第8話 兄妹の絆、空白の時間

次の日。


「ねえ、佳音ちゃん。荘史君って彼女いないの?」


「えっ?荘兄ですか?多分いないんじゃないんですか?」


「そう」


「………………」




私と雄真は顔を見合わせる。



「真里絵さん、荘兄の事気になるんですか?」

「えっ? あ、ううん。そういう訳じゃないんだけど……」

「そうなんですか?」

「姉貴、素直になれば?」と、雄真。

「だから違うって!」



クスクス笑う私達。



「聞いておきますよ。真里絵さん」

「荘史さんの事、カッコイイって言ってたもんなぁ~久しぶりトキメいて一目惚れでもしたんだろ?」

「違います!」



私達は騒ぐ。


雄真と私は昨日の事を機に、関係性が縮まった。

雄真の家庭環境の話も聞き、両親が亡くなって真里絵さん店継いで今を至っていると。


雄真は真里絵さんに幸せになって欲しいと言っていた。


雄真は自分が、一人前になって真里絵さんを楽にさせてあげたいと話をしていたのだ。


俺にも、姉の真里絵さんしか家族いないから今は私と同じ環境だと ――――




そんなある日の事。




「佳音」

「あれ?荘兄どうしたの?学校に来るなんて珍しい。仕事は?」

「今日は休みをもらったんだ」

「そうか」

「送るから車に乗って」

「あ、うん」



車に乗る私。



「佳音、今日、お店が終わったら出掛けない?」

「うん、それは良いけど。やけに急だね?」

「だって、今日しかないから」

「えっ?今日しかない?」

「うん」



そして店迄、送ってもらう。



「じゃあ、後で」

「あれ?寄らないの?」

「うん、ちょっとね」



そう言うと荘兄は帰って言った。


店が終わる頃、荘兄は店に顔を出し私は準備をして出掛けた。


食事して、ドライブに行く。


兄妹水入らずで出掛けたのは初めてだ。




「あっ!そうだ!荘兄、彼女いたりするの?」


「えっ?急にどうしたの?今の所はいないけど」


「そうか。余り口には出したくないけど、あの女の事あって女の人に対するイメージ悪くなってトラウマになってるんじゃないかって……」


「佳音」


「もし、私の事があるなら気にしなくて良いから恋愛して欲しいし……どうなのかな?と、思って…」


「そうだなぁ~…佳音には話しておくべきかな?でも、俺の過去の話を聞いたら佳音、引いちゃうかも?」


「それでも、荘兄がいたから、今の私がいるんだと思う!父親からいつも荘兄は体張って守ってくれてたから……」




そう、これは父親から暴力を振るわれていた当時は、中学1、2年位の兄は、盾になるように小学3、4年の頃の私を守ってくれてたのだ。


私達の体は、特に荘兄はアザだらけで痛い思いしていたんだと思う。




「ねえ、私がいなくなってから何があったの?荘兄は……どんな目に遭っていたの?……でも……話…にくいよね……怖い思いしていた位だから…正直、私も聞くのは怖い…」



「…佳音がいなくなって…俺も……あの家にはいたくなかったんだ…」


「えっ?」


「部屋を探しながら、着替えを取りに帰る程度で、あの家には余り帰る事なくなった……」


「そうだったんだ」


「うん。父親がなくなってから彼女は俺に対する愛情が強くなってきて、ストーカーみたいな事なって……俺、何度も殺されかけそうになって……」



「……えっ……!?」



私の想像を遥かに越えていた。


ストーカー!?


殺されかけそうになった!?




「結婚して子供が欲しいとまで言われて……無理矢理体の関係求められて……父さんがいる時よりも更に酷くなって……」


「……荘兄……そんな事が……」


「正直、俺も精神的に参ってて自殺しようと思う事もあったんだ。だけど……佳音いるし……父さんや母さん悲しむだろうなと思って彼女を追い出す方法で……お酒に酔ったふりして彼女を傷つけた」



「……荘兄……」



「父さんが、俺達にしてきたように……本当は犯罪になるんだけど警察に捕まる覚悟で……本当に酔った時の自分は怖すぎて意識がある自分で……俺が今迄、彼女にされた事をした」



