3-7

「やっぱり親子だよね。ケンタとマスターってよく似てるの」

「そうかなあ」

「ヒロ君は一緒にいるところ見ていないから」

「そうかもしれないけど」

「ライブのほうはどうだったの」

「やり切ったかな」カスミが明るい声で言う。

「いっしょに出た女の子が別のライブに出ないかって誘ってくれたの」

「彼女もすごく良かったよ。かおりちゃんっていうの。今度紹介する」

「マスターの店にはもう出ないの」

「また同じような企画をするから出てほしいって」

「そうやって少しずつでも活動が広がるといいよね」

「そうだね」

 ヒロは電話を切った。カスミはこれから電車で帰ってくる。エミさんと子どもたちはもう一泊することになったようだ。

「ねえカスミ、あたしもあの町に住もうかな」

「お姉ちゃんの居場所はここじゃないの」

「そんなことないよ。おじいちゃんはあの家に一人でいるんでしょう」

「そうだけど」

「おじいちゃんのことは大丈夫だよ。サブおじさんだっているし」

「そうじゃないの。ゆっくり見つけてもいいのかなって、あたしの居場所」

「お姉ちゃんはあの町に住むようなタイプじゃないよ」

「少しお休みしちゃダメ」

 お姉ちゃんは千草に戻りたいのかな。

 カスミはカップに残ったカフェラテを見ている。

「そろそろ時間でしょ」

 そう言って千草はトレーを持って出口のほうに歩きはじめた。カスミはギターケースを背負って千草の後につづく。

「連休になったら一度そっちに行くね。お店もヒマだし」

「あたしもヒロ君も忙しいよ」

「おじいちゃんは忙しくないでしょう」

 そう言って千草は改札に向かうカスミの肩を軽くたたいた。

「マスターごめんなさい」

「ユキさん今日お店は」

「お休みしたの」

「わかっていたの、あたしも。仕組んだのはあの二人だけど」

 マスターはただ微笑んでいた。

「カスミちゃん、すごくいいね」

 カスミの歌を聴いているマスターのとなりでケンタが歌っているカスミをじっと見ている。

「あの頃はおたがいに行き先が違っていたから」マスターがケンタの頭をなでながらポツリと言った。

「合いたかったんでしょう」

「会いたかったさ」




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