第4話 取るに足らないささやかな
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※第4話は省略と一部編集していますので無修正はノクターンノベルズでどうぞ。
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神聖騎士団での揉め事が起きてしまい空気の悪い中でその日を過ごし、帰りの頃、既に辺りは暗くなっていた。ガルアンは一人でイライラとしながら考え込みながら歩いていた。
「クソッ騎士団内はピリピリしてる......なんでどいつもこいつ問題を起こしたがる」
最近は特にそうだ、騎士団内だけではない、村も町もどこか余裕がなく、事あるごとに揉める、揉めるだけならまだいいが殺しが起きる。
「今日は魔女狩りの報を聞かなかったからマシか......」
トコトコと歩きながら、ウレイアとルーグが貧困者に菓子を配るか否かで揉めたあの出来事を思い出す。
「大体あの菓子のどこが美味いんだ、あんなものは粘土を丸めただけだ、噛み応えも後味も最悪、口の水分は持っていかれる......そもそも
そこまで言いかけた所で料理も飲み物もイマイチだと言う事を思い出した為に頭を振るう。無いものを考えて苦しむのはもうやめている。
一度は神聖アルオン帝国を抜け出そうとも考えた。
「この世界の外国なんてほとんど知らないが、北部は大体が雪原、氷の山と凍った海、南部は断崖がほとんどを覆ってるせいで一般人はまず踏破できない、一部の渓谷のみが通り道だがそこは帝国が検問してる」
そもそも一般人は出国なんて許可されない神聖騎士であってもだ。断崖を登り切っても、そこは死の世界と言われる極寒と多くの魔物が潜む魔境。渓谷を通っても標高が高くなればやはり極寒。そんな状態の為に本当はこの国の外ほぼ滅亡しているのでは?なんて都市伝説も流行った時があった。
「実際この国は世界的には比較的良い方の国らしい、こんな国が比較的良いだなんて、んじゃあそんな国に生まれた俺は幸運かな?」
そう言って自分を満足させる。所詮自分もそんな世界の一員だ、正義の改革者を気取る気は毛頭ないのだ。
「......しまった、考え事をしていたら変な所に迷い込んじまった」
周りを見まわたすと何とも可憐な服装をした女がチラチラと見え始めた。
「......娼婦か」
辺りは既に暗い、この国ではこういった存在自体が本当は許されるモノではない。
「それでも黙認されるんだからな」
みな晴れやかで小綺麗な服を着ているのはあくまでもデートを待っているだけ、という体だろう。流石にわかりやすい服で表に出る訳にはいかない。
「......」
今日信仰の模範生としてウレイアが熱く語ったっていたのを軽く思い出す。普通に言えば神聖騎士がこういったところに立ち寄る事自体がアウト。
「......まぁ実際バレた事はない、それにこれくらいバレたって謹慎くらいだろう」
自らが勝手に設けたルールによって許可を下す。
前世の価値観を持ってしても悪と断じられる事をした事のある彼に道徳感は無くなって久しい。
意気揚々と物色する。
それにガルアンにとって間違いなく至福の時であり、ストレスを緩和できる数少ない事、あれやこれや選り好みしていると――
「ん?」
遠くにいる一人、周りよりは少し若い、10代だろうか長い三つ編みの栗色の髪、かなり地味目な少女が目に入った。
「そっそこのお方、お茶は如何?銀貨3枚で!」
少女は継ぎ接ぎだらけの長く赤いドレスを命一杯広げて男たちを誘うが上手くはいかない。
「あっそこの人、部屋に珈琲があるのよ?ご一緒に――あ」
今度は他のライバルに取られてしまった。
「......あの娘に興味あるの?」
「――!」
いきなりの事に驚いて後ろを振り向く。
ピンクを基調にした奇抜な服装と厚化粧をして若作りをした女は周りより明らかに浮いていた。歯茎をくっきり見せつけながら笑う。
「そーんなびっくりしなくたって良いじゃない」
「俺じゃなかったら殴られてるからな」
「まぁまぁ、それよりあんたどっかで......もしかして神聖騎士のガルアン=マサリーかい?」
これはまずい、何もせずに通報は勘弁だ、そう思い逃げようとするが。
