第27話 新しい家族

でも、その態度から察するに、何か隠し事をしていることは明白です。

そこで私は、思い切って直接聞いてみることにしました。

そうすると、最初は躊躇っていたようでしたが、

やがて覚悟を決めたのかポツリポツリと語り始めましたので聞き耳を立ててみることにします。

その内容とは一体なんなのかと言うと、それは私にとって衝撃的な内容でした。

なんと彼女は、自分が人間ではなく妖精であると言ったんです。

確かに言われてみれば思い当たる節がいくつかありましたし、

何より彼女の言動には不自然な点が多かったことからも納得できる部分が多かったのですが、

まさか本当にそうだとは思っていませんでしたので驚きましたよ……しかし同時に納得もできました。

何故なら彼女からは普通の子供では感じられないほどの不思議な雰囲気を感じ取っていたからです。

それに何より彼女が嘘をつくような子ではないと確信を持っていたからこそ信じられたわけですけど、

それでもまだ半信半疑な部分があったことも確かです。

だからこそ確かめようと試みたわけなんですが結果は大成功でしたね!

これでようやく確信を持つに至った私は、その後も何度も繰り返し呼びかけてみることにしたのですが、

その度に嬉しそうに笑ってくれる姿を見る度に心が満たされていくような気がして幸せな気分に浸ることができました。

「ねぇ、あなたは誰なの? どこから来たの?」

などと質問を投げかけても答えてくれるはずもなく、ただひたすらに微笑むだけだったんですけど、

それでもなお喜ぶ彼女の姿を見ていたら自然とこちらも笑顔になり、

ますます彼女のことが好きになっていく自分がいたんです。

それからというもの、私は毎日のように彼女と遊び始めることになりました。

何をするにしても常に一緒で、片時も離れることはありません。

それどころか、一緒にいる時間は日に日に増えていき、

今では一日の大半を共に過ごしていると言っても過言ではないでしょう。

そんな生活を送っている内に、私は次第に違和感を覚えるようになっていきました。

というのも、最近になって彼女の様子に変化が見られるようになったからです。

具体的には、どこか寂しそうな表情をしていることが多くなったような気がするんです。

心配になった私は思い切って尋ねてみたんですが、案の定と言うべきかはぐらかされてしまいましたので仕方なく諦めることにしました。

しかしそれでもなお気になってしまうものは仕方がないものでして……そこで私は一計を案じてみることにしたんです。

それは何かと言いますと、彼女が喜ぶようなサプライズを仕掛けることです。

例えば一緒に散歩に出かけたり、お昼寝をしたりなど普段通りの生活を

送りつつ隙を突いて仕掛けていくという作戦を立てました。

そして、ついに決行日を迎えたわけですが、果たして上手くいくかどうか不安ではありましたけど、

やってみる価値はあると思いましたので実行に移すことにしました。

まず最初に行ったのは一緒にお風呂に入ることでした。

彼女は最初こそ戸惑っていた様子でしたが、私が背中を流してあげると言ったら素直に従ってくれたんです。

その後は湯船に浸かりながら他愛のない会話をしたり、お互いの髪を洗いっこしたりと楽しいひと時を過ごすことが出来ました。

次にやった事は、寝る前の絵本の読み聞かせです。

これは以前からよくやっていたことなんですが、今日は少し違った趣向を凝らしてみました。

それは、彼女が好きな本を読み聞かせてあげるというものです。

最初はあまり興味を示してくれなかったんですが、

それでも根気よく続けるうちに次第に耳を傾けてくれるようになり、

最終的には最後まで聞いてくれた時にはとても嬉しかったです。

そして最後にプレゼントを渡したのですが、それが予想外にも喜んでもらえたようで

本当に良かったと思っていますし、何より彼女の笑顔が見れただけで私は満足でした。

そうして一日が終わり、明日はどんな事をしようかと考えている内に

いつの間にか眠りに落ちていたのでした。

それからというもの、毎日同じことを繰り返す日々を送っていました。

「おはよう!」

彼女に声をかけ、まずは朝食を摂りながら他愛もない会話をするのですが、

その中でふと気になる話題が出たのです。

それは妖精の生態についての話だったのですが、

なんでも子供にしか見えないとか何とか言ってた気がします。

まあでも実際に目の前にいるので問題ないんじゃないかとも思いますけど、

もし仮にそうだとしたら色々と大変なことが起こりうる可能性もあるわけでして……

例えば夜中に抜け出して何処かに行ってしまうだとか、

そういうことが起きる可能性があるかもしれないですから油断はできないかもしれませんね。

なので最近ではより一層注意深く見守るようにしていますし、

何か変化があったらすぐに気付けるようアンテナを張っていますから大丈夫だとは思いますが、

それでもやはり心配なものは心配なのですよね……そんな風に思いながら今日も一日が始まるのでした。

「ねぇ起きて~」

そんな声が聞こえ、目が覚めると目の前に彼女の姿がありました。

どうやら起こしに来てくれていたようですが、一体何かあったんでしょうか?

不思議に思って首を傾げていると彼女が言いました。

「実はお願いがあるんだけどいいかな?」

恐る恐る聞いてみると返ってきた言葉は意外なものでした。

それは何かと言うと、私にこの子を育てて欲しいという内容だったのです。

つまり、私に新たな家族ができたということですが、

突然の申し出に戸惑いを隠せませんでいた。

なにせ今まで一度もそんなことを言われたことが無かったのでびっくりしていたんですけれども、

よくよく考えてみれば、この子たちって自分の意志とは関係なく

生まれてきちゃうんですよね……だからきっと彼女もまた同じような境遇なのではないかと思ったんです。

だからこそ放っておけなかったのかもしれませんし、

何より私自身も彼女と一緒にいたいという気持ちが強かったので二つ返事で了承することにしたんです。

こうして私たちは家族になったのですが、それからというもの毎日が楽しくて仕方ありませんでしたね!

特に嬉しかったことは、彼女が少しずつ成長していく姿を見守ることができたことです。

最初は言葉も喋れなかったのに、今では普通に会話ができるようになりましたからね!

本当に感慨深いものがありますし感動すら覚えるほどです。

それに何より彼女の笑顔を見ていると心が癒されるんですよね~もう最高としか

言いようがないくらい幸せな日々を過ごすことができていますから感謝しかありませんよ本当に!

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