第22話
バキバキバキィィ!!!!!
木々を倒しながら3メートルを超える人型の巨体が姿を現わす。
「ひぇぇぇえ、きょ、巨人だァァァ」
フィリップはその場に尻餅をついて倒れた。
「おいッ、落ち着けってッ」
ブランはフィリップに声をかけるが、彼自身も緊張で顔が強張っている。
俺はすぐにヒト型の姿に戻ると、呆然と立ち尽くすりんこをかばった。
こんなところで救世主様に死なれるわけにはいかない!
点滴スタンドを取り出して構える。
「こ、これが巨人……」
恐怖に足がすくんでいるのかと思ったら、りんこは目を輝かして見つめていた。
「たくましい腕! 太い足! これはまさに……」
言いかけて、りんこは首を横にかしげた。
「あれ? なんか生き物というよりも、乗り物みたいですけど」
なに!?
確かによく見ると、体が金属でできていて、生身と言えるところがまったくない。
「熱動機……」
ウィリアムがポツリと呟く。
「本で読んだことがある。燃料を燃やしてそれを動力として動かす機械……。でも、まだ空想上の乗り物で、実現するには時間がかかるって書いてあったけど……」
すると、巨人の動きがピタッと止まり、プシューという音を立てて、胸の部分がパカッと開いた。
中から中年の男が出てくる。
ヒゲ面の長髪。髪は黒。ゆったりしたローブを着ていて、歳は40歳くらいか。
眼光は鋭く、りんこやブランたちのことを観察している。
ちなみに俺のことは見えてないらしい。
りんこたちはいきなり現われた大人に、警戒すると同時に少し安心している様子だった。
「すみません!」
最初に口を開いたのはりんこだった。
鋭い眼光がりんこに向けられる。
「友達がいなくなってしまったんです! おねがいです! いっしょに探してください!」
りんこは必死に訴えた。
「なに言ってるんだよッ、こいつがまだいいヤツがどうかわからないだろッ」
ブランが小声でりんこに囁いたが、彼の声が大きすぎて完全に筒抜けだ。
たぶん、ヒゲの男の耳にも届いている。
「驚かせてすまなかった。私はニムロド。宮廷建築士だ」
男は穏やかな口調で話しかけてきた。
「ニムロド!? じゃあ、あなたがこのバベルの塔を作った人ですか!?」
どうやらウィリアムはニムロドという名に聞き覚えがあったらしい。
「そうだ。この塔は私が設計した」
淡々とした口調でニムロドが答えた。
「ところで、君たちの友達というのは、この子のことかな?」
ニムロドはそう言って、いったん操縦席に戻ると、意識を失ってぐったりしているレモンを抱えて出てきた。
「レモン!」
りんこがニムロドに駆け寄る。
「さっき、道の途中で倒れているところを発見した。そうか、君たちの友達だったのか」
「よかった……無事で……」
涙ぐんで、りんこはレモンを抱きしめた。
「り……ん……こ……?」
レモンが目を覚ます。
「どうして、私……ここは……?」
「ニムロドさんが見つけてくれたんだッ。よかったなッ。さあ、帰るぞッ」
ブランはそう言うと、まだ意識が朦朧としているレモンをひょいっとおぶった。
「それでは、私はこれで失礼するよ。気をつけて帰りなさい」
ニムロドはそう言うと、機械の巨人に乗り込んだ。
コクピットハッチが閉まると、ぐぉぉぉぉぉんという音を立てて熱動機が動き出す。
「すげぇぇぇ」
フィリップが口をポカンと開けて見上げている。
ズシン、ズシンと地響きを立てながらニムロドの乗った熱動機は去っていった
なあんだ。巨人というのはあの熱動機のことだったのか。
この世界の人は巨大ロボットなんて見たことないもんな。
誤解するのもムリない。
あたりは夕闇に包まれつつあった。
「よし、暗くなる前に帰ろうッ」
ブランはそう言って歩き出す。
りんことフィリップ、それにウィリアムもその後を追った。
その後、レモンは家に送り届けられ、りんこたちも解散した。
もうすっかり日が暮れている。
レモンが見つかってから、りんこは妙に口数が少ない。
まあ、本来の目的であるフクロウは結局、見つからなかったもんな。
無言のまま、家に向かって歩くりんこに俺は励ましの言葉をかけた。
「だいじょうぶ。フクロウもきっと無事だよ」
いつもなら「そうですよね!」と前向きになるのに、りんこの顔は暗いままだった。
「なんだよ、だんまりして。レモンも見つかったし巨人の正体もわかったし、おまけに二ムロドなんて有名人にも会えたんだぞ?」
「レミエルさん……」
りんこはいつになく真剣な表情で言った。
「?」
「あのニムロドって人、ウソをついています……」
えっ!? ええええええええええっ!?
つづく!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます