第15話 嬉しい私

その時から、リナの様子も変になり始めたのです。

急に顔色が悪くなり、立ちくらみを起こし始めたのです。

心配になった私は、すぐにでも事情を知りたいと思っていました。

ある日、私とリナはいつもの公園で話をしていました。

その時、突然リナがこんなことを言いだしたのです。

それは、自分が普通の人間ではないということを告白する話でした。

その話を聞いてショックを受けたものの、それ以上に驚いたことがあります。

なんと、リナもまた妖精に恋をしていたのだと言ったのでした。

そして、その相手の妖精さんはとても素敵で、

リナのことを一番想っていると言いましたので、私まで嬉しくて泣きそうになっていましたんです。

その後、私達二人は仲良く手を繫ぎながら家へと帰っていくのですが、

その間も妖精さんについての話は続きました。

そしてついには、私もリナと同意見だということを伝えることが出来ました。

その様子を遠くから見ていた妖精さんの顔は悲し気に見えました。

でも、そんなことには気付かずに、私達二人は同じ方向に向かって歩いていくのです。

「ねえ、リナ。私達、これからもずっと友達だよね?」

と私が尋ねると、彼女は笑顔で答えてくれました。

「もちろんだよ!」

その言葉を聞き、私は安心しました。

しかし、その時でした。

突然、目の前に現れた男性によって私達は引き離されてしまったのです。

男性は怒りに満ちた表情でこちらを睨みつけていますが、

私にはその理由が全く分かりませんでした。

そうすると彼は言いました。

「君たちは間違っている! 妖精は人間のものではないんだ!」

その言葉を聞いた瞬間、私は背筋が凍るような恐怖を感じました。

それと同時に、リナが悲しそうな表情を浮かべているのも見えましたので、

慌てて駆け寄り抱きしめますと、彼女もまた涙を流し始めました。

そんな私達の様子を見ていた男性が再び口を開きます。

「君達は、妖精に騙されているんだよ」

私は思わず反論しようとしましたが、

リナが強く引き留めるので、そのまま黙って聞くことにしました。

男性は更に続けます。

「よく考えてみてくれ! 

妖精なんかよりも人間の方がずっと素晴らしい生き物だと思わないかい?

それに、彼らはいずれ消えてしまう存在なんだよ!」

と言いましたので、私は驚きました。

しかし、それでもなお諦めきれずにいると、男性が続けて語り始めました。

「いいかい? 君達はまだ子供だから分からないかもしれないけれど、

大人になれば分かるはずだよ。この世界は人間と妖精たちだけで

成り立っているわけではないということをね」

そう言って立ち去ってしまいました。

その後、私達は家に帰るまで一言も話すことなく歩き続けましたが、

その間もずっと頭の中で彼の言葉が反芻されていました。

そして家に着くなりリナが口を開きました。

「ねえ、私、決めたことがあるの」

私は首を傾げながら尋ねました。

「どんなこと?」

そうすると、彼女は真剣な眼差しでこちらを見つめてきました。

その目を見た瞬間、嫌な予感がしました。

しかし、今更引き返すわけにもいかず、黙って話を聞き続けますと、

リナは驚くべき提案をしてきました。

「妖精達の元へ行かない?」

「えっ、どういうこと?」

私は戸惑いながらも聞き返すと、彼女は微笑みながら答えました。

「妖精達にお願いして、私達を妖精にしてもらうの」

その提案を聞いた瞬間、私は驚きのあまり言葉を失いましたが、すぐに我に返り反論しました。

しかし、リナは聞く耳を持たず、私を連れて行こうとするのです。

(このままだとまずい!)

そう思った私は必死で抵抗しますが、結局押し切られてしまいました。

その後、私達は妖精さん達がいる森へと向かいます。

道中では様々な出来事が起こりましたが、何とか無事に辿り着くことができました。

「妖精さん、お願いがあるの」

リナがそう言うと、一人の妖精さんが近づいてきました。

その妖精さんはとても美しい女性の姿をしていましたので、思わず見惚れてしまいました。

そうすると、彼女は微笑みながら言いました。

「私達に何を望むのかしら?」

私はドキドキしながらも答えます。

「私たちを妖精さんにして欲しいんです!」

それを聞いた瞬間、彼女の表情が変わったことに気付きました。

(あれ?)

と思った次の瞬間には、もう手遅れでした。

突然現れた別の男性によって私達は引き離されてしまいます。

そして、そのまま連れ去られてしまったのです。

最後に見えた光景は、悲しげな表情を浮かべるリナの姿でした。

それからというもの、私とリナは別々の場所で暮らすことになりました。

しかし、今でも連絡を取り合うことはできますし、

定期的に会う機会もありますので安心していますが、

それでも、リナが今どうしているのか分からないことが不安で仕方ありません。

そんなある日、突然、私の目の前に現れた男性によって私は連れ去られてしまいました。

彼はとても強引で、私のことを無理やり連れ去ったのです。

最初は抵抗していたのですが、次第に怖くなってきましたので、

大人しく従うことにしました。

それからというもの、毎日同じような日々が続きました。

食事は与えられるものの、それ以外は何もさせてもらえませんし、自由もありません。

ただ生きているだけの状態です。

そんな生活を送っているうちに私の心は次第に壊れていきました。

(もう嫌だ!)

そう思った瞬間でした。

ある日のこと、一人の男性が私の元にやってきました。

その男性は私を助けてくれた恩人であり、妖精さんでもあるそうです。

彼は私に言いました。

「君は、妖精になりたいかい?」

私は迷わず答えました。

「はい、なりたいです!」

そうすると彼は優しく微笑んでくれました。

そして、私の手を取りながらこう言いました。

「じゃあ、一緒に行こう!」

そう言って私を連れて行ってくれたのです。

それからというもの、毎日が楽しくなりました。

妖精さんと一緒に過ごす時間は本当に幸せでしたし、

何より自由になれたことが嬉しかったんです。

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