第2話 思い出の味のオムライス

「あ〰〰〰っ!腹減った〰〰〰っ!昨日から、何も食べてないんだっけ〰〰?」



一先ず学校に行く私。




「佳音…大丈夫?」



親友の大木 晴耶(おおき はるか)。



「死ぬ…ねえ…晴耶、今日泊めて」

「家に帰った方が良いって!」

「家出てきてノコノコ戻れないし!それにあんな愛の巣だらけの場所に戻る気ないし!毎晩やる事やってるんじゃないの!?」


「佳音…」

「…はあぁぁ~……もっと腹減った……」



溜め息混じりに言う私。



「ムキになるから」



「………………」





その日の夜、結局、泊めてもらう事が出来ず、野宿する事となり、私は、公園のベンチに座っていた。



「彼女、こんな所で何してんの?しかも女子高生ってマジラッキー!」


「何ですか?つーかH目的なら他当たって下さい!私、興味ないし、男なんてHだらけの脳みそしかない腐った脳みそなんだから!」


「何!?この女!」

「どうせ体目的で近付いたんでしょ!?下心、見え見えなんだけど?」

「言ってくれるじゃねーか!」

「言っておくけど、私、色気も何もないから辞めた方が……」



グイッと肩を抱き寄せられた。



「や、やだ! 離してっ!離せっつーの!」





しかし、おなかが減り過ぎて本来の力が出ない。

男勝りな性格寄りな私は、突き飛ばす勢いで啖呵きるけど現状は厳しい。


「どうせ初めてじゃねーんだろ?」

「やっぱり体目的だったじゃん!」



私は、肩に回されている手の甲を思いきりつねる。




「って!」


「このスケベ野郎!男は所詮、そういう頭なんだから!高校生だからって決めつけんなっ!バーカ!好きでもない野郎に誰が捧げるかっつーの!」


「この女、マジムカつく!」

「ふんっ!」



私は去り始める。



≪ヤバイ……一気に腹減った……≫



私はフラつく中、一旦足を止めた。



グイッと背後から口を塞がれる。



ビクッ

私は引摺られるように、人目のつかない所に連れて行かれそうになる。



「なあ、それって犯罪じゃね?」



ビクッ

誰かが呼び止めた。



「今なら見逃してやるけど、そのまま継続するなら警察(さつ)に突き出しちゃうけ良いわけ?」


「う、うるせー」



私を離すと、声をかけてきた人影に歩み寄り、グイッと相手の胸倉を掴む。



「俺……暴力嫌いなんだけどなぁ~」

「ごちゃごちゃ、うるせーんだよ!」



「………………」




そこへ ―――



「君達、何をしているんだね?」




警察だ。


相手の胸倉を掴んでいた人は離す。




「すみません、何でもないです」


と、私を助けてくれた人は言った。




「本当かね?」

「はい。本当です!大丈夫です!」



「………………」



「そこの女の子は……? その大きい荷物はなんだね? かなり大きいようだが?」

「これは……」

「俺達の荷物です!俺と妹の荷物なんですよ!」



「………………」



「修学旅行があって、その帰りでお土産とか入っていてパンパンなんですよ!」



「………………」



「事情聴衆しますか?」

「ま、まあ良い。早く帰りなさい!」

「はい」



警察の人は去り、喧嘩になりそうだった雰囲気も何とか逃れ、相手は足早に走り去った。



「す、すみません。ありがとうございます」

「別に。でも、良かったな!つーか、ここで何してんの?良い子は、お家に帰ったら?」

「良い子じゃないから帰らない」

「えっ!?」


「……私……家、出てきたから」

「はあっ!?家出女?冗談だろう?」

「本当だよ」



「………………」



「それじゃ本当にありがとう。助かった」



私は、その場を去ろうとしたけど、体がフラつく。



グイッと私を抱き止めた。




ドキン

胸が小さくノックした。



「……お前……大丈夫か?」

「うん、大丈夫。ちょっとフラついただけだから、ごめん」

「なあ、お前、行く宛あんの?」

「……あ、あるよ」



「…………」



「向かってる途中で……それじゃ」




スッ

私の荷物を持つ。



「家、来な」

「えっ?」


「今、ウロウロしていたら補導されるし、さっきみたいな事あったら大変だし」

「でも……」

「あんた女の子だって自覚してんの?」

「し、してます!」




次の瞬間 ――――



私のおなかが大きく鳴った。


かぁぁぁぁ


体が熱くなる程の恥ずかしさに赤面。



「………………」



「えっ?今の音って……おなか……?」



「………………」



「ぷっ…アハハハ……ダッサー! どんだけスゲー音出してんの?一週間分?」



思いきり笑われた。




「仕方ないじゃん!何も食べてなくて……確かに自業自得だし……でも…戻っても…私の居場所はないから」



「………………」



「ごめん……今の聞かなかった事にして!」

「おなかの音?」

「ち、違いますっ!」



クスクス笑う。



「嘘だよ。取り合えず家に来いよ。何も食べてねーんだろ?だったら尚更、強制だ!ニュースで死体で発見されたらかなわねーし」


「勝手に殺さないでくれる?」


「はいはい。お前名前は?」

「えっ? あ、佳音…優岐 佳音」

「俺、槇谷 雄真(まきや ゆうしん)。ちなみに16だけど」

「同級生だ」




私達は色々と話をしながら帰る事にし彼の家に行く事にした。


彼の所は、小さなお店を経営している。


ご両親が遺したお店らしく、お姉さんが後を継いで今を至っている。




「うわぁ~、オムライスだ~♪」

「スッゲー満面の笑みだな?」

「私、オムライス大好きで!頂きま~す♪」

「どうぞ」



≪…あれ…?…この味…何処かで…≫



「どうかした?」

「…この味…」



私は涙がこぼれ落ちた。




「えっ!?何故泣く!?」


「やだ!何、女の子泣かしてんの?」


と、彼のお姉さんの真里絵(まりえ)さん。



「誤解すんなよ!俺は何もしてねーぞ!」


「ご…ごめんなさい…亡くなった母親のオムライスの味に、とても凄く似ていて…」


「えっ?」



私は涙を拭いながらも食べた。









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