第3話 一石二鳥

次の日 ―――



「…んー…あれ?…ここ…あっ!そうか…私…」

「おいっ!朝だ!起きろっ!」



私はリビングに行く。



「おはようございます」

「おはよう。良く眠れた?」と、お姉さん。

「はい…あの昨日は本当突然来ては、ご飯までご馳走になってすみません…」



「あー、良いの、良いの」

「本当良いって!行く宛ねーなら仕方ねーじゃん。昨日も言ったように何かあったら遅いし」


と、槇谷君。



「ただし条件付きで、ここで住み込みバイトしろ!」


「えっ!?住み込みバイト?マジで良いの?」

「だって行く宛もねーし、家出て来たなら、それしかねーだろ!」

「ありがとうございます!雇わせて頂きます!ヤッター!」

じゃあ、交渉成立な!後、これお前のお弁当」



「えっ?」


「この子、料理作るの大好きだから、全然苦にならないのよ」


「そうなんですね?じゃあ昨日のオムライスも気のせいだったのかも?」

「お前泣いてたじゃん!」

「涙で良く分かんなかったかも!?お腹ペコペコだったし」

「そうだよなぁ~、一週間分のお腹なったしな」



イタズラっぽく笑う彼。



「うるさいな!仕方ないじゃん!とにかく私は先に行きます!」

「あっ!おいっ!ちょっと待てっ!佳音」



ドキン


胸が小さく跳ねる。




「で、良いよな?同居人!いや……居候?」

「どっちにしろ事実だし何も言えないのが辛い……」



「後ろに乗りな!」

「えっ?」

「しばらくはチャリで送迎する!道も良く分からないだろうし」

「それは」


「じゃあ行って来まーす」

「行って来まーす」

「行ってらっしゃーい!気をつけてねー!」


「はーい」と、私達。



「何か昔から、ずっと、一緒にいたみたいな関係ね」



お姉さんは私達を見ては、そう呟いた。





「ちなみに、お前彼氏は?」

「いない」

「だろうな?」

「だろうなって……酷くない?」



クスクス笑う。



「そういう槇谷君は?」

「雄真で良いし!俺が何?」

「彼女は?」

「いない」

「カッコイイのに?」


「カッコイイからって絶対彼女いるわけじゃねーし!」

「性格悪そうだもんね」

「お前チャリから振り落としてやろうか?」


「やだ!辞めてよ!つーか、雄真、命の恩人なんだからね!命の恩人のあんたが、そんな事したら人間疑う!」


「ハハハ……そりゃそうだ!」


「なんかあんたとは、昔からこんな感じのやり取りの関係があったような感じがする」


「あー、幼なじみみたいな感じだな?つーか、初めて会ったんだけど、何だろう?昔、会ってるような気がするんだよなぁ~」


「分かる!だけど、その顔で運命の出逢いかも?なんて言ったら引くから!」


「気持ち悪っ! 女子が言うならまだしも俺がそんな事言ったらヤベー奴だろ?」


「ハハハ……でも、男女問わず、その考えは、みんなあるんじゃない?」


「かもな?逆に男がロマンチストじゃね?」


「ええー、そう? 人それぞれじゃないの?」



私達は色々話をしながら学校へ向かう。


私を先におろす。



「じゃあまた夕方寄るわ!」

「オッケー」



雄真は去って行く。



「ちょっと!佳音っ!」


「うわっ!ビックリした!晴耶っ!おはよう!」


「おはよう!それよりあんなイイ男、どうしたの!?あそこ、イケメン揃いの噂の高校じゃん!」


「そうなんだ!確かにアイツもイケメンだったけど……いや、昨日助けてくれた命の恩人さん。昨日、襲われそうになって、警察沙汰になる所をうまく誤魔化してくれて」


「だから言ったじゃん!まあ、家に泊めても良かったけど、家、厳しいから駄目って言われるの目に見えてるから。それで?」


「事情話して住み込みバイトする事になった」


「家出した挙げ句、一気に幸運掴んだ感じ?」


「でも彼氏じゃないから」


「まあ、後でなりそうな感じだけどね」


「ならないよ~」


「今はね~」


「そう?」




私達は色々話をしながら校舎に入って行った。

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