第2話 罪深き者共
ガルアン=マサリーの突然の暴挙にアイロス=メルアは抵抗する、肉体的な差により、ガルアンに押し倒され――
「だっダメっ!」
思わず蹴られるが、肉体的にガルアンの方が有利であるために無理やり続ける。
「んっ!ん~っ!」
息をするため、唇を離されるアイロス。
「ダメ......禁忌で――」
「そんなのは関係ないだろ!」
「ガルアンさん、いきなりどうして――」
ガルアン自身もどうして、このような事をしたのか、いまの今まで抑えてきた願望をさらけ出したのか......
「いっいや......」
アイロスを肩に抱き上げながら寝室まで連れて、ベッドに投げる。
「どうして......こんな事したら......」
きっと何もかもどうでもよくなったからだ、救いがないこの人生はくだらない、救われないという思いがあるからだ。
「......許せよ、アイロス」
ベッドに寝かせ、片手でアイロスの両腕を抑えながら――
「あ――」
アイロスのサファイアの瞳を見る。金色の髪を見る。
「お前の瞳はマリアにそっくりだ......その輝く金色の髪もそっくりなんだ......」
初めて見た時から、彼の瞳に目を奪われた、金髪に目を奪われた。
「マリア......」
普段は隠す己の女々しい感情を暴露してしまうのは同じ男が相手だからだろうか?
「やっ......」
服の中をもう片方の手でまさぐる。
「あっ」
服を両腕まで脱がして縛る、アイロスの両足を身体で押さえつけ、両手は服で縛り、何もできない状態にした。
「少しは筋肉あるんだな......」
アイロスは剣の訓練もしていたからか、少しは筋肉がついていた。
褐色肌な彼の腹の部分をサスサスと触り......スルリと胸へと移動する。
「――」
胸を執拗に触り続けると、アイロスの声は徐々に色を帯び始めてきた。
「――ッ、やめてくださいッ!何かッ――」
力を強めたり、つねったり、そうしていると反応も激しくなってきた。
「あッ、変にッ!」
自らの指先一つ、容易く息を荒くさせていく......その様に己の加虐心はより増大させていく。
「やめてッ!」
無視、
無視、
無視。
「あッあッあッ」
そうやって喘ぐ姿を見ていると己を抑える枷はドンドンなくなっていく。
己に生まれる好奇心は止まらない。
アイロスの胸に顔近づいて。
「???」
嚙みついた。
「ッッ!?」
理解不能なのだろうか、アイロスの声には驚きが混じる。
「――」
こういう感覚なのか。同性の胸を揉むという感覚は。
「ッッッ///」
噛んだり舐めたり、その動作一つ一つは自身の肉体を直接興奮させる訳ではない、異性とは違い胸の柔らかさもない......ないけれど――
「あぁぁッッ!!」
のたうち回るアイロスに抱き着きながら胸を舐め続ける。
アイロスに、ただ一方的な......身勝手な快楽を与え続けた。
どれほど経ったか、アイロスには抵抗の様子はもう感じられない。というより抵抗する気力を失っている。
「ハァ......ハァ......」
「アイロス......お前の初めて俺が貰うからな、俺で卒業しろ!」
――お前はもう元には戻れない、俺と同じ絶望を味わえ――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※省略
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ゲホッ!ゲホッ!」
「......」
アイロスはせき込みながら、両手を抑えていた。
ふとどれほど時が経ったか、気になり外を見てみると、空は日が昇りつつあった。
「......」
そして、自らのした行為について冷静になってくる。
「あぁ、クソクソクソッ!」
己の激情、歯ぎしりしながら我慢して部屋の中へと戻る、罪悪感と嫌悪感、それはとどまる事を知らず、ただひたすらに自己嫌悪を繰り返すのだった。
◆◇◆◇
神聖騎士団が待機する訓練場では、今でも倒すべき敵に備え訓練が行われていた。
そんな訓練所の端ではある雑談が行われていた。
