第41話 私②

それを見て、懐かしさが込み上げてくると同時に、不思議と温かい気持ちになるのを感じた。

この中に、きっと答えがあるはずだ、そう信じて、ページをめくっていく。

最初の方は、まだ素直な気持ちで書いていたようだ。

しかし、日を追うごとに、段々と様子がおかしくなっていった。

次第に、自分の気持ちを押し殺しているような文面が増えてきた。

まるで、何かに耐えるかのように、歯を食いしばっているような感じだった。

その原因は、おそらく、両親からの虐待が原因だろう。

この頃になると、暴力だけではなく、暴言なども日常的に行われるようになっていた。

そのせいで、精神状態もかなり不安定になっていたに違いない。

そんな中、最後のページにたどり着いた。

そこには、大きくこう書かれていた。

このノートを読んでいるということは、あなたは、今の私ではなくなっているでしょう。

もし、そうだとしたら、お願いがあります。

どうか、これ以上、私の人生を壊さないであげてください。

お願いします。

本当にすみませんでした。

最後に、一言だけ付け加えさせてください。

さようなら。

その瞬間、涙が溢れ出した。

これは、彼女が残した最後のメッセージだ。

恐らく、これが、彼女の本心なのだろう。

だからこそ、こんなにも悲しい気持ちになるのだ。

どうしてこんなことになってしまったのか、 今となっては、知る由もない。

だけど、これだけは言える。

もう二度と、彼女を苦しませてはいけない。

これ以上、傷つけてはいけない。

そう心に誓った。

あれから、数日が経過した。

相変わらず、進展はない。

ただ、一つわかったことがあるとすれば、

彼女を助けることができるのは自分しかいないということだ。

だから、覚悟を決めた。

必ず助けてみせる、そう心に誓い、再び立ち上がった。

さて、問題はここからだ。

どうやって、彼女を救い出すか、それが問題だ。

相手は、子供とはいえ、一筋縄ではいかない相手だ。

油断はできない。

慎重に作戦を立てなければ、返り討ちに遭う可能性がある。

とはいえ、時間はあまり残されていない。

早くしないと手遅れになってしまう。

それだけは避けなければならない。

まずは、相手の情報を集める必要がある。

そのためには、まず彼女の居場所を突き止める必要があった。

そこで、彼女に連絡を取ることにした。

もちろん、事前に許可を得てからでないと、後々面倒なことになるからだ。

幸いにも、すぐに返信が来た。

内容は、こちらに対する感謝の言葉と、今の状況を説明してくれた。

どうやら、彼女には味方がいるらしく、彼らと協力して行動しているようだ。

今のところ、特に目立った動きはないらしい。

ただし、いつ動き出すかわからないため、油断はできないとのこと。

引き続き警戒を続けるように伝えると、了解したという返事が返ってきた。

その後も何度かやり取りを続け、必要な情報を交換した後、一旦、通信を切った。

そして、今後の方針について考えた。

まず最優先事項として、彼女の安全を確保する必要がある。

そのためには、一刻も早く居場所を突き止める必要がある。

そのためには、やはり、彼女の協力を得るべきだろう。

そこで、彼女にコンタクトを取ることにした。

しかし、いきなり接触するのはリスクが高いため、

まずは、軽い挨拶程度の内容に留めておくことにした。

内容は、以下のような感じにした。

こんにちは、お元気ですか?

最近、あまり連絡できなくてすみません。

実は、ちょっと忙しくて手が離せなかったんです。

でも、これからはまたちょくちょく連絡するつもりでいますので、安心してくださいね。

ところで、最近、何か変わったことはありませんでしたか?

例えば、新しい発見があったとか、不思議な出来事があったとか、

何でも構いませんので教えてください。

あと、体調の方は大丈夫ですか?

風邪など引かないようにしてくださいね。

それでは、また近いうちにお会いしましょう。

こんな感じで良いだろうか?

少し不安ではあるが、これくらいしか思いつかないので仕方ない。

あとは、彼女次第といったところだろう。

返事を待っている間、手持ち無沙汰になり、なんとなく窓の外を見た。

空は晴れ渡っており、雲一つない青空が広がっている。

絶好の行楽日和ではあるが、自分には関係ない話である。

それよりも、今は目の前の問題をどうにかしなければならない。

そんなことを考えながら、ぼんやりと景色を眺めていると、

ようやく、彼女から返事が届いた。

その内容を確認すると、思わず頭を抱えてしまった。

何故なら、送られてきたメールには、こう書かれていたからだ。

こんにちは、元気にしていましたか?

最近は、全然連絡できなくてごめんなさい。

実は、ちょっと困ったことになってしまって、

なかなか連絡する余裕がなかったんです。

でも、心配しないでください。

もうすぐ、全て丸く収まる予定ですから。

それまで辛抱強く待っていてもらえますか?

それと一つだけお願いがあるんですけど、いいですか?

実は、私、どうしても欲しいものがあるんです。

でも、お金がなくて買えないんです。

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