第5話 和解

あれから、何度も荘兄は店に訪れた。

余程の話があるのだろう?


しかし私は全く聞こうとしない為、今を至っている。




「荘兄、もういい加減にして!」

「佳音が話を聞こうとしないから」

「ふんっ!」


「佳音、奥にお兄さん連れて行け。お兄さん話があるから何度も来てくれてるんだから。お前が心開かねー限り死ぬまで来られるぞ!」


「えっ!?」

「それ位、考えても良いんじゃねーの?」



「………………」



「何があったかは知らねーし、聞かねーけど、お前の唯一、血の繋りのある家族なんだろ?」


「……それは……」


「お前に戻れとか追い出すような事はしねーから取り合えず話はしな。店の方は良いから」



「………………」


「多分、お前の中では家出てきたまんまなんだろうし、話を聞く位は良いんじゃねーの?お前が変わらなきゃ何も変わらねーだろ?」


「……分かった……」


「お兄さん奥にどうぞ。飲み物お持ちします」

「すみません。ありがとうございます」



私達兄妹は奥に行く事にした。





「あんたが珍しい」と、お姉さん。


「何だよ!」

「あんたもたまには良い事言うのね?」

「いや、人間として普通じゃね?」

「明日は大雨かも?」

「あのなー……それがさ……お兄さん、店に来た前日に1回店の前にいたんだよなぁ~」


「えっ?」


「妹の事宜しくお願いしますって言って、何処か無事で安心していた雰囲気あったし……アイツの家庭環境は分かんねーけど、お兄さんを物凄く毛嫌いしてた理由も分かんねーけど……」


「まあ、あの状況見てればね……」


「俺達の知らない深い傷あるんじゃないかって…アイツだけじゃなく、兄妹という絆の中で、お兄さんは家族として信頼を取り戻したい部分もあるんじゃないかって……」





「それで話って何よ!?」

「佳音、家に帰って来いとは言わないけど、いつでも良いから戻っておいで」


「やだ!あんな家には戻る気は一切ないから!ママがいた時と変わってしまったじゃん!」


「……佳音……」


「それに女の人……相変わらずなんでしょう?いっつも私ばっか贔屓(ひいき)してたし」


「彼女は出て行ったよ。佳音がいなくなってからが色々と大変だったんだから俺。今、考えるだけで怖いんだけど」


「あの女ならやりかねないよ!父親の前では私も可愛がってますよ?みたいな行動するし、荘兄と関係持ってたし……あの女だけは一生許さない!あんな女には絶対なりたくない!」


「佳音は大丈夫だよ。母さんがいた時はみんなに愛されていたから。一番可愛いがられていたと思うよ。だけど、母さんが亡くなってから変わってしまったんだよ」


「……荘兄……」


「彼女が来て更に変わってしまった……佳音……助けてあげれなくてごめん…だけどこれから俺達が幸せになって母さん達の分も生きよう佳音。もう俺達しかいないから……俺達、仲が悪いままだと母さんが一番哀しむと思うから」



「…荘兄……」



「それを言いたかったから。これ、俺の今の連絡先。会社も書いてある。今、俺もあの家には住んでいなくて時々帰る程度で、前もって連絡すれば使えるようになるから」


「そっか…今、一人暮らししているんだね」

「そうだよ」

「分かった……」

「じゃあ、俺帰るから」

「うん……荘兄……」


「何?」

「わ、私こそ……ごめん……なさい…」

「佳音……」

「それから……ありがとう…」

「いいえ」



「荘兄……」

「何?」



私は荘兄の胸に飛び込む。



「佳音……?」

「……お兄ちゃん……今度は……お客さんとして来てね…」

「…分かった。また来るね佳音」



頭をポンポンとすると荘兄は帰って行った。




荘兄には、また、いつでも来てもらうように約束をした。


今迄、家族として、また兄妹として過ごせていなかった空白の時間を埋めていきたいから


両親はいないけど

私の家族は荘兄だけしかいないんだって


そう思ったから















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