「あぁ、待って、平気よこういう生業をしてる人はみんな口が堅いから」
女は煙草を吹かす。
「あの娘に興味あるの?」
「......そうかもしれない、少し知り合いに似ているのかもな」
「アルって名前らしいね、田舎から来たばっかりで頼る当てがなくてはこんな場所に堕ちてきたの」
「知らん名だ、やっぱり気のせいか」
誘おうとしても上手くお客を取れていないがそれでも懸命に誘い続ける。
「他に仕事はなかったのか?」
ガルアンはそう言うと、女は遠くに目を向ける。
「手伝いをしているとは聞いているわ、でも生きていくのが精いっぱいなご時世。給料もたかが知れてるでしょう......この国に余裕があれば違ったのかもね......」
「......」
「それで、あの娘とお茶するの?そ・れ・と・も......」
女は口を〇の形にして。
「ロロロロッ――私のお口による職人技をご堪能する?「結構です」
即時に拒否をして、アルの方を見る。
「きっと何かの縁だ、アルとお茶を楽しむ事にする」
「あら、ざんね~ん」
アルの方へ近づいていく。
「そこのお人!お茶でもいかが?」
継ぎ接ぎだらけのスカートを懸命にヒラヒラとさせる。
「......構わないよ、案内してくれ」
「――ッハイ!」
アルについていくように歩いていく。
様々な人とすれ違いながら、歩いていくと徐々に人の気が無くなっていく。
「随分とさびれた所に部屋があるんだな」
「お金がなくて......」
娼婦の多いところは大体が裏社会の住人なんかが表沙汰にならないように気を付けてたりするが、ここではそれも無理そうだ。
怪しい浮浪者なんかがこっちを興味深々と見てくるが睨み返すとそそくさと逃げていく。
「時々は上手くいくの、でもここまでくるとやっぱりなしと言われる事も多くてね......困っちゃうわよね!こう見えてテクニックは自信あるのよ?」
にこやかに元気ぶりをアピールする。
「ふふ、だろうな」
命の危険を感じるモノも多いだろう。
「私も正直、危ない目にも遭ったわ、何とか助かったけど......」
そんな事を曲に話せばそれは皆、怖くて逃げてしまうはずだ。裏の情報網ではそんなアルを危険な存在として認定しているのかもしれない、だから余計うまくいかないのだろう。
少し大きめなアパートに到着した、やはり周囲は暗く建物も全体的な色合いは灰色で何かと不気味な廃墟を思わせる。
「ここが私が借りている部屋......少し汚いけど......」
「......」
部屋と言っても大部屋が一つあとは小さな部屋が少しくらい、想像よりは広かったが、外の景観や部屋の埃っぽさはガルアンにはキツイものがあった。
綺麗と言ったらベッドくらいだ、後は本当に何もなく椅子と机くらい。
しかし、部屋に似合わず、珈琲豆や茶葉はあるらしい。
「すまない、少し飲み物を頼めるか?」
□
薄暗い部屋の中、小さなロウソクが机の上、後は月明かりのみが照らすのみ、ベッドは幸いにして月明かりと火の明かりで少し照らされていて、わかるので事を行っても大丈夫そうだ。
「......珈琲、少し薄いかも......」
「ありがとう......」
出された珈琲を飲んでみる。案の定というべきか、味は薄い。貴重な嗜好品というのは極限まで水で薄めて長期的に楽しむようにしているとはいえ、ガルアンは前世での珈琲の味を覚えている為、中々に苦痛である。
「しかし、こんな部屋にいるのに珈琲はあるのか、正直紛い物か何かだろうと勘ぐっていた」
「お兄が時々プレゼントをしてくれるの、私が好きなもだって......」
アルは静かに座るがアルの前にはコップはない、珈琲やら茶葉やらは客人の為にしか使っていないのだろう。
「......そういえば年齢を聞いていなかった」
「22......あなたは......あっ、失礼でした......」
「隠す事でもない、25だ」
娼婦が客に個人情報を聞くのは駄目だろうが、ガルアン自身は気にしない。
「酒はあるか?」
ガルアンに聞かれたアルは棚から小さな酒の瓶とコップを置く。
「全部飲んで構わないわ」
ガルルアは酒にコップを注ぐとアルに渡す。
「えっ、私には必要ないわよ?」
