第12話 王子様との戦い
何と、私と一緒で国王様のお子様が亡くなったものの代わりとして呼ばれたというのです。
(それなら納得です! 本当によかったぁ)
ほっとしたのも束の間、もう一人の連れであるクロエさんを横目で見ながら考えていることがありました。
それは、私と彼女が同い年であり、同じ境遇であるという共通点を持っているということです。
そう考えると何だか不思議な感覚に陥ります。
そんな事を考えているうちに目的の場所に到着していたみたいです。
中に入ると、そこには多くの大人たちが集まっていましたが、皆一様に困惑している様子でした。
国王様の御子息(王子様)が見当たらないからです。
そこで改めて部屋の中を見渡すと、一人だけ、あの仏頂面した男の子を見つけました。
その表情は怒っているようにも見えます。
その隣で心配そうに見ている大人の女性はおそらく彼の母親でしょうから、少し話を聞きに行ってみることにしました。
「こんにちは、王子様の姿が見えないようですがどこにいるかご存じありませんか?」
と尋ねてみたところ、困惑した顔を浮かべていることに気づきました。
どうやら居場所までは分からないようですが、かなり思い詰めている様子でしたので心配になり聞いてみました。
そうすると、意外な答えが返ってきました。
何でも昨夜から部屋から出て来なくなってしまったそうです。
もしかしたら何かあったのではないかと心配していたのだと言います。
それを聞いて、いてもたってもいられなくなった私は部屋を飛び出して探しに行くことにしたのです。
後ろから呼び止める声が聞こえた気がしましたが構わず駆け出していました。
そうして辿り着いた場所は、王宮内の庭園の一角にあるお花畑でした。
とても広く、綺麗に整えられた花壇には色鮮やかな花が咲き乱れており、
まるで絵画のような光景を作り出していました。
そんな中にポツリと佇む小さな姿がありましたので、声を掛けることにしました。
「大丈夫ですか? どこか怪我をしている所はありませんか?」
その言葉に振り向いた顔は、よく見覚えのある顔でした。
その顔は紛れもなく王子様でした。
私が声を掛けると、一瞬驚いた表情を浮かべた後、黙り込んでしまいました。
暫く沈黙が続いた後、ようやく口を開いてくれたのですが、その表情からは怒りの感情が伝わってきました。
そして、次の瞬間には大声で叫びながら襲いかかって来たのです。
王子は足を肩幅程度に開き、脇を締めた姿勢で拳を強く握ったまま突き出したのです。
しかし、動きを見る限りはまだまだ素人といった感じであり、見切れない速度ではありませんでした。
私はさっと避けてみましたが、王子の攻撃はまだ止まりませんでした。
何度も繰り出される攻撃をかわしたり受け流したりしながら隙を伺っていましが、なかなか攻撃に転じることが出来ません。
なので、あえて攻撃を受け止めてみることにしたのですがこれが失敗でした。
「あいたっ!」
と鈍い音と軽い痛みが伝わってきました。
あまりの痛さに涙で目が潤むほどで、思わず尻餅をついてしまいました。
その後、すぐに立ち上がると王子を睨みつけました。
今度はこちらから攻撃する番です。
そう思ったのですが、そう簡単にはいかせて貰えませんでした。
彼は既に体制を整えていて、私を迎撃する準備が整っていたからです。
このまま不用意に飛び込めば返り討ちに遭ってしまうのは明白でしたから、今は様子を見るしかありませんでした。
私は、じっと王子の動きを見つめ続けます。
彼が再び拳を振り上げた所を狙って身をかわしました。
そして、すかさず回し蹴りを繰り出します!
思い切り足を回したつもりが、王子の顔の上を通り過ぎていきましたが問題ありません。
私の狙いは別にあるのですから!
「きゃっ!」
王子は軽く悲鳴を上げ、そのまま地面に尻餅をついてしまいました。
油断していた私は、そこを見逃しませんでした。
思い切り相手の顔を殴ったのです。
もちろん手加減はしました。
それでも、王子の顔は痣だらけになってしまい、とても痛そうにしています。
でも、それだけですみました。
だってまだ、骨を折ったり傷めつけていないんですもの!
そんなことを考えている間にも彼は起き上がり私に向かって殴りかかってきましたので、後ろに下がって避けました。
それからも攻撃が続いたのですが、どれも全て軽い当たりだったので私は全然痛くありませんでした。
暫くすると動きに疲れが見え始め、息が上がり始めていましたのでそろそろだと思って、攻撃をしていきました。
「やあ!」
思い切り力を込め、真っ直ぐ繰り出した拳が王子様の顔に命中しました。
私は初めて人を殴る感触に少し驚きながらも、彼を倒しきりました。
その途端、私の心の中で何かが壊れたような音が聞こえました。
それと同時に私は初めて人に暴力を振るったという事実に気づいたのです。
その事実に怖くなったのですが、同時にドキドキする感覚に襲われてしまいました。
私は最低です。
こんな酷い事をしてしまったのだから謝らなければと頭ではわかっていたのですが、
どうしても行動には移せませんでした。
何故なら、彼には人の痛みを感じさせる必要があるからです。
そんな時でした。
私を追う足音が聞こえて来たのは!
そうです。
兵士達がやってきたのです。
まずいです、このままでは捕まってしまうと考えた私は全力で逃げ出そうとしましたが、
すぐに捕まりてしまいました。
彼らは私を縛ろうと手を伸ばしてきましたが、そんなことはどうでもよかったので思い切り暴れることにしました。
手足をバタバタと動かし必死に抵抗していた時、急に痛みがやって来ましたのでそちらを見ると、蹴られたようでした。
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