第5話

 私だって、何度も考えた。


 こんなのは間違っている、私は狂っているのか、と。

 でも抗うのは、もうやめたよ。私は、自分を見失ってしまうほどに、お前を心から愛している。


 美しい蝶が、蜘蛛の巣にかかる様に、

 美しい稲穂が、刈り取られるように、

 私は、お前に食われることが、運命であり、願望なのだ。


 見てみろ、今日はスティックもムチも持っていない。私を早く食べてくれ。抗えないほどの力で、私の白い肌に、襲いかかってくれ。

 愛し合う恋人が、首元にキスするように、首元に牙を突き刺してくれ。それが愛の形なら、私は、死だって受け入れる。受け入れなければいけないんだ。

 お前の愛に触れたいのなら、お前に食われるしかないのだから。


 私に絶望も、幸福も、全てを入り交じって叫ばせてくれ。


 私の肉体に、欲望を抑えられなくなったお前は、私に向かって吠えた。

 周囲の動物たちが、怯えて逃げ惑うその太い声に、私の心は思春期の少女のように弾んだ。

 お前が今、私を食肉として見ている感覚が、より一層興奮させる。


 私は、お前に愛されたい。

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