第13話 迷宮の彼方に隠した秘密、真っ白な世界だった(4)
(……甘い匂い、がするような)
卵と砂糖の焼き菓子のような匂いが目を覚まさせ、完全に覚醒していない頭を起こした葵は、目の前の光景に飛び跳ねそうになるのを何とか抑えたが、動悸はそう易々とは鎮まってはくれなかった。
『ここ、私の家、だよね』
更級王から来年まで滞在して欲しいと頼まれた葵は、宮中にと勧める彼の誘いを断り、その足で城から少し足を伸ばした地区に一軒家を借りて、日中は城の中で、夜はそこで過ごしていたのだ。
葵は目の前にいる草玄から視線を忙しなく部屋のあちこちへ動かすも、どうやら借りた部屋のようで。
『???昨日、帰った、よね?』
昨晩、草玄はここまで自分を送り、その足で帰って行ったはずなのだが?疑問が詰まった頭で見つめると、草玄は背後に春の景色を実写させながら満面の笑みで告げた。
ああ、ぴーちくぱーちく、鳥の鳴き声まで聞こえる。
『帰って荷物をまとめて買い物して戻って来た時にはもう葵は眠っていて起こすのもあれかなと思いそのままにした』
息継ぎもしないでよく言えたな~、などぼんやりと考えながら、発言の内容をもう一度頭の中でなぞった葵。表情は菩薩のように穏やかだった。
『…何で戻って来たの?』
『一緒に住む為』
『誰と誰が?』
『葵と俺と、まぁ、孔冥。に』
『おはようございます、葵様。今日はいい天気ですよ。町を見学するには最適な日ですわ』
扉から身を乗り出したもう一人の来訪者、真矢姫を瞳に映しても、まだかろうじて菩薩である。まだ頭が完全に覚醒しておらず、この状況を掴みかねているのだ。
『真矢姫。どうしてこちらに?後宮にいるはずでは』
『城の中では退屈だと抗議したらこちらに移動することになりまして。武術の腕も高い葵様と草玄様の傍ですから許されたのですよ。ああ、愉しみです。自分で身の回りのこともするのですよね』
(朝からテンション高いな~)
今にも躍り出しそうな真矢に、葵は落ち着いた口調で返事をする。
『そうですね』
『それで早速朝食を用意しました。何だと思います?』
『玉子焼きです』
『正解です。葵様が特にお好きなお菜なのですよね。草玄様が張り切って作ったのですよ』
『真矢姫。それは言わない約束』
『まぁ、そうでしたわ。申し訳ありません、葵様。お忘れ下さい。本当は自然に生えていたのをわたくしたちが摘んで来ましたの』
『そうなんですか。玉子焼きって自然になっているんですね。初めて知りました。アハ、アハハハハハ』
『ええ、わたくしも驚きました。ウフフフフフ』
『いや~、びっくりだな。ハッハッハッハッハ』
『賑やかですね~。ニコニコニコニコニコ』
四人の笑いの合唱は今暫く続き、草玄が創り出した春の陽気に相応しい、心和む時間が流れたのであった。
(…どうしよう。甘すぎる)
葵、草玄、真矢、孔冥の四人が食卓に着くと、いただきますの合唱で一斉に、真ん中にドドンと立ちはだかる玉子焼きの山に箸を進め、口に運んだのだが。
(私の舌が、おかしくなったのかな?)