「………………」



「ハッキリ言うとレイプ(強姦)だね……」


「レイプ?」


「佳音には刺激強いかも」



正直、ピンと来ない。



「説明すると、押し倒して暴力して黙らせて無理矢理関係を持つ事。まあ、彼女からの暴力はなかったけど無理矢理な行為はお互い様だからね」


「それくらいあっても良いよ……私の為もあったけど、荘兄は……あの女がいる間、ずっと嫌な思いしてきたんだよ!それだけじゃ……荘兄の傷は癒えないよ……」


「佳音……」


「荘兄……私よりも一番辛い思いしてきたんだね……自分を犠牲にしてまで……何も気付いてやれなくてごめん……荘兄……」


「良いよ……今は良かったって思うから。どんなに今は辛くても、幸せは必ずくるって……言われた事があって……その言葉を信じてきた」


「そうか……それで彼女はどうしたの?」

「すぐに出て行ったみたいだよ」

「その後は?」



「会ってもいないし、むしろ会えないよ。俺が、そう仕向けたから」

「仕向けた?」


「レイプ事件は、俺に彼女がしてきたのも変わらない。彼女は俺に対して約7年間位、嫌な思いさせてきたのは事実だし。性的虐待(暴力)だから。相手は俺で未成年者。それは彼女も分かってたみたいだし、お互い心に留めて2度と現れないように、会わないように話合って家を出て行くように約束したんだから。まあ、自分の胸の内全て出した感じかな?」



「そうだったんだ……」



「色々あったけど……佳音も元気でいてくれてるから。大事な家族で大事な妹だから」


「……荘兄……」


「後……こんな話の後に言うのもあれだけど……お誕生日おめでとう!佳音」


「えっ!?」


「今日で17歳。17年間色々あったけど俺の妹として生まれてきてありがとう!多分……母さんも父さんも天国で、私達の子供に生まれてきてくれてありがとうって言ってるよ。はい、誕生日プレゼント」


「えっ?」


「真里絵さんに付き合ってもらって」

「ありがとう!」



開けてみるとピアスとネックレスだった。



「うわぁ~可愛い~♪」



「後、これ。高校生には欠かせない物。本当は佳音と一緒に選びたかったんだけど、サプライズプレゼント」



携帯だった。



「俺の連絡先は既に入れてあるから、後は佳音が好きなように使うと良いよ」


「ありがとう!荘兄!真里絵さんにもお礼言わなきゃ!」


「佳音、これからも宜しく!」

「うん!宜しく!荘兄!」



そして、送ってもらい私達は別れた。




「ただいま帰りました!」

「お帰り、佳音ちゃん。デートどうだった?」

「はい!兄妹水入らずで貴重というか今迄の空白を埋めてきました」

「それなら良かった。お誕生日おめでとう」


「ありがとうございます。誕生日プレゼントもありがとうございます!」

「いいえ~妹に買ってあげる気持ちで選んじゃった♪」

「凄く可愛いかったです」

「そう?」


「誕生日!?じゃあ、16年から17年に彼氏いない歴更新だな?佳音!」




イタズラっぽい笑みを見せる雄真。



「まだ始まったばかりだし!」

「だけど、17になったのは事実だろう?佳音」

「あんた、つくづくムカつく!そんな事より、真里絵さん、荘兄の事宜しくお願いします!」


「えっ?」


「彼女はいないみたいですけど……色々あったみたいで……」


「……そう……」


「普通に恋愛出来るように荘兄なってくれれば良いんだけど……」


「色々あったなら…難しいかもね……お兄さん」

「やっぱり……そうですかね……あっ!あの、今更ですけど、ここの連絡先念の為、教えて下さい!」


「えっ?」


「サプライズで荘兄が携帯プレゼントしてくれて」


「良いわよ」



スッ

私の携帯を取り上げる人影。



「わっ!ちょっと!」

「QRコード読み取りと……」

「えっ!?」

「店も俺の番号も姉貴のも入れておいたから」

「早っ!」


「いやいや、普通だから。しかも、それ最新じゃん!」


「えっ!?そうなの?」

「そう!佳音、携帯交換しようぜ?」

「どうしてそうなる!」

「いやいや、携帯初心者に最新は使いこなしきれないって!」

「荘兄に買って貰ったんだから、あんたに渡せるわけないでしょう!?」



私達は騒ぐ。



「クスクス、本当、二人って双子のきょうだいみたい。昔から一緒にいたみたいよ」


と、真里絵さん。


「そうですか?」

「そうか?」

「幼なじみでもいけるんじゃない?」


と、真里絵さん


「でも知り合って一年も経ってねーし。だけど、最初の時に佳音とそういう事話していたんだよなぁ~」


「そうだよね?」



私達は色々話をしていた。




















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