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カスミはいくつかのコードを鳴らしたあと、少し考え込み、またコードを鳴らしていく。
ヒロはそんなカスミを見ながらピンク色のハーブティーを一口すすった。ローズヒップのアスコルビン酸とハイビスカスのクエン酸の酸味が舌から脳に刺激を伝える。ペパーミントも入れた方がよかったかな。ヒロは心の中でつぶやいた。
「お茶飲んだら。頭がすっきりするよ」
「どのコードに行けばいいのかわからなくなっちゃった」
「一度忘れちゃった方がいいかもね」
「そうかな」
カスミは抱えていたギターを置いて、ヒロのいるテーブルにすり寄ってくる。そしてテーブルの上のハーブティーをすすった。
「いいね」
「そうかな」
「ペパーミント入ってる」
「やっぱり入れた方がよかったかな」
「でも悪くないよ」
「そろそろ時間」
「そうだね。これ飲んだら行ってみる」
「カスミは」
「今日はいいの。明日は早いけど」
「休み取れそう」
「アキラ君しだいだけど、今のところは大丈夫」
「アキラ君には話してないんでしょう」
「詳しくはね」
ヒロは立ち上がってケータイを取り出す。
「今から出るところです」
「エミねえさんから。マメだよね」
「ここに来てからずっとだからね。電話がないとこっちが心配しちゃう」
「エミねえさんらしいけど、イヤになることないの」
「もう空気みたいなものだから」
カスミは壁ぎわに戻ってまたギターを弾きはじめた。流れるようにコードが進んでいく。
「ヒロ君できたよ」カスミの明るい声が部屋の中に響いた。
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