第31話 私と妖精
そんな状態のまま、一方的に攻撃を受け続ける羽目になり、
ついに限界を迎えようとしていた時に、突如として救世主が現れました。
その人物は、自分と同じくらいの歳の妖精で、手には剣を持っていました。
彼女はあっという間に相手を倒してしまうとその剣を鞘に収め、こちらに向かって笑いかけてきました。
その姿はまさにヒーローそのもので、自分もいつかこんな風になりたいと思いました。
それ以来、彼女に憧れを抱くようになり、いつか同じ舞台に立つことを夢見るようになりました。
彼女の名前は、確かフィーラゼシェと言ったはずです。
そんな彼女との出会いがきっかけで、今の自分がいると言っても過言ではありません。
あの日以来、毎日欠かさず鍛錬を続けてきました。
時には挫けそうになることもありましたが、その度に彼女の言葉を思い出し、自分を奮い立たせることができました。
そして、とうとうその日がやってきたのです。
今日、この日のためにずっと努力してきたのですから、絶対に負けるわけにはいきません。
必ず勝って、彼女に認めてもらうためにも全力で挑む覚悟です。
「さあ、勝負よ!」
そう言って、勢いよく斬りかかっていきます。
相手はそれを軽々と避けてしまいますが、そんなことは想定内です。
むしろ、これくらいできない方がおかしいくらいですから、気にせず続けます。
何度も何度も繰り返し攻撃を仕掛けている内に、次第に息が上がってきてしまいました。
でも、ここで諦めるわけにはいきません。
最後の力を振り絞って、渾身の一撃を放ちます。
結果は見事に命中!
見事勝利を収めることができました。
これでやっと認めてもらえたと思い、嬉しくなって飛び上がりそうになったのですが、
なぜか様子がおかしいことに気づきました。
よく見ると、相手が全くダメージを受けていないどころか、
傷一つ付いていないではありませんか!?
それどころか、余裕たっぷりの表情まで浮かべていて、完全に馬鹿にされているのがわかります。
悔しくて泣きそうになりながらも、必死に耐えていると、今度は向こうの方から仕掛けてきました。
「ほら、どうしたの? もっと頑張りなさい」
そう言いながら、次々と攻撃を繰り出してきます。
こちらは防ぐだけで精一杯なのに、相手はまだまだ余裕がある様子です。
このままではまずいと思った私は、一か八かの賭けに出ました。
それは、今まで一度も試したことが無い技を使うことにしたのです。
成功するかどうかはわかりませんが、やってみる価値はあると考え、実行に移すことにしました。
大きく息を吸い込み、精神を集中させます。
そして、心の中で叫び声を上げました。
その瞬間、全身から凄まじいエネルギーが溢れ出し、
まるで爆発するかの如く弾け飛んだのです。
その力に耐え切れず、地面が大きく陥没し、周囲の木々が激しく揺れ動き、
遠く離れているはずの鳥たちが一斉に空へと舞い上がるほどでした。
あまりの凄まじさに自分でも驚いてしまう程でしたが、
すぐに気持ちを切り替え、再び戦闘態勢に入ります。
今度こそ勝てるはずだと思いながら、再度挑みました。
しかし、またしても返り討ちに遭ってしまい、またもや地面に倒れ伏す羽目になってしまいます。
もうこれ以上は無理だと思って諦めかけたその時、奇跡が起きたのです。
何と、先程まで全く歯が立たなかったはずの敵が、急に苦しみ出したかと思うと、
その場に倒れて動かなくなったのです。
一体何が起こったのでしょうか?
