第11話 売れ残りの賞味期限
「佳音さん、佳音さん」
私に駆け寄る人影。
真那美ちゃんだ。
「何?どうしたの?真那美ちゃん」
「例の彼と別れたんですか?水をぶつかっけたとか?」
「あー、うん……余りにもムカついて店の中で公衆の前で言い合ってしまって大恥だよ」
「だけど、先輩とお兄さんが助けてくれたんでしょう?」
「えっ?」
「佳音さんが殴られそうになって先輩が助けてくれたって……最終的には、お兄さんが殴って追い出したって話じゃないですか?」
「あー、まあ……」
「佳音さんは嫌な思いもしたし恥ずかしかったかもしれないですけですけど、女子代表してってかなり啖呵も切って、カッコイイって言ってましたよ!流石です!佳音さん!有名人じゃないですか?」
「有名ね…二人がね。私は違う意味で有名だよ」
「佳音さん?」
そう――――
二人は女の子にチヤホヤされるモテ有名人。
今思えば私は女の子からは憧れのまなざしで見られるけど異性からは性格悪いとかで有名になっただろう?
私はそう確信した。
ある日の事。
「佳音ちゃん、雄真、留守番宜しくね!」
と、真里絵さん。
実は真里絵さんは荘兄とゆっくり付き合い始め今日はデートらしく二人は出かけて行った。
お店も休みなのだ。
「佳音、今日の昼、何食べる?」
「オムライス!」
「出たよ!」
「えーっ! 良いじゃん!雄真が作るオムライスは美味しいから!」
「はいはい」
私は椅子に腰掛け雄真が作る姿を見ている中
「ねえ、雄真って彼女いるの?」
「えっ?」
「いや、雄真が彼女連れて来たりとか話聞いた事ないから気になって」
「彼女は一応いるけど」
「えっ?やっぱりいるんだ!カッコイイし付き合ってどれ位?私が来た時はいなかったよね?」
「そうだな。最近付き合い始めたから。だけど、数か月以上は経つな」
「数か月なら、もう体の関係はあったりするよね?」
「それがさ、何回かトライしようとして倒す迄はいくんだけど女の子の日とか体調悪いとか言われれて…だからこっちから仕掛けるの辞めた」
「そうなんだ。ねえ、こんな事言いたくないけど……もしかして相手…本彼いるんじゃない?」
「えっ?」
「いや……何となくだけど……もしくは初めてで怖いとか?……まあ、それは私なんだけど……」
「………………」
「まあ私よりは色気あるだろうし、雄真が関係持ちたくなるような相手なわけでしょう?」
「まあ、彼女が好きだし……だけど、断りつづけられるのもな……タイミングが悪いのか?とか他に男いるんじゃないか?って正直疑う」
話をしながら出来上がったオムライスを食べる。
「この際、お前と付き合おうかな?」
ドキッ
「…ゲホッ、ゲホッ」
「あっ!悪い!大丈夫か?」
「へ、変な事言うの辞めてよ!その前に私じゃ雄真の相手に相応しくないから。性格悪いし、色気ないし駄目、駄目」
「結構傷付いてます的な感じ?」
「ないとなると嘘になるかな?」
「…佳音…」
「子供っぽいんだろうね。ごちそうさまでした!じゃあお先~」
「ああ」
私は自分の食べた食器を洗い部屋に行った。
その日の夜 ―――――
「佳音、今日の夜ご飯は?……オムライスって言うんじゃ……」
私の部屋の前のドア越から言う雄真。
カチャ
ドアを開ける私。
「オムライスって言おうと思ったんだけど……」
「いやいや、またオムライスって有り得ねーだろ?」
「1個作って! ねっ!ねっ!お願い!」
私は両手を合わせてお願いする。
「雄真の作るオムライス、本当、亡くなったお母さんの味と一緒なの!だから、お願い!お母さんは快く作ってくれたよ」
「それは、お前の母親だからだろう?俺は母親じゃねーし!」
「……分かった……じゃあ良い…夜は食べない……」
バタン
ドアを閉める私。
「食べないって……子供(ガキ)かっ!……本当……オムライス馬鹿だな…」
そして ――――
「あっ!……オムライスだ!」
私は笑顔になる。
「お前って…本当オムライス馬鹿だな」
「悪かったな!」
「ほら!座れよ!食べないって子供みたいな事言うから」
「どうせ子供ですぅーー!頂きまーす!」
私達は騒ぎつつもご飯にした。
「ありがとうっ!雄真!」
「いいえ…お前……色気よりも食い気だな?」
「色気ないから私らしくて良いでしょう?」
「………………」
「大きい子供だから私」
「同級生なのにマジ子供だな?」
「でしょう?色気も何の取柄もない女の子。私、多分、変わらなそうだよね?可哀想な売れ残りになりそうだよね?割引きされるか…捨てられるかってやつ?」
「賞味期限あるんだ!」
「えっ?賞味期限?う~ん……あるだろうし、ないだろうし」
「割引きとか捨てられるなら賞味期限あるって事だろう?」
「言われてみればそうだね。じゃあ、何回も捨てられちゃうね」
「最終的には、お店に並ばない商品」
「うわっ!それは辛い!」
「ハハハ……じゃあ、そうなる前に買ってもらわなきゃヤベーな」
「だけど、誰も買わないよ!ご馳走さまでした!」
私は洗い場に自分の食べた後の食器を持って行くと洗う。
「じゃあ、捨てられる前に予約しようかな?」
「予約すんの?不味いから辞めた方が良いよ」
振り返るとキスされた。
ドキン
突然の出来事に胸が大きく跳ねた。
「だって決めるのお客さんだろう?」
そう至近距離で言われ見つめられる雄真の眼差しに私の胸が、うるさい位ざわつきドキドキと加速した。
「………………」
雄真の顔がまともに見れず私は下にうつ向く。
頭をポンとする雄真。
ドキン
顔をあげる私。
「悪い……色気があるとかないとかよりも好き嫌いの気持ちの問題だろう?お前、気にしすぎなんだよ。好きって気持ちがあるなら色気とか関係ねーから」
「………………」
「今のお前、可愛い顔してるけど?」
「は、恥ずかしいから!」
私は再び下にうつ向く。
クスクス笑い、雄真はそっと抱き寄せた。
ドキン
「もっと自信持ちな!」
私は雄真を抱きしめ返すと、雄真は頭を撫でるとぎゅうっと抱きしめてくれた。
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