第8話 血
ガルアンと別れてアイロスとルンメル家のユンフとミーフはお互い話し合っていると、アイロスは一人の緑髪のエルフに目が向いた。しかしなんだかうつむいていて元気がない。
「おんや、普通のエルフか、そういえば最近は亜人を見ないねぇ」
「そういえば、そうねぇ、居づらいのかしら――」
そんな話をしている二人を後目に近づいてく。
「こんにちは」
「あ、えっ......」
「あぁ、やっぱダメですかね、はは、ダークエルフだからなぁ」
仕方ない、実際の所、亜人という各々の種族で黒魔術が得意とかそういう特性はないと思う。悪魔の力とかまったく知らないし。しかし、恐れられたら無理強いはできない。
「あ、大丈夫、驚きはしたけれど、何か?」
「暗い顔をしていたから、気になってしまいまして......過ぎた真似ですかね......」
どうやら、彼女の父は西部騎士隊の騎士として入隊しており、西部では暴動が続発している中、安否がわからずじまい、そんな中での出席だったらしい。
「すごいお父様ですね、西部騎士隊なんて......」
「そう、ありがとう、でも、あなたは神聖騎士団でしょ?」
「うッ......」
これは嫌味に思えてしまったのか......地方騎士とは仲が悪いとは聞いていたけれど、まさかこれほどとは......
「パパから聞いているの、帝都にいる騎士は紛いモノだって、地方騎士の方が頑張ってるのよ?」
「まっ待ってください、地方騎士が苦労しているのは知っていますが......」
それでは帝都の神聖騎士は頑張っていないみたいだ、それは侮辱であり認められない。
「神聖騎士団は騎士団で苦労をしています、その言い方はやめてください、みなに失礼です」
「......そうね、少し言い過ぎた、ごめん」
そういって頭を下げてきた。
「僕はアイロス=メルアと言います、今では珍しいダークエルフですが」
「......カウヤ=オンレ......よろしく」
「よろしくお願いします」
カウヤと話していると彼女がどれほど父親を誇りに思っているのかがわかる、彼女も父と同じ騎士になる為に特訓を重ねているらしい。
「でしたら、時間のある時、僕と一緒に訓練しますか?見習いの身ですが多少なら教えられる事もあるかもしれません」
そしたら大喜びして......大声で喜ぶものだから、みんなに注目されてしまって顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。
「西部騎士は誰よりも果敢に魔女と戦う騎士、皇帝陛下から肝いりの作戦も受けるくらいに実力もあるの、父も仕事で忙しいから手紙を出せないのね」
きっとそうだろう、とくに西部騎士は戦闘が多い騎士と言うから余計に彼女に出来るのは現地にいる父親に心配されないように気を付ける事くらい。
「......約束ね?アイロス、あたしに訓練してくれるの」
「えぇ、約束です」
「楽しみにしてるね」
人に教えるというのは良い訓練にもなるらしいし、自分としても有り難い事。
「うーん、それにしてもガルアンさんはまだかなぁ?」
◆◇◆◇
「こっこんなのあんまりだッ魔女なんて......長老派だなんて匿っていないのにッ!」
燃え盛る炎の中、逃げ惑う人々。
そんな様子を西部騎士隊のある神聖騎士は茫然と見る。
「......これが、信仰の守護者?」
やっている事は蛮族の行為そのもの、擁護のしようがない。
騎士たちは魔女の手先の疑惑があるものを捕まえていく。
「こいつは怪しい、逃げ出したぞ」「騎士に対して殴り掛かってきた、反逆罪だ」
「裏切り者ッ」「こいつは魔女に違いないッ」
「「殺せッ殺せッ殺せッ」」
これは魔女かもしれない、魔女は悪魔からあらゆる秘術を教えて貰っているという、長老派は魔女から秘術を賜り、それを独自に改変した術を使うという。みんな危険だ、生き残りを作って復讐されるのはもっと怖い。魔女の復讐は子無しの呪いだという。真偽は分からないけどとても怖い。
だから皆殺しだ。生存者を出さなければ復讐されない。
「全員殺さなくて......我らも殺されるんだッ俺たちの子供もッ!」
そうだね。
しかし、今回も魔女はいなかった、捕り逃したのかもしれない、そしたら大変だ、彼らには断絶の呪いがかけられるかもしれない。断絶の呪いは恐ろしき呪い、その人を、その子孫を滅亡の未来へ誘う呪いだ、奇跡的に孫の顔は見られても、近い未来に血筋が途絶える事を確定させる最悪の呪い......それが断絶の呪い。
「畜生、次だ、次ッ、次に行くぞッ」
そう、英断だ、近隣の森を村を町を探して回った方が良いね。幸い魔女の呪いは魔女を殺せば解呪できるんだよ......まぁ呪われた人間がそう思い込みたいだけなんだけどね。そんな解呪方法は知らないんだ......少なくとも殺して解かれるなんておかしいよね。だって断絶の呪いなんだよ?これは与えられた呪いなんだよね。
「くそ、魔女は必ずいるはずだ、早く殺して呪いを解かないと、俺の最後の子供がッ」
西部騎士隊の隊長プーザ=レンナヴァ、彼の生き残っていた子供の一人は死んでしまった、もう子供は一人しかいないのだから必死なのだ。
なんて子供思いなんだろう、そんな人が子供を殺しているんだよ、親を殺して怒りと苦悶を振りまき続けてる、亀裂を分裂へ断絶へと進ませるんだ、滑稽だね?
