第26話
「レミエルさんッ!?」
いつもバカでかいブランの声がさらに大きくなる。
「誰だよッ、そいつはッ!?」
ブランに問い詰められ、りんこのつぶらな黒目が右に左にせわしなく動いた。
「て、天使……みたいな?」
シーン……。
りんこの発言に、みんなが黙り込む。
ヒュー……。
バベル第2層の地面を吹き抜ける風。
チュン、チュン……。
どこかで鳥が鳴いているのが聞こえた。
「ぷっ……」
最初に噴出したのはブランだった。
「クックックックッ……」
忍び笑いと呼ぶには大きすぎる笑い声がしだいに大きくなり、大笑いに変わる。
「ハッハッハッハッハッハッハッ」
フィリップとウィリアムもつられて笑う。
「ははははははは」「はははははははは」
りんこも顔を引きつらせながら笑った。
「ハハハハハハハハハ」
その場にいる俺以外の全員が笑う。
「ハッハッハッハッ」「はははははは」「はははははは」「ハハハハハハハ」
よくわかんないけど、俺も笑っとくか。
「アハハハハハハハ」
ひとしきり笑った後で、ブランが言った。
「やっぱりお前は面白いヤツだなあッ!」
ブランがりんこの肩をポンと叩く。
「天使っていうのはなあッ、想像上の存在ッ、そんなヤツはいないんだぜッ」
いや、いるよ! いるいる! ここにいるって!
「お前、そういう話、好きだもんなッ」
ブランはりんこの話をまるっきり信じていないようだ。
くそっ、こいつに俺の姿を見せてやりたい!
こいつがビックリする顔を見たい!
「りんこ、こいつに言ってやれよ! 天使は本当にいるんだって」
「うーん、でも……」
ちらっ、ちらっと俺の顔を見て困った表情のりんこ。
大声を出しながら笑いあう3人の男子は俺とりんこのやり取りに気づいていないようだった。
りんこが俺に小声で囁く。
「逆にバレなくてよかったんじゃないですか?」
「た、たしかに!」
でも、なんだろう、この屈辱感は……。
「ところでりんこッ、なんでレモンの家に行こうとしてたんだよッ?」
ブランは話題を変えて言った。
「レモンのお父さん、建設現場で働いてるでしょ? だからニムロドさんに会わせてもらえないかと思って」
とりんこが答える。
「ニムロドって、昨日、レモンを助けてくれたあのおっさんのこと?」
とフィリップが口を挟む。
「なんでニムロドさんに会いたいんだい?」
ウィリアムがりんこに訊いた。
「昨日のお礼とかいろいろ……」
さすがに「嘘をついているから真相を確かめたい」とは言えず、りんこは適当にごまかした。
それを聞いて、ブランの顔がパッと明るくなる。
「そうかッ、じゃあッ、俺たちもいっしょに行っていいかッ?」
「えっ、なんでお前たちがついて来る?」
と突っ込んだが、もちろん、ブランたちには聞こえない。
「いいよ」
りんこが応えた。
こうして、りんこ、ブラン、フィリップ、ウィリアムの4人とフクロウ1羽、そしてもうすっかり忘れ去られている俺はレモンの家に向かった。
レモンの家に到着すると、ちょうど、レモンが血相を変えて勢いよく飛び出してきた。
「た、たいへん!」
いつも落ち着いているレモンの取り乱した姿を見て、りんこたちは驚いた。
もちろん、俺も驚いた。
いったい、何があったんだ!?
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なんでそんなに慌てていたのか、その理由を私、シトラス・レモンがお話します。
つづく!
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