第11話 皐月侑那⑪
「いいか、お前がエリーズを殺した張本人なんだろう?
証拠は既に揃っているんだ。大人しく認めてしまえよ」
それを聞いた瞬間、頭が真っ白になりました。
(どうして私が疑われているの……?)
訳が分からず混乱していると、彼は更に続けて言いました。
どうやら最初から計画されていたことで、私をおびき寄せるつもりだったようです。
あの時声をかけてきたのは、私を利用して犯人を炙り出すためだったみたいです。
そして、王様は私を始末する気だと聞かされて驚きました。
(そんなの困る! もう、村には戻れないってことなのかな?)
絶望に打ちひしがれている私に構わず、どんどん迫ってくるので怖くなって後ずさりしますが、
背中が壁にぶつかってしまいました。
もう逃げられないと思ったその時です。
ガチャリと音がして誰かが部屋に入ってきました。
その人はなんとリゼットさんでした。
「無事ですか? 心配しましたよ、お迎えに参りました」
と言って手を差し伸べてくれたのです。
涙が出るほど嬉しかったのですが、今はそれどころではありません。
だって、このままだと殺されてしまうかもしれないのですから。
怯える私に気が付いたのか、 安心させるように微笑んでくれましたが、
状況が状況だけに不安しかありません。
しかし次の瞬間には険しい表情に変わっていて、王様の方を睨みつけていました。
それを見て何かを察したようですが、特に気に留めた様子はありませんでした。
それだけ私が重要だということでしょう。
あくまでもこの場で殺す気はないようでしたけれど、それも時間の問題だと感じましたし、
それにさっきの一件で相当警戒しているはずですから油断ならない状態であることは間違いありません。
(それにしても何故エリーズを殺したのか聞かなくてはいけませんね)
というリゼットさんの言葉を聞いて思わず青ざめてしまいました。
「その質問に答える前に、一つお願いがあるんだ」
と王様が言いました。
その内容を聞いた瞬間、私は耳を疑いました。
それは、私の魔法でエリーズさんのことを蘇らせて欲しいというものだったのです。
驚きましたが、迷っている暇はありません。
すぐに頷き、言われた通りに魔法を使いました。
光り輝く魔法陣が出現し、その中にエリーズさんが姿を現したではありませんか!
それを見たリゼットさんはほっと胸を撫で下ろしているようでしたし、
私も安心しましたよ本当に無事でよかったです。
(心の中では悲しみでいっぱいだったけどね)
その後は無事解決したという訳なのですが、実はまだ問題が残っているんですそれは……。
目の前に倒れている男性の人たちのことです。
幸いにも全員意識を失っているだけみたいですけれど、放っておいても良いものなのかどうなのか悩みます。
どうしたら良いのでしょうか?
困り果てていると、突然扉が開き誰かが入ってきました。
「おい、どうした? 一体何があったんだ?」
と心配そうな表情を浮かべて駆け寄って来たのは、なんと国王様だったのです。
流石にこの状況を見られてはまずいと思ったので、咄嗟に誤魔化そうとしたのですが上手くいきません。
結局、全部話すことにしたんです。
そうすると、王様はしばらく悩んだ後、こう言いました。
「この者達の処分については私が責任を持つことにしよう」
というお言葉にはびっくりしましたが、同時に嬉しさも感じました。
だって、これで村の皆さんに迷惑をかけずに済むのですから。
そんなことを考えているうちにリゼットさんが犯人達を拘束し終えたらしく、
部屋を出て行こうとしていましたので私もそれに続くことにします。
(あれ、そういえば誰が憲兵を呼んでくれたんだろう?)
疑問を抱きつつも部屋を出る直前に振り返りましたが誰もいませんでした。
おかしいなぁと思いつつも次の目的地に向かいました。
「さあ、着きましたよ」
そう言って案内されたのはとある部屋だった。
中に入るとそこには一人の女性が待っていた。
(誰だろう?)
不思議に思っている私をよそに、その人は挨拶をしてきた。
「はじめまして、私はクロエと言います」
と名乗った後、笑顔で話し掛けてきた彼女だったが、私のことを妹だと勘違いしているようだった。
(違う!)
そう言ったつもりだったのだが伝わらなかったらしく首を傾げられてしまう始末で大変困りました。
しかしその直後、何か思いついたような顔をすると満面の笑みを浮かべながらこう言ったのです。
「そうでしたか! じゃあ今日から私の妹になるのですね?」
と言われた瞬間、頭が真っ白になってしまいました。
反論する間もなく話が進んでいくうちにどうやら彼女は勝手に話を決めつけてしまったようですが、
正直どうでもよくなっていました。
だって相手が相手ですから仕方がないでしょう。
「でも、どうして貴方はここに連れてこられたのですか?
何か問題でもあったんですか?」
と言われ、私は事情を話すことにした。
最初は半信半疑だったが、徐々に信じる気になったのか真剣になって話を聞いてくれたのです。
そして、ある程度話が進んだところで彼女の口から出た言葉は意外なものだった。
「私も協力させてください」
という内容であり、私は驚いていた。
何故そんなことを言うのだろうかと思ったからだ。
しかし、その理由を聞く間もなく彼女は続けた。
「だって、貴方は困っているのでしょう?
そんなの見過ごせるはずがありませんもの!
それに私には家族はいないから寂しい思いもしないし!」
それを聞いて確信に変わったことがある、この人は良い人だということだ。
それだけでなく私と同じ境遇であることにも気づいたためかますます放っておけなくなったのである。
その後、彼女を連れて孤児院へと戻ったのだった。
院長先生や子供達からも歓迎を受けつつ一夜を過ごした翌朝のことだ。
私達は国王様の使いと名乗る男性に案内されて王宮へと向かっていたのですが、
道の途中で疑問に感じたことを聞いてみようと思い立ったので思い切って聞いてみることにしました。
(なぜ自分たちまで連れてこられたのでしょうか?)
と心の中で呟きながら問うてみると、返ってきた答えは意外なものでした。
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