恋のオムライス

ハル

第1話 家族団欒

「佳音(かのん)、今日、何食べたい?」



幼い私に尋ねる母親。



「オムライス!!」と、私。

「オムライスは、この前したわよ」と、母親。



クスクス笑いながら、母は言った。



「オムライスが良い!」

「じゃあ、佳音はオムライスね」

「うんっ!」




その日の夜 ―――




「ええーーっ! 佳音、又、オムライスーー? そのうちオムライスみたいな顔になっちゃうよー」


と、兄・荘史(そうし)



「良いの!だって、ママの作るオムライス美味しいんだもん!」



私、優岐 佳音(ゆうき かのん)。5歳。


ママが作る料理は美味しくて、中でもオムライスがとっても大好きな女の子。


そして私の兄・優岐 荘史(ゆうき そうし)。9歳がいる。



「やっぱり、ママの作る料理はおいしいなぁ~。僕、ママの作る料理大好き!」


「そう?」





優岐家の家族団欒は、私達が一番大切にしていた。


笑顔になれる幸せな時間だった。


家族4人でテーブルを囲み、コミュニケーションを大切にしていた。


それから1年、2年と幸せな時間は続いていたんだけど ――――



「ママっ!」



倒れる母親の姿。

私達の家族に不幸が襲う。





ピーポー……





ピーポー……




救急車で母親は運ばれたものの、助かる事なく、母親は……他界した……





「……ママ……」




そして父親一人で私達兄妹を育てていたけど、

仕事に行く事もままにならず


酒に溺れ酒乱となり私達兄妹に暴力(虐待)する日々となり、


私達兄妹の事を知った人は施設に預けるけど、

父親は学校帰りにバレないよう連れ戻し家庭内暴力・虐待するという同じ繰返しだった。



佳音・9歳。

荘史・13歳。



までと成長し、父親に再婚相手が現れ、父は人生をスタートする。


だけど、私達兄妹には更なる試練が待ち受けていた。



再婚相手は兄だけをとにかく可愛がり、私は放置状態。


しかし、父親の前では可愛がる素振りを見せていたのだ。


そんな兄は、状況を知っていたものの父親には言えない理由があった。


再婚相手と兄の関係性だ。


私の目の前で父親がいない間、キスをしている所を何度も見た事がある。


時には大人の関係があった様子。


性的虐待(暴力)というべきなのだろうか?


彼女の一方的な想いから、私への陰湿な嫌がらせを阻止する為、兄は逆らえなかった。


だけど、最終的には、そんな事は一切関係ない。


彼女は、ただただ、兄と男と女の関係になりたかっただけなんだ。


だって、兄はその事実を知らなかったのだから……


そして、そんな父親も私が高校入った直後、他界し、お葬式の後、私は、ここの家を出て行く事を決心した。




「荘兄、私、ここ出て行くから!」


「えっ?」


「私いても邪魔なだけでしょう?私、ずっと我慢してきたけど、もうマジギレ寸前だし!いっつも荘兄ばっか贔屓(ひいき)してさ私の事、のけ者じゃん!荘兄、知らないだろうけど、あの女、荘兄と関係持ちたいだけだから!関係持った所で、あの女私へのイジメ全然変わってなかったから」



「えっ!?」


「とにかく、私がいない方が、あの女にしてみれば良いんだから!」


「…佳音…」


「ともかく、そういう事なんで宜しく!絶対探すなっ!探しに来んなっ!」




私は荘兄に、そう言うと去り始める。



「あら? 佳音ちゃん、そんな恐い顔してどないしたん?」



いとこのおばさん。




「おばさん、荘兄の事宜しくお願いします。私、この家出て行きますので!」



私は、そう言い残すと出て行く事にした。



「荘ちゃん、ええのー?」

「佳音が決めた事だから止める必要もないし、多分、止めた所で佳音は反発するよ」

「せやけど、何かあったら遅いんちゃう?」


「確かに心配する部分はあるけど…俺に出来る事は何もないですから…母さんが亡くなって…この家は…バラバラになってしまったから…」


「…荘ちゃん…」


「でも…例え家族がバラバラになっても、生きてれば必ず会えるって思うし…だけど俺に何かあった時は佳音をお願いします」








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