第15話 イブの時間
それから数ヶ月が過ぎ ――――
ある日の食事の後の会話での事だった。
コーヒーを飲みながらゆっくりしていた。
「えっ!?イブの日、店営業しないんですか?1番盛り上がりそうな気がするんですけど」
「去年、営業していたけど売れ行き良くなかったから今年は良いかな?って。それに今年はジングルベルだから♪ 荘史とデートするし♪」
「そうなんですね。荘兄とラブラブデート…真里絵さん、これからも荘兄の事、宜しくお願いします」
「勿論!ところで佳音ちゃん」
「何ですか?」
「荘史ってベットの上って、すっごい男の色気あるわね? Hも上手だし癖になりそう♪」
「ゲホッ、ゲホッ」
「姉貴っ!佳音にそんな事唐突過ぎだから!」
「あら?ごめん…つい…」
「そ、それで色気って何があるんですか?」
「1つ1つに愛を感じるの♪ キスも上手だし」
「…そ、そうなんですね」
「姉貴がご無沙汰だっから何でも過剰に反応してんじゃねーの?」
「失礼ねっ!」
「だけど事実だろう?」
「違うわよ!あの優しい雰囲気からは想像つかない位、男の色気あって愛を感じちゃって♪」
「姉貴、のろけとか良いから」
「のろけのつもりはないわよ?」
「いやいや、のろけだろう?」
「お互いの愛があるからじゃないですか?」
「えっ?」
「真里絵さんが荘兄を愛してくれてるように荘兄もそれに応えてくれてるからだと思いますよ」
「佳音ちゃん」
「すっごい羨ましいです!私も良い人紹介してもらおうかな?グイグイ引っ張ってくれるような」
「お前が引っ張って行くの間違いじゃねーの?」
「あのねー」
「お前、同級生が良いんじゃねーの?」
「同級生!?」
「年上だとお前背伸びしてありのままの自分出せない感じだし、年下だとお前が引っ張っていかなきゃみたいな感じになりそうじゃん?」
「だったら雄真が同級生紹介してよ!」
「いやいや、お前に紹介する男いないから逆に申し訳ないから」
「何それ!だったら、雄真が私の彼氏になってよ!」
「はあぁぁっ!?絶対ヤダ!」
「全否定、全拒否された!」
「お前の我が儘に悩むの嫌だしっ!つーか、お前を女として見れねーから!」
「酷っ!普通に傷つくんですけどっ!……やっぱ…私…恋愛出来ないんだろうな…色気ないし…子供っぽいから…性格も悪いし…男の子に産まれれば良かった…部屋に行きます…」
「佳音ちゃん?」
「佳音?」
私は部屋に行き、ベットにダイブした。
「………………」
「私……本当に恋愛出来るのかな?」
「ちょっと、雄真っ!」
「何だよ!」
「謝って来なさいよ!」
「いやいや謝る理由ねーし!」
「佳音ちゃん、すっごいショック受けてたわよ!」
「アイツはそれ以前の問題だから」
「えっ?」
「アイツは……前の彼氏に相当傷付けられてんだよ……店で性格悪いって評判になってるって男に引かれてるからって……自分で壁作ってんだよ……」
「だったら尚更……」
「分かってるよ!アイツを取り戻す方法あったらとっくにしてんだよ……アイツは自分自身で自分責めてるから……俺がアイツを好きだったら自信持たせてやってる……」
「雄真……」
「今の俺には何も出来ない……傷付けるだけだから……励ましの言葉が見付からないんだよ」
「………………」
そしてクリスマスイブの日。
「イブなのにシングルベル……雄真もいないし……一人淋しく留守番……」
私はゴロゴロしていた。
その日の夜。
私は誰もいない為、お風呂上がりにバスタオルを体にくるみ鏡とにらめっこ。
「あーーーっ!空しい……淋しい……人恋しい……誰か私を連れ去ってーーーっ!」
ペシッと背後から後頭部を叩かれた。
「いった!」
バッと振り返る私。
「雄真っ!?」
「お前……馬鹿?」
「どうせ馬鹿ですっ!雄真、彼女とデートじゃなかったんだ!遅いからてっきりラブラブデートと思ったけど」
「彼女、俺いねーし」
