手紙
『口に出して言うことではないけど、それでも君に伝えたい。
だから変かもしれないけど、手紙にした。
君は読まないかもしれない、良い気持ちにならないかもしれない。
だけど、やっと夫婦になれたのだから
うまく言葉にできないな。
ごめんね。
そう、「ごめんね」を伝えたくて。
僕は最初、君の子供を見た時に気持ち悪さを感じたんだ。
僕の愛する君の子供を、愛せなくてごめん。
今はとても愛している。
こどもも、君も。
初めてあの子を見た時、君の綺麗な色と、あの男の顔立ちが合わさっていて。
見る前に覚悟を決めていた筈なのに。
酷い吐き気を感じる程に、気持ちが悪かった。
愛せなかった。
君はとっくに子供を愛していたのに、僕はそのすれ違いをもっともっと早く取り持てたのに、君だけが愛しくて子供を愛するのが遅れてしまった。
君はあの子に才能があると言ったね。
道具のように扱っていて、触るのも嫌がって、世間からしたら悪い母親だ。
だが、それは君が子供を愛していたからなんだ。
あの男の事は嫌いなのに、子供を愛していたから。 君はあの子を愛していたから、あの子の作るものに才能を感じた。
確かにあの子に才能はあったけれど、君はそれ以上の評価をしていた。
そのすれ違いに君は戸惑い、子供を愛していたから反発したんだ。
気づいた時に言えなくてごめん。
力がなくてごめん。
僕が不甲斐ないからあの子が生まれた。
あの子の事は今はとても大切で、君と同じくらい愛している。
あの頃の僕にこうなる未来を伝えたらどうなっただろう。
きっと何も変わらない。
僕が不甲斐ないから、君とあの子を今愛せている。
たくさんの「ごめん」がある。
だけど、今がとても愛おしいから、僕が謝るのはこれだけだ。
これから死ぬまで、僕は過ごした時間を君と反芻したい。
不器用な君、つらい目に遭った君とあの子。
新しく生まれた小さなこどもたち。
全てを愛しながら、この先長い時間を過ごそう。
結婚してくれてありがとう。』
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