2-8
川から少し入ったところにある神社。浅草からはさほど離れていないけれど、位置的には川の反対側になる。
一月もこの時期になると、休日でも参拝者はなくひっそりとしていた。
「浅草から少し離れるとこんなに静かなんだね」
「すごい人だったよね」
「スカイツリーも無理っぽい感じだね」
「まあね」
「いい天気なのに」カスミが少し残念そうに言う。
「平日に来ればいいのかな」
「そんなに変わらないんじゃない。観光地だし」
「でもやっぱり違うと思う。今日は歩くのも大変だった」
「一度は上がってみたいよね」カスミは空を見上げながら言った。
「ねえどう思うお姉ちゃんの話」
二人はお参りを済ませて、入ってきた鳥居のほうに歩きはじめた。
「カスミはどうなの」
「たしかに新しい曲もできてるし」
「ライブハウスで歌ったことはあるの」
「ない、ストリートだけ」
「思いつかなかった」
「そんなことないよ。誘われたこともあったし」
「そうなんだ」
風もなく穏やかな日だった。
「あったかいね」ヒロの腕をつかみ、体を寄せながらカスミが言う。
ヒロとカスミは橋を渡って地下鉄の駅に向かった。
「池袋か。なつかしいね」
「何であの時、ヒロ君はあそこを歩いてたの」
「それがね、はっきり思いだせないんだ」
「特に目的もなくて、人ゴミに紛れていたかっただけなのかもしれない」
地下鉄から山手線へ。カスミが小走りになっている。
「そんなに急がなくても。時間には間に合うから」
「あの子たち、ちゃんとしてたかな」
「サキはともかく、ケンタはしっかりしてるから」
「そうだよね」
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