第6話
なんてラッキーなんだ!
この大きなバベルの塔の中で、たった一人の救世主を探すのは大変だと思っていたけど、こんなに早く「救世主」が見つかるなんて。
さすが、俺。
やっぱり、「持っている」天使はちがうね。
並の天使なら2、3日かかりそうな任務を、どうよ?
俺の手にかかれば、こんなに簡単にミッションコンプリートしちゃうんだから。
そうとわかれば、話は早い。
さっさと任務をこなしてしまおう。
俺は天使らしく、精一杯威厳のあるポーズと声のトーンで伝えた。
「我の名はレミエル。
数多の天使の頂点、熾天使ミカエルの僕(しもべ)、ラジエルよりの使者として
キミ……いや其方を探しにきた。其方こそ我が見え、我を感じ、そして多くの迷える民を導くものなり」
キマった。
控えめに表現して、これはキマった。
完璧。100点満点である。
おそらく、後世、ヒトが記した書物にも書かれるだろう。
『天使レミエル、バベルの塔の救世主にあいまみえ、神の言葉を伝える』と。
それでたぶん、その書物は何百年も読み継がれ、やがて映画化。
Netflixで、7シーズン、全58話でドラマとしても配信されるに違いない。
その時はイケメンに俺の役を演じてもらいたいなあ。
なんて妄想はさておき。
俺はチラッと女の子の反応をうかがった。
ああ、やっぱり!
俺の予想通りだ。
あまりの神々しさに、地面にひれ伏している!
「よいよい。苦しゅうない。面を上げい」
と声をかけた。
一流の天使だけが持つ、一流のやさしさで。
しかし……。
反応がない。
おいおい。やめてくれよ。俺はそういう堅苦しいのはニガテなんだ。
もっと気楽に行こうぜ。グータッチとかしてさ。
彼女に近づいて、肩を叩こうとした。
スカッ。
俺の手が彼女の体をすり抜ける。
ああ、そうだった。俺は天使なんだ。
直接の物理干渉はできない。
仕方ない。耳元で囁きかけるだけにしておこう。
俺は彼女の顔に自分の顔を近づけた。
あ、なんかいい香り……。
いやいや、今はそれは関係ない。
「!」
その時、俺は気づいてしまった。
寝てる!?
そうか、だから反応がなかったのか。
きっと睡魔に勝てなかったんだな。エリート学校だから、きっと試験も難しくて夜遅くまで勉強していたのだろう。
……いや、ちがう。
何かがおかしい。何かが……。
そうだ!息をしていない!
ヒトは、他の生き物同様、空気を吸って、二酸化炭素を吐き出す。
でも、この子の口と鼻からは呼吸が感じられなかった。
おそらく、俺が人間だったらここで汗をダラダラ流していただろう。
これって、つまり……。
死んでるじゃん!
つづく!!
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