第22話 私とエリーズ①

そんなことを思いながら、しばらく見つめていると、不意に目を覚ましました。

「おはよう、よく眠れた?」

寝ぼけ眼でこちらを見てくる彼女に向かって声をかけると、

まだ完全に意識が覚醒していないようで、ボーッとしたままこちらを見つめてきました。

それから数秒後、ようやく焦点が定まってきたらしく、私の顔を認識できたみたいです。

「お、おはよ、ございます……」

恥ずかしそうに目を逸らしながら、消え入りそうな声で返事をする姿がまた可愛らしいんです。

そんなやりとりをしていると、不意に彼女の顔が近づいてきて、頬に軽くキスをされました。

驚いて目を丸くしていると、顔を真っ赤に染めて俯いてしまったのです。

その様子を見ていたら、何だかこっちまで恥ずかしくなってきてしまいました。

「ふふっ、顔真っ赤だよ」

と言ってからかうように言うと、さらに赤くなってしまって、

まるで林檎みたいで美味しそうだなと思ってしまいました。

その後も暫くの間は、恥ずかしさのあまりお互いに黙り込んでしまいましたが、

いつまでもこうしているわけにもいかないので、そろそろ起きようという話になりました。

朝食を食べ終え、身支度を整えてから外に出ると、既に空は晴れ渡っていて、

雲一つなく青空が広がり、太陽が照りつけています。

そんな外の眩しさに目を細めながらも、今日も1日頑張ろうという気持ちになれるのです。

そして、隣にいる大好きな人の手をそっと握って歩き出すのでした。

そうすると彼女もそれに応えるように握り返してくれるので、

それが嬉しくてつい口元が緩んでしまいます。

そうして2人で仲良く歩いている姿はとても幸せそうで、

周りから見ても微笑ましい光景なのでしょう。

実際、すれ違う人々からは温かい視線を送られているような気がしてなりません。

きっと気のせいではないでしょうけど、今はそんなこと気にしている場合ではありません。

それよりも今を楽しみたいですし、何よりもこの子と一緒にいられる時間が大切ですから、

余計な事を考えている暇はないんです。

だから私は今この瞬間を大切にすることに決めたんです。

だってその方が楽しいじゃないですか?

折角こうして一緒に過ごせるんですから、それを楽しまないと損です。

「エリーズ、どうしたの?」

急に立ち止まって考え込んでいる私を見て心配になったのか、彼女が声を掛けてきました。

何でもないよと答えると、安心したような表情を見せる彼女に対して微笑みかけると、再び歩き出しました。

「ねぇ、今日はどこ行くの?」

私が尋ねると、彼女は微笑みながら答えてくれました。

「えっとね、公園に行って遊ぼうと思ってるんだ」

と答えた瞬間、目を輝かせる彼女の様子に思わず吹き出してしまいそうに

なるほどの可愛さを感じたことは言うまでもありません。

本当にこの子は素直でいい子だなぁと思いつつも、そういうところも含めて好きになったんです。

そんなことを考えながら、私達は目的地へと向かって歩いて行きました。

公園に着くと早速遊ぶことになりました。

滑り台やブランコなどの遊具があり、子供たちが楽しそうに遊んでいましたが、

私達は特に何をするでもなく公園内を散歩していました。

そうすると、どこからかボールが転がってきて、足元で止まったので拾い上げてみると、それはサッカーボールでした。

おそらく遊んでいた子供達の誰かのものでしょう。

私は周囲を見回して持ち主を探しましたが、それらしき人影は見当たりませんでした。

どうしたものかと思っていると、後ろから声を掛けられました。

振り返るとそこには、小さな女の子が立っていたのです。

年齢は10歳前後といったところでしょうか、身長は私より少し小さいくらいで、

顔立ちはまだ幼い印象を受けますが、目元だけはキリッとしていて、

どことなく大人びた雰囲気を感じます。

服装からして恐らくこの辺りに住んでいる子だと思うのですが、何故か一人きりでいるようでした。

不思議に思った私は、彼女にボールを見せて尋ねました。

そうすると、彼女は首を横に振り、違うという意思表示をしてきました。

では、一体何を探しているのでしょうか、

そう思って考えていると、彼女が突然私の手を掴んできたのです。

いきなりのことで驚きましたが、よく見ると、その手には何かが握られていました。

それを見た瞬間、私はハッとしました。

何故なら、その手の中には見覚えのあるものがあったからです。

私が拾ったものと同じデザインのものがそこにありました。

つまり、そういうことなのです。

彼女はこれを探してくれていたのだと確信した私は、

彼女の目線に合わせてしゃがみ込むと、優しく語りかけました。

そうすると、少女は小さな声で答えてくれたのです。

それを聞いて、私は思わず微笑んでしまいました。

なぜなら、その言葉は私の求めていたものだったからです。

それを聞いた私は、少女の頭を優しく撫でながら、お礼を言いました。

少女は嬉しそうな表情を浮かべ、そのまま走り去っていきました。

その様子を見届けた後、私はエリーズの元へ戻り、二人で帰路につきました。

帰る途中、私は何度もあの言葉を繰り返し呟きながら歩くほどでした。

それほどまでに嬉しかったのです。

ですが、それと同時に不安も覚えました。

もしこれが他の人にバレたらどうなるかわからないからです。

しかし、それでも私は彼女を手放すつもりはありませんし、

ずっと一緒にいたいと思っています。

だからこそ、隠し通すしかないと思ったのです。

(大丈夫、絶対にバレないはず……)

自分に言い聞かせるように心の中で呟きつつ、私は決意を固めたのでした。

家に帰ってからも興奮冷めやらずといった状態でしたが、

それでもなんとか抑え込んで眠りにつくことができました。

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