「相変わらずいないんだ」
「それより洋服着ろよ!風邪引くぞ!」
「別に、そん時は雄真が温めて♪なーんて……まあ、その前に、どうって事ないか。女として見れないって言ってたし」
「言っておくけど、俺も一応男だって事分かってんの?」
「分かってるよ」
「………………」
「ねえ、雄真……私、恋愛出来るかな?性格悪いし私の事好きになってくれる人現れると思う?」
「………………」
「ねえ、聞いて……」
言い終える前にキスされた。
胸が大きく跳ねる中、至近距離で見つめられる眼差しにドキドキと胸が加速する。
「……なあ、お前さ自分で自分傷付けんの辞めたら?」
「えっ?」
「色気あるとかないとか……焦ったって失敗するだけだろう?」
「……そんなの私には関係ないよ……私は……性格も悪いし…誰も寄って来ないから…違う意味での有名人だから…恋なんて私にはもう必要ない!好きな人が出来るかも分かんないや」
「自分で壁作んなよ!」
「………………」
「……作りたくもなるよ……私は一生売れ残り。だけど、最終的には店にも並ぶ事のない商品だから」
「………………」
私はタオルを体に巻いた状態で、自分の部屋に行く。
ドサッ
ベットに崩れて落ちるように倒れる。
「女の子に産まれなきゃ良かった…」
グイッ
私の肩を掴まれた。
≪えっ?≫
ドキーーッ
私の上に股がり両手押さえつける雄真の姿があった。
「ゆ、雄真っ!?ちょ、ちょっと!どうし…」
言い終える前にキスで唇を塞がれた。
「………………」
「俺が男だって事分かってんの?って言ったじゃん!そんな格好で、うろつかれたんじゃ好きじゃなくても、こういう事出来るって事分からせてやってんだよ!」
ドキッ
「なあ佳音、本気で思ってんの?」
「えっ?」
「女の子に産まれなきゃ良かったって……」
「……そ、そうだよ!」
「じゃあさ、お前が可愛い訳は?」
ドキッ
突然の言葉に胸が大きく跳ねる。
「勿論、男だって可愛い系男子いるけど、お前の顔をそういう顔にしてくれてる神様は、お前に何かの使命があるからじゃねーの?」
「………………」
「お前が、性格がどうとか、色気がどうとか、そんな事よりも、第一、その顔に産んでくれた両親に感謝する事が1番じゃねーのかよ!」
「………………」
私は幸せだった時の頃が蘇る。
「佳音が女の子で良かったわ」
「佳音ちゃんは本当可愛いわねー」
母親が大好きだった私は、いつも母親の傍から離れなかった。
親戚からも可愛がられ、近所の人からも良く言われ続けてた。
荘兄も
『佳音は、可愛がられてたから』
私は涙がこぼれ落ちる。
「今は辛いかもしれないけど幸せは必ず来るって……俺は思うけど?」
ドキン
≪……荘兄も……言ってたっけ……≫
私を抱きしめる雄真。
ドキン
「お前に相応しい奴は絶対現れるから……諦めんな!」
私は雄真を抱きしめ返した。
「分かったら洋服着な!」
「うん…雄真…ごめん…それからありがとう」
「佳音…それはズルすぎだろう?」
「えっ?」
「良いから洋服着ろ!俺出て行くから」
「いてっ!」
「えっ?」
「友達としてで良いから!一緒にいて!」
「…………」
私は、雄真に布団を被せる。
「良いよって言うまで見ないで!」
「あのなー佳音…俺…男なんだからさ」
佳音は、さっと着替え、布団に入って来ると俺の背中に顔を埋めた。
「佳音?」
「寒かったぁ~」
「バーカ…だから早く洋服着ろって言っただろう?」
俺は、佳音の方に向き直り、佳音を抱きしめた。
ドキン
私の胸が大きく跳ねる。
「イブだから特別だからな!」
「うん…あったかい…」
「お前が冷たすぎなんだよ!一気に俺の体温も奪われてるし!」
「じゃあ温め合おう!」
私達は気付けば抱きしめ合って眠っていた。
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