帰ってから、彼女に介抱されて。


 はじめて、授業を休んだ。風邪のだるさよりも、今後の課題や授業のだるさの方が大きかった。どうやって、取り返せばいいんだろう。


 彼女。やさしく看病してくれた。彼女が変わっていないのが、なんだか、嬉しかった。


「ごめんね。こんな夜中に」


「いいの。あなたに会えた。それだけで、わたしは、幸せだから」


 よくわからないけど。彼女の掌。暖かくて、気持ちよかった。


「君の手。暖かい」


「わたし、基礎体温高いから」


 額に当てられる、彼女の暖かさを。


 感じながら、眠りの誘いに、耐えた。


「寝ていいんだよ?」


 彼女。不思議そうに、訊いてくる。


「いま。寝たら。また、君が。いなくなっちゃう気がして。誰かに、取られちゃう、ような。気がして」


 彼女。額に当てられていた掌が、消えて。


 いなくなった。


「よいしょ」


 お布団。


 自分の隣。


 暖かくなる。


「じゃあ、わたしここで寝るね。これならお持ち帰りされない」


「いや。そういう意味じゃなくて」


「おやすみ」


 彼女。寝息が聴こえる。


「風邪引いてる人間よりも早く寝たよ」


 彼女の寝顔を確認する前に。

 自分も、眠ってしまっていた。


 午前四時。


 暖かな、朝の匂い。

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