箸が停まりつつある自分に対し、他の三人はパクパクと口に玉子焼きを入れている。とても美味しそうに。ちなみに。その日のご飯は真っ白な米飯にたくあん、メインの玉子焼きのみである。
『葵。美味いか?』
『う、うん。美味しいよ』
満面の笑みを向けられあまり美味しくないと告げられるだろうか?否、できない。
『そうか。どんどん食え、な?』
『う、うん』
終始満面の笑みの草玄に押されるように、最早砂糖の塊と言っても過言ではない玉子焼きを口に運ぶ葵。笑みを返しながら結婚はやはり早いのではないかと考えるのであった。
(当分、甘い物はいいや)
『葵様。美味しかったですね』
『え、ええ』
(味も共感しているし。やっぱり、真矢姫の方がお似合いだよね)
見た目は癒しの姫。だが実態は元気溌剌の行動型。ちょっと人の話を聞かない突進型の気もあるのが欠点と言えば欠点だが。見ていて本当に癒される。元気を貰える。
『本当に草玄様は葵様のことがお好きなのですね』
真矢姫は優しい微笑を浮かべた。温かい、蒲公英を思い起こさせる笑みを。
『お食事を作っているところを拝見していましたのですが、本当に嬉しそうに、丁寧に、愛情を込めているのが分かって。温かい気持ちになりました』
『そう、です、か』
『草玄様のお気持ちは、迷惑ですか?』
『いえ、ただ、本当に、戸惑っているだけで。本当に、無縁の事だと、思っていましたから。勿体無いなって』
『もったいない、ですか?』
『ええ。彼ならもっと相応しい女性を見つけられるのではないかと。私は無鉄砲な少年のままですから』
『葵様は、男の方なのですか?』
『いえ、女ですけど。どちらかと言えば、男に生まれたくて。母によく叱られました。もっと行儀よくしろ、と。女の子なのだからと。反発心からかもしれませんね。何で女の子だけ大人しくしなくちゃいけないのか、と』
『わたくしの国は、真逆ですね。『男は大人しく、女は活発に』と。どうして性別に拘るのでしょうね。個々人、好きに生きればいいのに』
『真矢姫は、どうしてこの国に?』
『母に武人になるか、この国に嫁ぐか、の二択を迫られこちらに。予想外の返答だったのでしょうね。幾度も心は変わらないかと問われましたが』
不意に笑みを消した真矢姫は重ねる手を丸め、拳に変えた。
『武人など。痛い思いをするだけなのに、目指す方の気がしれません』
『他者よりも強くなりたいって、自分の力を誇示したい大莫迦たちですからね。私も。最強を夢見る少年です。命のやり取りは真っ平御免ですが』
ニッと無邪気な笑みを向ける葵につられてか、真矢姫もゆっくりと笑みを浮かべた。
『やんちゃな少年のようですね』
『まぁ、そうなりたいと思っていますから。少年のように、何時までも追い求め続けたいと。世の中は面白いですから』
『戦ばかりの世界でも、そう思いますか?』
『戦ばかりじゃないですから』
即答した葵の笑みは憂いをそっと吹き消すようで。堪えず真矢姫は俯き、震える唇で想いを発した。
『早く、終わって欲しいです。母上や姉上や、民が傷つくところは、もう、見たくない』
『…少し、外に出ませんか?庭に山茶花が咲いていて、見て欲しいです』
『はい』
真矢姫は差し出された手にそっと手を重ね、ゆっくりと歩き出した。母について行く幼子のように、置いて行かれないようにぎゅっと握る手に力を籠めて。
(頑張って下さい、草玄様)
手を繋ぐほどの近い距離にいるのに、遠くに感じる彼女を繋ぎ止めるのは容易な事ではない。そう実感すると、とても切なくなった。
『少しは気が晴れましたか?』
『……俺、何やってんだろうな』
台所で一人片づけていた時に現れ呆れた態度を見せる孔冥に、気落ちしている草玄は自嘲した。
『玉子焼き、結構な数を食べてくれましたね。まぁ、真矢姫も大部食べていたようですが』
