エピローグ

 サナの物語はこうして幕を下ろした。


 だが、彼女――イスカの物語はどうだろう。


 自室を出て一人になったイスカは、深く息をつき、そのままドアにもたれかかった。白制服のポケットから、学生証が入ったパスケースがするりと落ちる。

 らしくないな、と思いながら、イスカはそれを拾い上げる。

 自分の写真を改めてじっくりと見つめた。

 金色の髪と碧眼。

 彼と瓜二つの顔が映っている。

「わたしの名前はイスカ」

 振り払うように呟く声もまた、彼と同じだ。

 逃げられない。生まれたときから、ずっと。

 イスカはパスケースを握りしめた。

 後悔もすべて握りつぶしてしまいたかった。

 前回の彼に関わる事件で決意したというのに。今度こそは未然に防いでみせる。誰にも危害を加えさせないと。今度こそ、今度こそと決意する自分をあざ笑うかのように、彼は無慈悲な遊びを繰り返す。

「……キュリオ。今度こそ、次はないよ」

 目を閉じ、遠い過去のことを追憶する。

 炎の中で笑うあの子の姿を。 



※参考文献

企画・制作:株式会社スクウェア・エニックス、編集・執筆:スタジオベントスタッフ(2018)『アナザーエデン時空を超える猫 ワールドアルティマニア』スクウェア・エニックス.

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追憶の胡蝶と夢見のサナギ 柚木はる @morino_haruwo

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