不思議に思って見ていると、倒れたままピクリとも動かなくなり、
それっきり動くことはありませんでした。
何が起こったのか理解できずに呆然と立ち尽くしていると、
不意に後ろから声をかけられました。
振り返ると、そこには一人の妖精が立っていて、優しく微笑みかけてくれます。
その人は、私を助けてくれた恩人であり、後に師匠となる方でした。
その日から、私はこの人の下で修行を積むことになり、厳しい日々が始まりました。
「さあ、今日も張り切っていきましょう!」
元気よく挨拶をする私に対して、師匠もまた同じように返してくれます。
それが嬉しくて、ついつい頬が緩んでしまいます。
そんな私の様子を微笑ましく思いながら、師匠は再び歩き出します。
そうして辿り着いた先は、いつもと同じ場所でした。
そこは、私たちが拠点にしている村の中にある小さな広場で、周囲には様々な種類の花が咲き乱れています。
この場所に来るたびに思うのですが、とても美しい景色だと思います。
そんな中、師匠の後に続いて歩いていくと、その先には大きな木が生えていました。
高さは約10メートルもあり、幹回りもかなり太いものです。
これは、この村のシンボルとも言える存在で、私たちにとって大切な場所となっています。
まず最初に行うべきことは、この木に向かって祈りを捧げることから始まります。
目を閉じて、静かに手を合わせて祈りの言葉を口にします。
「我らを見守り給う大いなる母なる樹よ、どうか我々に祝福を与え給え」
そう唱え終わると同時に、周囲から優しい光が立ち込め始め、
辺り一面を照らし出すかのように輝きを増していきます。
その光景はとても幻想的で、いつまでも見ていたくなるほどの美しさがあります。
それからしばらくの間、その場で佇んでいると、徐々に光が収まっていきます。
それと同時に、私たちの体の中に何か温かいものが流れ込んでくるような感覚を覚えました。
これが何なのかはよく分かりませんが、不思議と悪い気はしないんです。
ちなみに、これをやる意味は特にありません。
強いて言えば、気分の問題です。
まぁ、とにかく無事に終わったわけですから、次はいよいよ本番に移りたいと思います。
というわけで、さっそく特訓開始です。
最初の課題として与えられたのは、体力作りのための走り込みです。
目標としては、1kmを走ることですが、最初はゆっくりでもいいので、
とにかく続けることが大切だと言われました。
なので、最初は軽く流しながら走っていたのですが、
途中でバテてしまい、結局半分くらいしか走れずに終わってしまいました。
それでも、初日にしては上出来だと褒められました。
嬉しかった反面、やっぱり悔しい気持ちもあったので、
次は絶対に最後までやり遂げてみせると心に誓いました。
それからというもの、毎日のように走り込みを続ける日々を送っていました。
そんな生活を続けているうちに、段々と体力がついてきたのか、
以前と比べて疲れにくくなったような気がします。
今では、1kmくらいなら連続で走っていても平気なくらいになりました。
これも全て、師匠のおかげです。
これからも頑張ります!
ある日、いつものように訓練をしていた時のこと、
突然、師匠がこんなことを言い出しました。
なんでも、次の任務に向けて、新しい仲間を増やしたいらしいのです。
そこで、私に白羽の矢が立ったというわけです。
正直、不安がないと言えば嘘になりますが、それ以上に期待の方が大きかったりします。
だって、あの妖精の仲間になれるかもしれないんですよ?
これほど嬉しいことはないじゃないですか!
そんなわけで、意気揚々と引き受けることにしたのですが、
いざとなるとなかなか勇気が出なくて、躊躇しているうちに時間だけが過ぎていってしまいました。
どうしよう、このままじゃいつまで経っても決まらないよ……と思っていた矢先、なんと向こうから声をかけてくれたのです。
突然のことで驚きましたが、せっかくの機会を逃すわけにはいきません。
なので、思い切ってお願いすることにしました。
そしたら、なんとOKしてくれたんです。
しかも、しかもですよ、一緒に来てくれるだけじゃなく、
いろいろ教えてくれるって言ってくれました。
嬉しすぎて涙が出そうでした。
こうして、私の旅が始まることになったのです。
目的地は、ここからずっと北に行ったところにある、小さな村です。
そこへ向かうためには、まず東へ向かって進み、
そこから西方面へ向かうルートを通り、最後に南方面へ向かうルートを通る必要があります。
これらのルートの中で、比較的安全かつ短時間で移動できるルートを選ぶことになります。
ちなみに、どのルートが一番早いのかと言うと、一番短いのは東ルートで、
次に長いのが西ルート、そして一番長いのが南ルートという順番になります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
*東ルート →距離が短い分、モンスターとの戦闘が多くなる可能性あり。
*西ルート →距離が短い分、他の2つのルートに比べて危険度が低い。
*南ルート →距離は長くなる分、その分時間を短縮できる。
さて、どれを選ぶべきか迷います。
どれを選んでもメリット・デメリットがあるので、難しい選択を迫られることになりそうです。
でも、ここで悩んでいても仕方ありません。
ここは直感を信じて決めるしかないです。
よし、決めました。
東ルートを選びましょう。
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