「ガルアン、今日は休みなのか?」
「はい、体調が悪いと......」
「珍しい、まぁ最近は悩んでたようだし、休養が必要か」
一人は他より一回り大きな緑髪の男、、もう一人、薄い茶色の髪の男がガルアンについて話し合っていた。
「悩み?」
「何だかな、元々そういう気はあったけど、最近はより躊躇でな......アレか、マリア様の結婚が近づいて来たからかな」
「あぁマリア様とガルアン、護衛をしていたらしい仲ですし、まぁサートナ=シルバさんに代わりましたが」
そんな会話に黒髪のおさげをした眼鏡の騎士が話に加わる。
「なんで代わったんですか?」
「っと、驚いた......確かマリア様が要望したとか」
「不和......というわけではなさそうですよね、今も交流はあるそうですし」
そしてこういう話になれば決まって割って入る者がいる。
「こらこら、探らない探らない!」
水色のショートカットの女、ウレイア=リルー18歳。
「わわっウレイアだ」
ウレイアは両手を腰に当てて、頬を膨らませる。
「ガルアンはね、
「そっその、ウレイアはリンアさんの件、もう納得したんですね......」
おさげの女はそういうと、ウレイアは平然と答える。
「それはどういう?」
「裏切られたとか、どうしてとか、そういう悲しみが......私は納得しきれてはいないので......」
「悪は死んだ、善を為した......それで十分よ、悲しいとかはあるけど、それは神聖騎士団内から魔女を出した事への悲しみの方が大きいわね」
「そう......ですか」
「みんなも気を付けてよね!身内で暴き合いとかしたくないから」
「わっわかってるって、全くウレイアは真面目だなぁ」
「そもそも、まだ休憩の時間じゃないわよ?」
「あっははっ、偶然集まってだけだから......んじゃ」
そう言って3人は雑談を解散していく。
「もう......」
「......関心するぞ、ウレイア」
「っ!ペイアイ様」
ちょび髭男ペイアイは静かに笑みを浮かべながら近づく、ウレイアはペイアイに気が付いた瞬間に姿勢を直し、迎える。
「光栄です」
「ウレイアが来てからは騎士団は規律をより尊重し維持するようになった、流石はリルー家の娘だ」
「有り難き事です、父上のような気高き精神に習い、私も神聖騎士として働いて、
神に殉じたいと思います」
「神に殉じ、それは良い......国は......どのように思い、守るかね?」
「......騎士ですから、敵と戦い守りますが......」
「......そうか、それだけか」
「すみません、何か間違えてしまいましたか?」
「まさか......君は間違えた答えを返してはいない」
ペイアイはそう言ってにこやかにその場を去る、その静かな背中にウレイアはただ不思議気に見つめるのだった。
◆◇◆◇
シーゼル邸
シーゼル伯爵三女マリア=シーゼルの婚約者はアルニコ公爵の長男であるアレクシス=アルニコ、今シーゼル邸ではマリアに会いに来たアレクシスの為に急ぎで準備をしている所である。
「嗚呼、マリア、マリアや」
「おばさまそんな言わなくても聞こえておりますわ」
「んも、そんな風に言わないでくださいまし、あなたはシーゼル家の至宝と言われた乙女、そんなお人の従者の一人という名誉を得た私は何時いつだって言い続けていたいですもの、嗚呼、マリア、マリアや、と」
「ふふっそんなにわたくし上げてよろしいのですの?次に仕える人の時、大変ですわよ?」
「ご安心を私は貴方様を最後にして引退を決めていますもの」
「そうなの、残念だわ......」
「残念なんてありますか、最後が貴方で光栄でございます......それでは私は......」
そんなお付きと別れ、歩いているとサートナ=シルバが近づいてくる。
「マリア、アレクシス=アルニコは今、扉の先にいる」
「ありがとうございます、サートナさん、でも心配は無用ですわよ?彼はそう言う事はしませんもの」
「はぁ、そう簡単に人を信じるなよ、婚約者同士と言えど、それなりのルールがあるからな?」
