第18話 彼女と過ごすお時間
「えっと、えっと、私がしなければいけないことって、自分を守ることと、
あの、エリーズを満足させることだと、お、思いました!」
頭の中が混乱するほどに焦ってしまい、支離滅裂になっていることは自覚していました。
それでも、なんとか自分の気持ちを口に出せた瞬間、
ホッと胸を撫で下ろすと同時に安堵感が込み上げてきましした。
それと同時に、何とも言えない幸福感に包まれることとなったのは言うまでもなく幸せなひとときでした。
(あぁ、もうだめ、幸せすぎる)
そんな思いに駆られつつも冷静さを取り戻すために深呼吸を繰り返します。
その間、エリーズが私を見つめながら黙って待っていてくれました。
その姿を見て愛おしさが湧き上がると同時に、感謝の言葉が自然と口を突いて出てきました。
「あ、ありがとうございます! わ、私のことを考えてくれて、嬉しいです!」
そう言った途端、涙が溢れ出してしまいました。
それを見た彼女が突然飛びかかり、そのままギュッと抱きしめられたので驚きました。
ですが、何だかよく分からない感情が込み上げて来てしまい、我慢することができなくなってしまったのです。
その結果、私は彼女を抱きしめる力を強めつつ、さらに大きな声で泣き叫んでしまいました。
その後は泣き疲れて眠ってしまったのですが、そのおかげで気持ちが整理されたような気がしています。
翌日、目を腫らしていた私に慌てるエリーズを見ながら笑みを浮かべつつ、改めてお礼を言おうと思いました。
(本当にありがとう!)
これからもずっと一緒にいようね、私の最高の親友さん。
そう心の中で呟いた後、今度はしっかりと伝えるべきことを言えるようにしようと心に誓いました。
それからしばらく経ったある日のことでした。
「あ、あの、あの、エリーズ、私を大人にしてくれませんか?」
意を決して尋ねることによって勇気を振り絞りました。
心臓がバクバクと鳴り響いているのがわかるほど緊張していたため、
声が上擦ってしまったかもしれませんでした。
けれど、この時の私の頭の中は真っ白になりつつも興奮状態にあったため、
自分の放った言葉を冷静に判断することもできなくなっていましたのです。
それほどまでに必死だったのかもしれません。
ただただ焦りが込み上げてきている気配はあったものの、不思議な高揚感が全身を支配してしまいました。
もはや正常な思考を成していない頭でなんとか次の一手を考えていたところで、
私の口から飛び出した言葉には二重に驚きました。
それは言葉を選んだという意識が微塵もなかったことです。
気付けば口に出ていたと言った方が正しいでしょう。
ですが、どうやら効果は抜群だったらしいようで、彼女の顔はみるみるうちに赤くなっていくと同時に、
真剣な表情を見せるではありませんか。
「うん、わかったよ。頑張るから期待してて」
と、真剣な面持ちで彼女は返答したのです。
一瞬戸惑ったものの、彼女の言葉に促されたのか、
深く考える暇もなく意識が現実へと引き戻されていきました。
気が付いた時にはベッドの上で仰向けになっており、
彼女が私に覆い被さるようにして馬乗りになっていることに気づきました。
それからというもの、私は彼女にされるがままの状態になってしまったようで、
もはや抗う術すらなく、なすがままとなっていまいそうでした。
そんな最中、突然エリーズの手が止まったかと思うと、
今度はゆっくりと顔を近づけてきたではありませんか。
(まさか、キスされる?!)
と思った途端、緊張感で固まってしまいます。
それでも勇気を出して受け入れることを選択したのは言うまでもありませんが……。
その後のことはよく覚えていないのです。
気が付けば朝を迎えており、隣には寝息を立てている彼女の姿がありました。
「あぁ、夢じゃないんだ!」
そう思いながら再び頰に触れた時、自然と笑みが溢れてきたのです。
彼女が隣にいるだけで幸せな気持ちで一杯になりますが、
それと同時に、彼女への愛も一層深まっているようでした。
この幸せを手放さないようにこれからもずっと一緒にいたいと強く思いました。
(ありがとうね、エリーズ)
彼女の髪を優しく撫でつつも心の中でそう呟き、感謝の気持ちを伝えていくのでした。
「エリーズ、おはよう!」
今日も朝から元気いっぱいの挨拶をしました。
そうすると、彼女は満面の笑みで応えてくれます。
(あぁ、幸せだなぁ)
私は心の中で呟きつつ、彼女の手を取ります。
そうして歩き始めると、いつものように他愛のない会話が始まりました。
しかし、その内容は私にとって非常に重要なものだったのです。
というのも、彼女が最近になって少し変わったような気がするからです。
具体的には何が変わったのかと言われると困ってしまうのですが……例えば、
以前よりも私に対する態度が優しくなったように感じますし、
言葉遣いも柔らかくなっている気がしています。
もちろん嬉しい変化ではあるのですが、同時に不安にも駆られるようになりました。
(もしかして嫌われちゃったのかな?)
そんな考えが頭を過るたびに胸が締め付けられるような思いに駆られてしまいますが、
それでも彼女に心配をかけるわけにはいかないと思い直し、平静を装うことにしています。
それでも、彼女と過ごす時間が長くなればなるほど不安は大きくなっていくばかりです。
そんなある日のこと、思い切って彼女に尋ねてみることにしました。
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