2-9
「ねえユキさん。妹さんストリートで歌ってたんですよね」
ユキはカーディガンにデニムのパンツ。スニーカーを履いている。
「混雑しているみたいだから、気を使わなくていいものがいいと思って」
カーディガンの上には、ロングのダウンジャケットを着ていた。
「これ通販で買ったの」ユキがにこやかに言う。
少しめかしこんできたカオルと、スーツを着たタカシは目を見合わせて笑った。
そしてまわりの人の多さに驚いた三人は、お参りをあきらめてコーヒーショップに入っている。
「時間があったら家の近くの神社に行ってみる」
「それがいいですね。せっかく出てきたんだし」
「あたし初詣なんてホント久しぶり」
「あたしもよ」そう言ってユキが笑う。
「ところで何なんだよ。ユキさんの妹さんの話は」
「マスターが新人みたいな人を集めてライブをやりたいらしいの」
「どうですか、ユキさん」
「妹には聞いてみるけど、どうかなあ」
「そうですよね」
「そうだよ」タカシはカオルの顔をじっと見ている。
「もしユキさんの妹さんがライブに出るってことになれば、あいつも一緒に来るのかな」
「それはわからないよ」
ユキと別れた後、カオルとタカシは夕食も兼ねて居酒屋に入っていた。
「神社寒かったね」
「ほとんど人がいなかったしね」
「ここはコウちゃんが教えてくれたの。元旦もやってるって」
「そうか。タカシ、コウちゃん知らないよね」
「常連の人でしょう。一度ぐらい会ってるかも」
いか焼のにおいがタカシの鼻をくすぐった。
「お刺身食べるの久しぶりかも」
「今度、寿司食べに行こうよ」
「そうだね」
「そういえば、今日はユキさんあいつのこと聞かなかったね」
「二人とも知らんぷりしたからね」
「言っておいたほうがいいのかな」
「ホッケまだこないのかな」
カオルはタカシから目をそらしながらそう言った。
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