「次の村に行くぞッこんどこそ......」
殺戮を繰り返す、止める者はいない、進む進む、地獄へ進む。
◆◇◆◇
「ほらぁ、ガルアンさん......ッ!」
下品に両足を開いているマリアにぐちゅぐちゅと音を立てて、自分がしている背徳感に心を燃やして、より激しく。
「ガルアンさん、ほらわたくしにお顔を見せてッ」
顔を両手で抑え、マリアは目を見開いて、不気味に微笑みながら、じっと見つめて。
「素敵......素敵よガルアン......んッ!」
中に出すがそんな余韻に浸らずすぐに顔を近づけて。
首元に口を近づて来て――
ガブッ
「なッ――」
マリアは首元に歯を突き立てて来た、あまりの激痛に引き離そうとするが、離さない。思わずマリアにのしかかる形で倒れこんでしまう。
「いッ......一体、どうして......」
ガジガジと歯を皮膚にねじ込ませて引き千切る。
「――いッ!?」
血がマリアの顔にポタポタと垂れていく、抑えても零れて収まらない、どうして、どんどんと血液は落ちていって......純白はただ血で、赤黒く汚れていく。
「あぁ、赤い......赤いわ......」
「――」
血を手に付けて、それを舐めたり顔に塗りたくる。
「見てください、見ていてください......」
茫然と見ていたら、マリアは座り始めて血の付いた指をちゅぱちゅぱと舐めて、時々こちらを見てくる、誘うように、見せつけてくる。
「ああ......」
それを見ていると衝動的に立って自らのモノに手をかけてしまう。
「興奮しているのですね、こんな状況でッ、嬉しい、嬉しいッ」
マリアも血を舐めながら自分のをぐちゅぐちゅと触って、喘ぎ始める。
その光景はまさに地獄、血を舐めながら行為をする少女に向かって、同じように行為をしている男。噛まれた傷は痛みではなく快楽が襲って来ていた。
「......見せてくださいッ......」
マリアはこちらに近づいてきて、跪きながら。懇願するのだ。
「がっガルアン、はぁはぁ......わたくしにどうかお見せくださいッ......あなたが恍惚している様をわたくしにだけ......んッ」
血で薄汚れたマリアは笑顔で言うのだ、口元に血をつけて......赤くて、黒い、血。
「あぁッ」
「ガルアンさん、今の表情素敵ですわッ.....いっ一緒にイきましょう?一緒にッ!」
お互いが誰にも見せられない秘密のこと。いまマリアが見せているのは本当のマリアなんだ。あぁ、だとしたらなんて醜いことだろう、いまのマリアは血で薄汚れてる。
純白のお前ではないけれど。
一番輝いてる気さえした。
「んッ!!」
自分は達し、マリアにぶつけると同時にマリアも達した。
そして顔を見上げたまま笑顔で。
「ガルアンさん、今のお気持ちはどうですか......」
血と自分のそれで汚れて、火照った顔でそう聞いてくるんだ、それに喜んでしまう自分がいる、結局自分もアレクシスと同じなんだ。看破しようが何も変わらない。
「マリア......」
思わずそうつぶやいてしまうけれど、何も言わない、彼女はそのまま笑顔で立ち上がり近くの水たまりで顔を洗っている。
「......」
首の噛み傷をどう言い訳しようか......。
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