アレクシス=アルニコ、アルニコ公爵家の長男である、マリアに一目ぼれしてそのまま縁談は進み、もはや結婚は確実視されている。
「ふふっ大丈夫ですわ、心配性ですわね」
「はぁ......全く、不安で不安で気が休まらん、アレクシス殿は二人きりをご所望だ、何かあったら叫べよ?いかに公爵家だろうと伯爵家に好き勝手が許される訳ではないからな」
「えぇ、わかっていますわ」
そう言ってマリアは大扉を開く。
扉の先には全身に真っ白なスーツを着てポマードを塗りたくった黒髪を自慢げに見せびらかすように頭を下げている。
「やぁ、マリア」
「ふふっカッコいいですわ」
「それだけでも、ここに来た甲斐があるってもんさ」
公爵家の長男アレクシス=アルニコと伯爵家の三女マリア=シーゼル、一見すればアレクシスの方が立場は上であるし本人もそう自覚している、しかし。
「わぁ、男の人の身体ってとても硬くて素敵ですわ」
「あぁ、君がガタイの良い人が好みと聞いてね、トレーニングしているんだよ」
サワサワとお互い向き合う丸机と椅子、マリアは身体を思いきり前に出して、アレクシスの腕を触る。
「わぁ......」
「......自分も触って良いかい......」
「えっ......もう、周りに内緒ですわよ?ふしだらな女と思われてしまいますから」
「勿論、二人だけの秘密さ」
そういってアレクシスが逆にマリアの手を触る。
「美しい、サラサラだ、気持ちがいい」
「ふふふっ、なんだかくすぐったいですわ」
アレクシスがマリアの手を触りながら、少し黙り込むと何やら話始めた。
「......僕は公爵家の長男として色々な教養を教えられた、そして、僕という存在がどれほどに恵まれていたのか、僕は飢えた事はないし、明日の生死を考えた事もない。だが、今年も凶作という、今年も富める者は富み、貧しき者は貧しくなるのだろう、僕がこんな事言えば、庶民から恨み言を言われるだろう、しかし――」
マリアの白い手の甲を触り、そして――
「ん」
「まっ!」
手の甲にキスをした。
「今は自らの地位が恨めしい、結婚前の性行為が不純だとか、そういうのを気にせずに犯してやりたいよ」
「まぁ......」
「みな
「......」
アレクシスは26歳、いまだ性欲旺盛で、自制を聞かせるのがやっとであった、アルニコ公爵家は宗教により厳格な保守派である為、そういった不純な行為は禁じられていた。そういった事の反動かそもそもがそういう行為の興味関心は人一倍あった。
「わたくしはいまだそのような事は禁じられていますわ......ですから......」
自らの白い指をアレクシスの口元に近寄せ。
「お口を開けてくださいまし」
不思議に思ったが言われた通りに口を開けると
「ヴォッ!?」
マリアはアレクシスの開けた口に指を入れていじくりまわる。
あまりにも予想外な行為にアレクシスは困惑するがマリアはそれを万悦な笑みを浮かべながら「グリ......グリ」まるで、子供がアリの巣に木の枝を突っ込むような。そういう行為を無邪気さからではなく、明らかに意図的にしていた。
「ふふふ......」
「ォッ!」
グチョグチョッと舌や頬をぐるりとしたら舌の下や、喉の奥、指で口内を散々に弄られ「ウッ、エッ!」少々嗚咽音を出すとマリアはアレクシスの口から指を出して唾液でベトベトになった手を官能的に舐める。
「んっ......レロ......」
アレクシスはそれを食い入るように見る、一目ぼれした女が自らの唾液を舐めている、その様を......。
「ふふっアレクシス様、少しは落ち着きましたか?」
「っあぁ......」
「いけませんわ、殿方があのようにしていては......」
「す、すまないね」
「ふふふっ仕方ないですわね......二人だけの秘密にしてあげます」
公爵家の長男アレクシス=アルニコと伯爵家の三女マリア=シーゼルとのお話は長く長く続いた。
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