第10話

「この子に手を出すな!」


 俺は救世主をかばって、ネザーモンスターを睨み付けた。


 赤い目が俺を挑発するような目で見ている。


 やっぱり、気持ち悪いな、コイツ。


 今まで何度か任務で遭遇したことがあるけど、そんなに強くない……はずだ。


 自信なさそうに言ったのは、ひとりで戦ったことがなく、いつも先輩が倒してくれるからだ。


 チラッと後ろを振り返ると、救世主ちゃんの期待に満ちた眼差し。


 よーし、ここでいっちょ、キメてやるか!


 俺は武器を……と思ったけど、そうだ、武器持ってなかった。


 仕方ない。点滴スタンドでガマンしよう。


 俺は点滴スタンドを構えた。


 互いに相手の隙を見つけようと、探り合う俺とネザーモンスター。


「きええええええええ!!!」


 とりあえず、相手を威嚇するため、奇声を上げて点滴スタンドでなぐりつけた。


「グェエエエエエ!」


 ネザーモンスターは叫び声を上げると、融解し、地面に吸い込まれていった。

 

「やったな!」


 正直、冷汗もんだったが、この天才天使にかかれば、点滴スタンドでバケモノを倒すくらいたやすいことだ。


 しかし、安心するのはまだ早かった。

 別のネザーモンスターが彼女に跳び襲いかかろうとしている。


 と、その時、空から羽根のついた小さなモノが飛んできて、ネザーモンスターの頭に命中した。


 ネザーモンスターは思わぬ不意打ちによろめく。もう一発。再び急降下してくる小さな物体。


 どうやら鳥のようだ。

 掌に載るほどの小さなフクロウ。


 しかし、ネザーモンスターも馬鹿ではない。

 とっさにひょいとかわすと、細長い手でチビフクロウを追撃した。 地面に墜落するチビフクロウ。


 ありがとうよ、ちびすけ。よくやったな。後は俺に任せろ。


 俺はもう一匹のネザーモンスターにも攻撃を与えた(点滴スタンドで)。


 手ごたえアリ! 


 ネザーモンスターはぐちゃっとつぶれると、1匹目のヤツと同じように消滅した。


 ふぅ、危なかった。


「おい、無事だったか?えーと……」


 そういえば、救世主の名前、まだ聞いてなかった。


「りんこです。アップル・りんこ」


「俺はレミエル。キミを守るため、天界から来た天使だ」


「天使……」


 りんこは物珍しそうに俺の顔をのぞきこんだ。


 ちょ、近い、近い。


「天使って、初めて見ました」


 目をキラキラと輝かせるりんこ。ちょっとかわいい……。


 あ、しまった。俺の心の声って、全部筒抜けなんだっけ?


「どうしたんですか?」


「いや、その……」


 あれ?もしかして、今の聞こえてなかった?


「俺の心の声って聞こえてる?」


「いえ、もう聞こえてないです」


 そうか、よかったー。


 どうやらアレは一定時間しか効果を発揮しないみたいだ。


「なんか聞かれちゃまずいことでも考えてたんですか?」


「いやいやいや、なんでそうなる?全然、そんなことないって」


「だって、心の声が聞こえなくなったと言ったら、急に安心した顔したから」


 まったく信用されてないな。


「あっ!」


 りんこは急に立ち上がり、走り出した。


「おい、大丈夫かよ」


「この子、ケガしてる」


 彼女がしゃがみこんで、両手でそっと抱え上げたのは、さっき果敢にもネザーモンスターに挑んでいったチビフクロウだった。



「どうするんだよ、そいつ」


「家に連れて帰る!」


 そう言って、りんこは立ち上がると、フクロウを抱えて歩き出した。


 こうして俺と救世主、りんこの共同生活が始まった。


 うん?共同生活?


*******************************************************************************************


 そしてまた“わたし”の話になります。



つづく!!

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