『真矢姫は甘党だからな。試食してくれた時も、美味しいって言ってくれたし』
『…葵は違いますけどね。彼女の好む味からもかけ離れていましたし。それでも、言いましたね。美味しいと。完璧な笑みで。愛情を感じましたか?』
『最悪だな、俺』
『私だったら葵は言ったでしょうね。甘すぎて食べられたものじゃないと。実直に』
『……』
『葵は甘えていますよ。私には。でも、恐らく、あなたに甘える事はそうないでしょう。それでもまだ葵を求めますか?もしかしたら、真矢姫と一緒になった方が幸せかもしれませんよ』
『上手く行くって、言ったじゃねぇか』
『どちらかが我慢をすれば』
『悪いが、無理だ』
『では?』
『二人で我慢しない道を捜せばいいだろうが。おまえに甘えてんなら、俺にだって甘えられるって事で……希望をくれてありがとよ』
『莫迦で不器用な娘と息子を持った気分ですよ。全く』
『おまえが父親なんて御免だが、これからも助けてくれ』
『堂々と言う事ですか?』
『残念なことに、葵を幸せにするには俺一人じゃ………無、理、だ』
最後の一言は葛藤に葛藤の末に吐き出されたもので、顔が苦渋に満ちている。
(全く、これだから)
孔冥は目を細め、口の端を上げ、猫のような温かい笑みを浮かべた。
『訂正しますよ。葵は確かに私に甘えていますが、全部を預けているわけではないですよ。あの人は甘え下手ですから。あの人が心の底から甘えられるのを見るのも、私の愉しみですかね』
『俺が、甘えさせる』
『はい。頑張って下さい。応援していますよ。仕方がないですから、手助けもね』
肩を空かした孔冥に、なら、と、草玄はメモ帳を懐から取り出し、逃さないと言わんばかりに、ギンギンに光り据わった瞳を向けた。
『葵のこれまでの事を全て教えてもらおうか』
『え、嫌です』
『おい!』
『そんなの本人に聞けばいいじゃないですか。今回はサプライズですから協力したまで。お互いの事はお互いが直接言葉を交わして絆を深めて行くものでしょうが』
あまりの正論に、ばつの悪そうな表情を浮かべる。
『…葵の所に行って来る』
『莫迦正直に全てを伝える事が愛情表現ではないと思いますよ』
『分かっている』
先程とは打って変わり覇気のない背中に、孔冥は頑張りなさいと心の中で呟いた。
『あの、ね。玉子焼き、ちょっと、甘かった、かなと思うんだけど、草玄はあのくらいがいいのかな?』
真矢姫が気を使ってその場を離れ、今。葵と草玄は山茶花の前で、並んで枯葉が積もる地面の上に腰を落ち着かせている中、遠慮がちに告げられた言葉に、思わず全てを打ち明けそうになるのを堪える。
『あ、俺も甘いかな、とは思ったんだが、孔冥から葵は甘い玉子焼きが好きだって聞いて。甘すぎたな。真矢姫は甘党だからあれぐらいがちょうどいいらしいが』
焦りを見せないようにゆったりとした速度で言葉を紡ぐ。
『昼。夜でもいいが。その、葵の好きな味を教えてくれないか?』
『それなら草玄の好きなおかずとかも教えて。私も作るから』
(…なんか、すげー幸せかも)
いい雰囲気に、表情がにやけていないかとかなり本気で心配する。
『葵は、料理は得意か?』
『う~ん。多分。孔冥も文句は言いながらも食べてくれるし。でも最初はそうじゃなかったなぁ。魚は焼き過ぎたり、味付けが濃かったかと思えば、変な味になってたり。食べられなかったものまで創り出したりして。数十年してようやく。でもまだ発展途上だね。だって食べ物って奥が深いよ~。キリがない。すごいよね』
『葵は何でも『すごい』だな』
『だって、すごいよ。この身体もさ。細胞とか遺伝子とか。一応解明された事になってるけど、私にしたらまだまだ分かんない事だらけで。まぁ、勉強不足なだけかもしれないけど。謎だらけ。うん。すごい。面白い。知って行くのがすごい面白い。何かくだらない事もさ。へぇ~って。ただへぇ~って思うのも面白い。いや~。世の中面白い』