「流石に全部を俺一人っていうのは格好がつかないだろう?一杯くらい飲んでくれ」
そう言われてアルはお酒を飲み、ガルアンにお酒を注ぐとガルアンが飲んだ。
「22歳には見えないな、外で見たときは10代に見えたよ」
「元々小柄だし、食べ物もあまり食べてないからかな?小さく見えるのかも」
「......しかし、22歳で娼婦か、確か最近ここに来たらしいな?」
「えぇ色々とあって......ただアルルアも話に聞いていた情報とは違ったの」
「違う?」
「村落部とは違って帝都は地方から搾取した税によって栄えているし、苦労もないと、噂を鵜呑みにするものじゃないわ......はは......」
軽く笑う。
「私なんてここに来て日が浅いからわからない事もあるけど、それでもわかった事があるわ、帝都アルルアの住人もみんな苦労してた......みんな大変なの」
「......そう、その通りだ......誰かが幸福を盗っているわけではないんだ」
ガルアンはゆっくり酒を飲んでいく。
「でも、きっと大丈夫、神様が助けてくれるはず」
「......」
やっぱりな、ガルアンはただそう思った。ここでは大体二通りに分かれる事があると考えている、それは帝国か聖教会の二通り。恐らくみんな自覚はない。しかし、権威としてどちらに重きを置いているのだ。
「アルは神が助けてくれると考えているのか?神はいると?いまアンタが苦しんでいて何もしてくれないのに?」
ふとそう質問した、公ではできない内容だ。世俗派と教権派で分裂していると言っても道徳心とか倫理感まではそう簡単には変わらない。
「......いる、きっと......あなたもきっと救ってくれる、必ず......」
アルにそう言われ。
「......なんだ、それ......意味が解らないな......はぁ娼婦に神について問いかけるなんて俺が馬鹿だった」
その言葉にアルは明らかに動揺し、目線を下げる。
自分でもどうかしているとは思っていたのだ、一体どうして娼婦如きにこんな話をしようと思ったのか、抱いて終わる一夜の関係だ、だというのに......。
「言っておくがな、俺は神はいるとは思ってる、ただそいつが俺たちを救ってくれるのかは別問題だ......結局、わかっている真実は俺たちが不幸であるという事だけ......」
「......」
「人生は苦悶に満ちている」
「......あなたはずっと苦しんでいるの?」
「......」
ガルアンは一気に酒を飲み終えると、座っているアルの後ろに近づいていく。
「アル」
「ん?」
アルに顔を近づけ――
「ん......」
唇を重ねる。
「アル......そうだろう、俺たちはきっと報われない......」
キスをしながら思わず抱き寄せる、不思議と懐かしい気持ちがした。
そんな気持ちを思い出す為により強く抱き寄せる。
「きゃっ――もう......少し待ってよね......」
自分が服を脱いでいくのに合わせてアルも自ら服を脱いでいく。控え目な所謂貧乳というべき乳房が露わになる。身体は食事が取れていない為にあばら骨などが見えるくらいに痩せ細っている。
「......貧相な身体よね......」
少し笑いながらスカートも脱いでいく。
「そんな事ない」
「嘘でも嬉しい......」
ガルアンがベッドに押し倒してキスをした。
「んッ」
舌をアルの口内に入れるとアルも同じようにこっちに舌を入れて絡めてくる。
お互いが唾液を交換し合っているだけでも感じる多幸感。いままでの悩み事が全て馬鹿らしく思えてくる。
「アル――アルッ!!」
「ッ――」
息が苦しくなるくらいにキスを続ける、この多幸感を失わない為。
現実を忘れる為に。
「今日は、今日だけは俺だけの物なんだよな!?」
アルの乳房を勢いよく口で頬張ると「――アッ」と小さく声を上げて、そのまま両手で頭を押さえつけてくる。
「んっそんな所っ」
小さな乳房を優しく噛みつくと「んッ///」と色を帯びた声が零れだし、頭を押さえつけていた両手の力を弱まる。
「ッ......はぁはぁ、こんなッ......胸がいいの?」
噛みついたり舐めたり。
「ッ///んっもうッ......子供みたいにッ......んッ///」
