第38話 私と妖精③
何故なら、自分以外の人と関わることができる機会ができたからである。
初めは、緊張していたが、回数を重ねるうちに、少しずつ打ち解けていった。
そして、いつしか、彼女の存在は、リリアナの中で、かけがえのないものとなっていた。
そんなある日のこと、いつものように、庭で遊んでいたリリアナは、ふと、空を見上げた。
そこには、無数の光の玉が飛び交っていた。
どうやら、お祭りをやっているらしい。
気になったリリアナは、近くにいた子に聞いてみたところ、
なんでも、近くの森に住む妖精たちが、集まって、お祝い事をしているのだという。
それを聞いて、ますます興味を持ったリリアナは、こっそり抜け出して、その場所へと向かった。
しばらく歩くと、やがて、開けた場所に出た。
そこには、たくさんの人がいて、皆、楽しそうに踊ったり、歌ったりしていた。
その中に、一際目立つ格好をした集団がいた。
近づいてみると、それは、全員、同じ種類の衣装を身に着けた少女たちだった。
彼女たちは、一様に笑顔を浮かべており、その表情からは、喜びの感情が読み取れた。
どうやら、目的は同じだったようだ。
その後、リリアナは、その子達と一緒に、祭りを楽しむことにした。
最初は、不安だったが、いざ始まってみると、すぐに慣れた。
むしろ、今まで経験したことのない、新鮮な体験ばかりで、とても楽しかった。
中でも、特に感動したのは、花火を見た時だった。
夜空一面に広がる美しい光景に、思わず見惚れてしまったほどだ。
その後も、次々と打ち上げられる色とりどりの光を眺めながら、幸せな時間を過ごしたのだった。
帰り道、ふと、後ろを振り返ると、そこには、誰もいなかった。
不思議に思って、周りを見渡してみるものの、誰もいない。
それどころか、人の気配すら感じないほどだった。
おかしいと思ったリリアナは、慌てて、元来た道を引き返すことにした。
しばらく走ると、ようやく、人影が見えてきた。
ほっと胸を撫で下ろし、近づいていくと、そこにいたのは、見知らぬ男の子だった。
年齢は、自分と同じくらいのように見える。
髪の色は、黒っぽく、瞳の色は、緑色をしていた。
身長は、自分よりも高いようで、見上げる形になっている。
見た目は、どこにでもいそうな普通の少年という感じだ。
ただ、一つだけ気になる点があった。
それは、彼の着ている服だ。
一見すると、ただのボロ切れにしか見えないのだが、
よく見てみると、それは、特殊な素材で作られたものであることがわかった。
その証拠に、太陽の光を受けて、キラキラと輝いている。
一体、どこで手に入れたのだろうか、疑問に思ったが、
それよりも、今は、彼に話しかける方が先決だと思い、声をかけた。
そうすると、彼は、こちらを振り返り、驚いたような表情を見せた。
どうやら、いきなり声をかけられたことに、驚いている様子だった。
とりあえず、自己紹介をすることにする。
自分の名前を名乗ると、彼も、名前を教えてくれた。
彼の名は、ルークというらしい。
話を聞く限り、彼は、この辺りに住んでいるわけではないようだ。
そもそも、住んでいる街の名前すら知らないらしく、
自分が今、どこにいるのかも、よくわかっていないようだった。
ただ、一つ言えることは、彼が、とても親切な人物であるということだ。
困っている自分を助けてくれただけでなく、
道に迷った自分を、家まで送ってくれるというのだ。
最初は、申し訳ない気持ちもあったが、最終的には、好意に甘えることにした。
そうして、彼と行動を共にすることになったのだが、しばらくすると、あることに気づいた。
それは、彼の持っている杖のことだ。
見たところ、かなり年季が入っているようだが、大切に扱われていることがよく分かる。
なぜなら、その杖の先端部分、つまり、柄の部分には、 綺麗な装飾が施されていたのだ。
そのデザインは、どこか、神秘的なものを感じさせるもので、
見ているだけで、心が落ち着くような感覚を覚えた。
そのことを指摘すると、彼は、照れくさそうな表情を浮かべた。
どうやら、褒められることに慣れてないらしい。
そんな姿が、なんだか可愛らしく思えた。
それからというもの、彼とは、毎日のように遊ぶようになった。
時には、森の中に入って、冒険ごっこをしたり、川で水遊びをしたり、
時には、街で買い物をしてみたり、とにかく、色々なことをして過ごした。
おかげで、毎日が充実していたし、とても楽しかった。
そんな日々が続いたある日、いつものように、いつもの場所で待ち合わせをしていたら、
突然、後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこには、見覚えのある顔があった。
それは、紛れもなく、あの時の彼、ルークだった。
なぜ、ここにいるんだろうと思っていると、 向こうの方から、声をかけてきた。
どうやら、迷子になってしまったらしい。
そこで、道案内をしてあげることにした。
幸い、目的地は同じ方向だったので、そのまま並んで歩いていくことにした。
しばらく歩いていると、不意に、彼が、こんなことを言い出した。
実は、最近、この街に引っ越してきたばかりだという。
それで、あちこち見て回っていたら、いつのまにか、迷ってしまったらしい。
そんな話を聞いているうちに、あることを思い出した。
そういえば、前に、この辺りのことを教えてあげたことがあるかもしれない、
そう思った私は、彼に、ある提案をした。
それは、この辺りにある、おすすめの場所を紹介するというものだった。
それを聞いた彼は、嬉しそうに頷いた。
こうして、私たちは、二人で、その場所へ向かうことになった。
到着すると、そこは、人気のない、静かな場所だった。
周囲には、木々が立ち並び、鳥のさえずりが聞こえてくる。
そんな場所に、彼は目を輝かせていた。
どうやら、気に入ってくれたようだ。
よかった、喜んでくれて。
そう思って、ホッとしていると、 急に、彼が、抱きついてきた。
突然のことに驚いていると、彼は、こう言った。
「あのね、俺、君のこと好きなんだ、よかったら、付き合ってくれないかな」
その言葉に、一瞬、頭が真っ白になった。
だって、そんなこと、言われたことなかったんだもん、どうしよう、すごく嬉しいけど、
でも、こんな私なんかでいいのかな、 頭の中で、色々な考えが、
ぐるぐると回っているうちに、 気がついたら、自然と口が動いていた。
「はい、よろしくお願いします」
そう言うと、彼は、満面の笑みを浮かべ、再び、強く抱きしめてきた。
こうして、二人は、恋人同士になったのである。
それからというもの、私たちは、毎日のように、一緒に過ごすようになった。
デートをしたり、手を繋いだり、キスしたり、時には、それ以上のこともしたりもした。
しかし、そんなある日、妖精フェリーズが現れ、こう言われた。
「貴女は私とお友達でしょ? どうして戻って来ないの?」
そう、私が、ここに戻ってきた理由、それは、友達のためだったのだ。
なのに、今の生活に溺れて、大切なことを忘れてしまっていた。
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