第2話 開拓地の合成人間
合成人間は慌てた風もなく口を開いた。
「おお、これは珍しい。人間とノポウ族が連れだって何の用かな」
「おまえこそノポウ族を使って何をしてるんだ」
アルドが噛みつかんばかりに言い放つ。これでも冷静を装ったようだ。
「アルド、ボクが話してみてもいい?」
「そうね、ここはポポロにまかせましょ」
「・・・・・・」
アルドたちのやりとりに、合成人間は腕を組んだまま、少しあきれたような顔をした。
「なんだ、用も言わずに仲間割れか?オレにも仕事がある。もう行っていいか?」
「待っておじさん」
「いや、オレはおじさんでは・・・」
「あの、ここでノポウ族がたくさん無理矢理働かされているって聞いて、ボク助けたいと思って見に来たんだ」
「無理矢理とは聞き捨てならんな。ここにいるノポウ族も、人間に荒らされない楽園を夢見ているんだぞ?」
「どういうこと?」
「我々はここを実り豊かな土地にしようとしている。ここは人間が寄りつかない土地だ。おまえ達は迷惑しないし、何の損もない。そうだろう?」
「・・・でも。でも、みんなあんなに倒れてるよ。なんで手当をしてあげないの?」
「多少の犠牲は仕方ない。ここの土には絶滅したヒドラの毒が残っている。もう解毒薬を作るすべはない」
「そんなのひどいよ!無理矢理連れてきてこんなのって・・・」
「いや、人間から邪魔されない楽園をつくろうと言ったら、みな喜んでついてきたのだよ」
「だましたんじゃないか!」
「そんなことはない。だからこそみな、倒れてもまた次の朝には土地を耕す。中には逃げ出す者もいるがな。さあ、分かったら行ってくれ。オレにはするべきことがたくさんある」
立ち去ろうとする合成人間にポポロが叫ぶ。
「待っておじさん!」
「あのな、オレはおじさんでは・・・」
「おじさんは合成人間でしょ?どうしてこの時代にいるの?」
「・・・おまえ達、なぜそれを知っている?!」
穏やかだった合成人間の顔に、驚きの色が広がった。
***
アルド達の話を目を閉じて聞いていた合成人間は、ゆっくりと目を開いた。
「ガリアードをもってしても、人間との共存はまだ成らぬか」
「オレはここに偶然やってきた。時空の穴を通ってな。
オレがここで、人間に荒らされない、豊かな土地をつくることができれば、未来での人間との争いもなくなるかと思ったが、その様子では結果は見えたな」
「・・・そうとは限らないと思う」
腕組みをしていたエイミが顔を上げた。
「マクミナル博物館は復活したわ。それなら、まだ望みはあるんじゃない?」
「マクミナル博物館が?!」
合成人間が声を上げる。
「この土地の開拓が上手くいけば、未来は少しでも穏やかになるでござるか?」
「そうね、やってみる価値はあると思うわ」
「未来のノポウ族も幸せになるかな・・・」
「よしっ。まずはノポウ族を助けよう。ヒドラの毒がなんとかなればいいんだよな?」
活気づいたアルドの声に、ヴァルヲが目を覚ます。いつの間にかアルドの足下で眠っていたらしい。
「だがオレが言ったとおり、解毒薬を作るにはヒドラの体液が必要だ。そしてそのヒドラはもうこの世にいない。おまえ達どうする気なんだ?」
「ヒドラについての情報がもっと欲しいな」
「それなら、マクミナルが何か知ってるかもしれないわね」
「おまえ達は、本当に諦めの悪いやつらだな」
合成人間がまぶしそうに目を細める。どんよりとした開拓地の空に、雲間から光が差した。
「オレの名前は、ジールだ」
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