『…葵。やばい』
『何が?』
『ムラムラしてきた』
『へぇ。村々……村々してきた?歩きたくなったってこと?じゃあ、歩こうか』
立ち上がろうとした葵だったが手を握られ動作は強制停止させられ、腰を中途半端に浮かせる体勢になってしまった。草玄は手を握るも腰を下ろしたまま、顔も俯かせている。
(村々……ムラムラ?それって)
『いや~。寒くなったから人肌恋しくなるよね。うん。手を握りたくなるのも仕方がない。じゃあ、部屋に戻ろうか。ね』
口早矢にそう告げる葵。草玄の発言の意味を知りかなり挙動不審だ。
『あ。手と言えば。おにぎり。昼はおにぎりにしようか。具は梅に鮭に昆布に。他に何かある?高菜もあるね。それに。具なしでもいいか。塩だけで。でも海苔はかかせないよね。アハ、ハハハハ』
『葵』
『何であるかな?』
葵は場の空気を陽気なものにしようと必死であるが、軌道修正は叶わないらしい。
『接吻、したいけど、いいか?』
『いや~。その、まだ明るい時分ですし、そういうやり取りには向かないと言いますか。それに孔冥とか真矢姫『葵。真矢姫と長い買い物に出てきます。夜までかかるかも』『葵様。行ってきます。護衛の者は外で待っておりますのでご安心を。王直属ですから』『…………』
(置いてかないで!!)
猛速急で姿を消した二人を呆然と見送る葵。草玄は未だに顔を俯かせたままだ。
『いい、か?』
嫌だと告げてその場から逃げたい。だが、喉に何かがつっかえ言葉が出ずに、身体は麻痺したように動かない。さらに心臓が痛いほどに高鳴っている。
『え、と』
言い淀む葵だったが、ようやく顔を上げた草玄を見て、口を横に開き眉根を寄せた。
(…何で、そんな顔)
自信満々で何時でも余裕があって、小生意気な今までの表情とは違って、真っ赤にさせ不安げで。気付けば、握られた手もほんの少し震えていた。
『ずるいよ。そんな顔されちゃ。断れないじゃん。もう』
腰を上げる草玄に向き合い、顔を上げる。
『演技だ。葵はこんな顔でもしなきゃ、させてくれない、だろ』
頬に手を添え、顔を葵に近づける。
『葵。目を瞑って』
『や、やっぱ。止めない?』
『何で?』
『な、なんか。その。このままじゃ、先まで進みそうで。接吻だけだよね?』
『自信ない。けど、結婚前だから、我慢する、から』
『~~~ごめん』
自分と草玄の顔の間を両の手で遮る葵。激しい運動をしたように疲労感が半端ない。
『…葵』
(あ。何時もの草玄だ)
不満げな声音を発する草玄に、やっと安堵の溜息が出せる。
『ごめん。でも、色気ムンムンだったから。ちょっと、酔ってなかった?自分に』
『…少しは。けど、葵が悪い。あんなに無防備な笑みを向けて。ちょっとは男を警戒しろ。男はな。両想いになった途端勘違いすんだよ。何やっても赦されるってな』
『そう言われても。どうしろって言うのよ』
『だから今みたいにしてくれたら、有難い。正直、止められる自信なかった。襲うところだった。あ~あぶね』
『あぶねって。男はいいよ。疲れるだけで。女は子どもが宿るかもしれないんだよ。大変なんだよ』
不満げな表情を浮かべる葵に、草玄は申し訳なさそうに言葉を発する。
『けど、あれも最上限の愛情表現の一つで。全身を使ってさ、告白してるんだよ。愛してるって。男だって、そんな、軽い気持ちでしてるわけじゃない…てのを、今知った』
『………』
『おまえが嫌悪する男たちはさ、おまえと出会う前の俺もだけど。愛情ってのを知らないんだよ。貰えなかったか、受け止めなかったか。理由は個々人だろうが』
『だからって。赦されないよ』
『けど、男だけじゃないだろ。女だって、快楽だけを求めて男に縋るやつもいる。いや。不安な気持ちを消し去りたいとか、理由も色々なんだろうが。ただ性別のせいじゃない。個々人の問題で。だから。今の俺もそういうやつと同じだって、思われたくはない』
