とある老夫婦の呟き。《短編》
匿名
封を切る
皺を刻み、痩せた白い指で紙を撫でた。
尖ってしまった爪で少し引っ掻き、封を開ける。
「僕の前で開けるのかい、舞。」
弱く優しい声が戸惑いながら聞いた。
「貴方がくれた手紙ですもの。目の前で言葉をいただいて何が悪いの?」
凛とした眼差しは若いままだった。
冷たい風の吹く春の庭のベンチでの
夫はベンチに座り、そのベンチの隣で車椅子の妻が手紙を眺めている。
二人とも細身で、老夫婦とは思えない美しさがあった。
小さな風音が耳に心地良い。
夫は気恥ずかしそうに妻から目を逸らした。
妻はそれを見届けると、少し口元を緩めて手紙を読み始めた。
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