第52話プロ野球選手を☆で評価だ!(野球経験はありませんが。なにか?)

 小谷野優二 五十五歳。男性。☆1・95(138754件)


 この男の職業などを話す前に先に評価をお見せしたい。ご覧のように十万を超える人間からの評価数。そしてその評価も低い。中には高評価する人もいるが人ログは平均値を表示する。つまりこの男の評価はものすごく低い。ただ、この小谷野氏。何か特別悪いことをしたわけではない。自分に与えられた責務に対し彼なりに真摯に取り組み頑張ってきた。白髪も増えた。自分が思うようにいかないことが多かった。そして何よりも評価は分かりやすかった。彼の職業は『プロ野球の監督』である。そして彼の率いる『大阪ジャガーズ』は現在低迷している。生え抜きの四番候補に生え抜きの若いエース候補。助っ人外国人なんかいらないんじゃないかと思えるほど各ポジションには期待の生え抜き野手が育ち、国産打線でも十分戦えるほどの戦力であった。しかしプロのレギュラー野手を育てるには時間もかかるし、我慢も必要となる。彼は四年契約の間に前任の監督が育成途中だった選手たちを育てた。しかし『大阪ジャガーズ』は関西の人気球団。毎年優勝争いしなければファンは怒る。


「小谷野は野球が分かってない」


 現役時代の小谷野氏は打てるキャッチャーとして活躍し、『大阪ジャガーズ』のリーグ制覇に貢献した。引退後もいったん現場を離れ、解説者として外から野球を見、そして前任監督が辞任する時に周りは『次は小谷野しかいない。小谷野なら今の戦力を育てて、大阪ジャガーズを常勝軍団にしてくれる』と期待した。満を持しての小谷野政権の船出であった。


 そして一年目が四位。二年目が二位。三年目も二位。四年契約の最終年である現在、三位から大きくゲーム差をつけられての四位であった。しかも日替わりで最下位転落もあり得る四位である。そしてこれは『事実』である。ファンは人ログに書き込みまくった。


「一部の選手の贔屓が目に余る。他の選手のモチベーションが下がるだろうが!辞めてまえ!この無能!☆1」


「素人でもあんな采配はない。無能にもほどがある。とっとクビにしろ。☆1」


「昨日の試合、小谷野の継投ミスで勝ちゲームを落とした!小学校でも分かるだろ!クソが!☆1」


 ちなみに小学校ではなく『小学生』が正しい表記である。


 そして『人ログ』には『事実』なら評価していい、虚偽の評価はルール違反という決まりの盲点を突いて「これは事実だから書き込んでいい」と現在、プロ野球選手をボロクソに評価することが『人ログ』にて目立つようになってきた。野球は経験どころかテレビゲームでしかやったことがない素人の『熱心なプロ野球ファン』までもがこぞって『人ログ』に書き込んだ。今回はそんなお話。

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