『……ごめん。でも、拒んだのは、そう思ったからじゃないって、知って欲しい』
『分かってる。俺が早急過ぎたんだよな。悪い』
『普通、逆だよね。私の方が年上で、引っ張ってかなくちゃいけないのに。姿って結構影響するよね。これが年相応のお婆さんだったら……草玄絶対惚れてないよね』
『莫迦にすんなよな。惚れたっての』
『いや、それはそれで引く……そうだ。欲情しそうになったらさ、すごいしわしわのお婆さんを思い起こせばいいんだよ。そしたら萎えるから』
『……いや。そんな『自分上出来』みたいな顔を向けられても。お婆さんが好みの人もいるわけで』
『そう、か。年上の人が好きな人もいるよね。五十歳上とか。どう見ても孫と祖父母なのに。恋愛も奥が深いね。うん』
『すごいか』
『う、ん。まだそこまでは行かないけど。奥が深い。うん』
『『すごい』の基準に達していないか。恋愛に本当に興味なかったんだな』
『自分のは。だけど人様の色沙汰恋には興味津々だった。ドラ…本とかのこう、もどかしい場面とか、思わずにやけて転げ回ってたし。『青春じゃー』って叫びたくもなった。ま。実際にはしなかったけど。傍目から見たら不気味だよね。ハハ』
『何か、普通だよな』
『普通だよ。多分。別に、特殊な能力持ってるわけでもないし、不死だって。手に入れたから手放せないだけ。てわけでもないけど』
『もし手放せるとしたら』
『手放さない。手放せない。だから、あなたとは一緒に死ねない』
強固な意志に、それでも自然と口元が綻ぶ。
『ああ。それがいい。死ななくていい。捜すからさ、俺』
『この世界では。でも、次は捜さなくていい』
『葵』
『人はすごいよ、草玄。だから―――』
一瞬間の出来事の後。葵は瞼を最大限までに上に持ち上げ、草玄を見つめた。
『これなら文句ないだろ』
『不意打ち』
『接吻までいちいち許可取ってたら一生できねぇし。文句あるか?』
『大いにある。心臓停まる寸前』
『死なないだろ?』
『死にませんよ。死にませんけど……』
『けど?』
『別に、何でもないです』
『そうか』
『……私、食材買って来る』
『なら俺も』
『一人で、行く』
『何でそんなに不機嫌な顔してんだ。可愛い顔が台無しだぞ』
『……草玄はずるい。余裕綽々で。こっちばっか、緊張して。ずるい』
『ま。初心な男ではない事は確か。だから、そりゃあ、引き出しも結構あるわけで。葵を一生退屈させない自信はあるけど?』
『私は、そんなにない。自分ばっかで。だから。何時か退屈にさせる自信ならある』
『なら二人で探せばいいだろ。いや、三人。孔冥も一緒か。相棒だっけ?』
『うん。相棒。天上から降りて来てからずっと』
『あいつに、恋慕の情とか芽生えなかったわけ?ずっと一緒にいて』
『うん。全く。相棒。大切な』
(あいつにヤキモチとか、時間の無駄だな)
柔らかな微笑を浮かべる葵に、されど仕方がないと溜息をつき、当初の目的を果たそうとした。
『あの、さ。葵のこと、もっと知りたい。だから、話してくれないか?』
『う、ん。いいけど。なら私も』
『俺は、聞いても胸糞悪くなるような話だからな。ほんと』
『話したくないなら、いいよ。別に』
『……けど。葵には、知っておいて欲しい。そうじゃないと、公平じゃない』
(俺のこと、軽蔑するかな)
彼女を失うかもしれなくとも、知っておいて欲しい。自分がどれだけ汚れた人間かを。それを知ってもなお、自分の事を好きなままでいてくれるかどうかを、知りたいのだ。
『家の中で話すか』
『うん』
共に歩き出し、速度を同じにする。時間を共有する。今は。これからも?
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