空町と草馬

空町「あ……草馬、さん……?」


草馬「……」


空町「あの……ね、私、部活のために

 考えていることがあって――」


草馬「攻略エリアのランクを下げるって話?

 そんなことするくらいなら、私はTACTIC部を辞める」


空町「えっ 辞めるって……そんな!

 草馬さん待って、私はね……」


草馬「今でさえたった2ランクのエリア。

 これ以上進めないどころか、後退するなんて、

 私には……あり得ない」


空町「う……うん……」


草馬「私には、どうしてもエリアを進まなければ

 ならない理由がある……」


草馬のその小さな呟きは、空町には届いていない。


空町「草馬さん……?」


草馬「……ううん、いい。しばらくの間、私、

 TACTIC部は休部にさせてもらう」


空町「そんなあ……皆一生懸命にやってるのに」


草馬「……全くそうは思わない。

 何のためにこの学園に送られてきたのかすら

 認識できていない人がほとんど」


空町「でもそのほとんどの人達は、

 自分の意思じゃなく、送られてきたんだから。

 それは私だって……

 

 学園生活くらい、楽しんだって

 いいんじゃない?

 部活以外にやりたいこともあるだろうし……」


草馬「ふぅん

 ……恋とか?」


空町「なっ なな……なに、

 ここ恋なんて、……

 しようもないじゃない!

 

 この学園には、男子生徒はいないのですもの」


草馬「ふむふむ、ふむ。

 まあ、空町の反応を見たかっただけ」


空町「……ふ、ふむふむ、じゃない!」


草馬「勿体ないな。あなたなら、もっと

 上のランクで戦えるのに」


空町「え……

 

 と、そ、そーかな、あはは……

 私は別に……他にやることもないから、

 TACTIC部に力を入れているだけ……」


草馬「私、あなたとなら……」


空町「……えっ。草馬、さん……?」


……


草馬「じゃ、私、行くね」


空町「あっ……」


空町は草馬を尚、引き留めようか迷ったが、

そのとき、校内放送が入り――


校内放送「空町さんは、校長室へ来るように」


空町「あ、草馬さん……

 ……」


草馬は足早に、その場を去ってしまった。

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