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三郎がおじいちゃんの家に年越しそばを持ってきてくれた。ヒロもカスミも仕事が忙しいせいか年を越すという実感はなかったけれど、こうしておじいちゃんとテーブルを囲んでそばを食べることで、新しい年がまたやってくるということを感じることができた。
「ここから学校に通っているころは、いつもこうしてサブおじさんのおそばを二人で食べたんだよね」
カスミの言葉におじいちゃんはにっこり笑う。
そして「今日は一人増えた」と言った。
「おそば食べたら仕事に行くの」
「そうだね。でも朝には一度帰ってくるよ」
「そうして。お雑煮作って待ってるから」
「カスミが作るの」
「おもち焼いて、サブおじさんが持ってきてくれた汁を温めるだけだけど」
「それだけでもうれしいよ」おじいちゃんが言う。
一月も半ばをすぎた頃、ヒロとカスミはケンタとサキを連れて電車に乗っていた。
いつも一緒にいるけれど、こうして出かけるとなると本当に大変だなとヒロは感じていた。聞き分けの良い子どもたちだけれど、それでも何かと気を使う。
カスミは子どもたちと楽しそうに話をしている。
「あたし向いてるのかな、こういう仕事」カスミがヒロに言った。
ケンタとサキはエミの友だちの神田夫妻の招待を受けていた。
ヒロとカスミは二人を神田夫妻のところまで連れていくことになっている。
ホテルで会って以来子どもたちは神田夫妻と仲良しになっていた。
「神田さんに預けたら別行動でもいいのかな」
「それは好きにしていいって言ってたよ」
「そうなんだ」
「お姉さんに会ってみようよ。子どもたちは神田さんに任せて」
「そうだね。お姉ちゃんには昨日電話しておいたから」
「今夜時間とれるかな」
「お姉ちゃんも仕事があるから。着いたら電話してみるよ」
「そうだね」
「ねえ、サキちゃん。神田のおじさんはどこに連れていってくれるって言ってたの」
サキはカスミの言ったことに首を傾げた。
「水族館だよ、カスミちゃん」ケンタがそう答えた。
「たのしみだね」
「たのしみ」サキが満面の笑顔で答える。
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