合いを詰めてくるネザーたち。
腰を沈め、襲い掛かってきた一体を横払いに斬る。
まずは一体。
シュワーっと塵になるネザー。
間髪入れず襲ってくる二体目も「えいや」と斬り伏せた。
調子がいい。
「おおーっ」
唯一、俺のかっこいい戦いを見ることができるりんこが歓声を上げた。
「いったいどうなってるッ!?」
「レミエルさんがふたり倒した」
「やるじゃないかッ、レミエルッ」
くう~。なんか腹立つ~。
三体目、四体目は同時に襲い掛かってきた。
「このやろお!」
一体を串刺しにして、残りの一体に向かって点滴スタンドで突きを食らわせようとしたが……。
「かわされた!」
最後のネザーは体をぐるんと回転させ、俺の突きをかわした。
ネザーはそのまま天井に張り付き、りんこに向かって一気に急降下する!
「やっべっ!」
つづく!!
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