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「ねえ、そろそろパソコン換えたら。すごく遅いの」

「そうだね。買ってからだいぶ経つし、OSも古いから」

 タカシはインターネットの通販サイトをのぞいているカオルの様子をうかがいながらそう言う。

「それより、そろそろお店に行かなくていいの」

「もうそんな時間」

「そんな時間だよ」

「そうか」

「集中していると時間忘れちゃうんだよね」

 そんなに熱中するものが通販サイトにあるのだろうかと思いながら、タカシはカオルのすわっているデスクのほうに歩いていく。

「普段はのんびりしているのに、パソコンに向かうと人が変わるね」

「そんなことないよ。このパソコンが遅いだけ」

「ここに来た頃はそんなこと言ってなかったじゃない」

 タカシはそう言って、カオルの背中を包み込むように抱いた。

「そうだった」カオルはタカシに背中を抱かれたままゆっくりと立ち上がる。

「いかなくちゃね」

 カオルをせかしているわけじゃない。どうも最近はせかしているのか、せかされているのかわからないことが多すぎる。

 タカシはそう思った。

 カオルは着ていた服を脱いで店に行く支度をはじめている。カオルのメイクはまた元に戻っているのかな。あの頃ほどハデになっているわけじゃないけれど、クラブのホステスを辞めて今の店に行きはじめた頃とは明らかに違っている。長かった髪も短くなった。

 タカシは何気なくパソコンをのぞいて、カオルが見ていた画面を見ている。

 画面の中の女性の下着がタカシの目を刺激する。そしてついさっき自分の目の前にいた下着姿のカオルが、自分の部屋の景色に同化していることに少なからず驚きを感じていた。

「何見てるの」

「別にそんな」タカシはすばやくマウスをクリックして画面を戻した。

「じゃあ、行ってくるね」

 カオルがタカシの耳元で囁くように言う。

 離れていくカオルの背中を見ながら、タカシが何かを言おうとして止めたとき、カオルがほんの一瞬だけタカシのほうを振り返った。

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