アルは喘ぎながら、彼女の母性本能をくすぐったのだろうか、頭を撫でて優しく抱いてくる。
「はぁはぁ///ッ」
舌を使い舐め回すと刺激を求めているのか、頭を強く押さえつけて、少し噛む
「だっダメッそれ以上はッ――ンッ!?」
今にもというタイミングでアルに濃厚なキスをする、舌を絡めて、お互いの身体をこすり合わせる。
「チュ、んッ///」
身体と唇でお互いが一つになる感覚を味わいながら我を忘れてただ快楽を求める。
命と命が擦れ合う事の喜びをただ一心に感じ続ける。
「はぁ......はぁ......」
どれほど経ったか、流石に少し疲れて呼吸を整える。
「もう、ヒドイわ......あなたいつもさっきみたいに意地悪してるのね?」
「......そんな事はないが......」
「自覚がないなら、尚更問題ね?ふふふ、でもお胸に執着してる所可愛かったわよ?.....ちゅっ」
そう言ってキスをしてきた。
「随分と余裕そうだな......外では客が取れていなかったのに......」
「その話題には触れないでッ!」
胸を思いきりつねられた。
「コラ動かないの、ふふっ昔ね私にエッチな事をした人がいてね、それで技術を覚えたのよ?もっと強くして快感に溺れてみる?」
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※省略
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お互いが高め合い
「ごめんなさいッお兄ッ私やっちゃった!約束また破っちゃった!私、悪い子だからッお兄に初めてもあげられなかった癖にッまたお兄以外の人と一緒に果てちゃうのッ!」
そして一つになる。
「はぁ......まだ、イケるでしょう?ふふっまだ元気そうだもの......」
「あぁ、だけど、アルも疲れただろう、次は俺が――」
「いいの、今日だけは何もかも忘れさせるから......全部私に任せなさい......ね?」
「――っ」
「さぁ、続きを始めましょうね?」
□
あれからしばらくたち、アルがこっちをちらっと見てくる――
「気は晴れた?」
「――あぁ......」
「それは――良かった、チュッ」
唇を離すと顔を火照らせたアルが静かに笑みを浮かべていた。
それを最後に瞼を閉じた。
□
「起きて、ほら~もう朝よ?」
「ん~?もう少し......」
「もう、起きて、お仕事とか大丈夫なの?」
日差しが照らしている、どうやら、眠っていたようだった。
「あぁ、そうか、仕事......っち、行きたくねぇ......」
アルを見ると既に服を着ていた。
「ん~?」
「なんだ?じっと見つめて?」
「......気のせい......かな?」
何やら考えているのをよそに思い出す。
「あぁ、そうだ、お金......えっと」
「銀貨3枚よ」
「......いや、10枚だ」
「えっ!?」
神聖騎士の月収の3分の1だ、しかし、今日のガルアンは気分が良い、まさに大盤振る舞いである。
「そんなに貰えないわ!」
「いい、やる」
小袋を真っ逆さまにして銀貨10枚をじゃらんと出す。
「いまの俺は気分が良いんだ、ほら外を見て見ろ、太陽はサンサンと照り、小鳥がさえずり、街中ではこんな場所でもジジィとガキ共が談笑してる。こういう日には施しを与える事にしているんだよ......」
極めて穏やかな表情で外を見るガルアンに困惑を示すアル。
「なんて素晴らしい......こんな暖かい日は1年でもそうはない」
「......」
ガルアンは静かに青空を見上げる。
「取るに足らないささやかな幸福の日々......そういう時が続けば良いのに」
「そうね......」
「......ッ」
「あら?」
腕を伸ばしてガルアンの目元の涙を拭う。
「......悲しくなったらまたおいで?銀貨7枚分も返さないといけないから......ネ?」
今日ほど幸福な気持ちを満ち足りた気持ちを味わった事はほとんどなかった。
わかっている、これは刹那の幸福。幸福とは刹那的だから意味がある......
なんて言葉は反吐が出る。
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