2-7
「ねえ、着物着ていったほうがいいかな」
「一人で着れるの」
「そうだよね」
「それよりもカオル、着物なんて持ってた」
「そうか」
タカシは雑煮の餅をかじりながら、相変わらずカオルらしいと思った。
「どうしてもユキさんのこと考えちゃうんだよね」
「たしかにユキさんは着物似合そうだね」
「タカシぐらい休みがあればなあ」
「実家に帰るとかしないの」
「今さら帰っても、驚かれて迷惑がられるだけだから」
「お母さん一人でさびしくないの」
「妹が近くにいるから」
「えっ、タカシ妹さんがいるの」
「言わなかった」
タカシはそう言いながら、おたがい知らぬ者同士ってことかと思った。それならそれでもいいし、こんなところで生きていくには好都合なのかもしれない。
「妹のダンナが婿に入ったようなもんだよ」
「そうなんだ」
カオルはそれでも家族がいることがうらやましく思えた。自分はいつ誰と家族になるのだろう。
「ユキさん、意外とカジュアルだったって言ってなかった」
「あの時はね」
「オレもスーツじゃない方がいいのかな。会社に行くみたいだし」
「それじゃ何着ていくの」
「そこなんだよね」
タカシは雑煮の汁を飲み干した。カオルは料理が上手い。でもそれを知っている人って何人くらいいるのかな。
「そろそろ支度しないと。待ち合わせの時間があるんだから」
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