第43話馬鹿弁護士

 夫人の長男は早急に服部弁護士の事務所へ電話した。電話番号は通知書にかかれてある。


「はい。服部弁護士法律事務所です」


「もしもし、塚原と申しますが。服部先生はいらっしゃいますでしょうか」


「少々お待ちください」


 そして流れる『平和』っぽいメロディー。


「お電話代わりました。服部です」


「塚原と申します。昨夜帰宅しましたらそちらの方から『特定記録郵便』が届いておりまして。その件です」


「ああ。あの件ですね。はい、ベイタル株式会社の東海林様より依頼を受けまして、今後は私がこの案件の窓口になると言うことです」


「そうなんですね。それは今後一切のあの解体工事の件はベイタルではなく、そちらにご連絡するようにということですか」


「はい。そうなりますね」


「では、電話では言った言わないになりますので別のやり取りをお願いしたいのですが。これはこちらからの『お願い』です」


「ええ。こちらもその方が助かります。お電話だと正確性がないんで書面でいただけるとありがたい。それだと東海林さんにそのまま示せるんで。あの伝えるニュアンスとかもあるんで。いや伝えた伝えてないとかね、多分この会話も録音されてるんだと思うんですけど」


 後半は明らかに塚原を小馬鹿にする笑い方が含まれた言い方をする服部。


(なんだ?こいつ)


 そう思いながら塚原は答える。ちなみに会話の録音などしていない。


「これはお願いになりますが。書面だとやはり時間も費用も掛かりますので。それならしっかりと『ログ』も残る『メール』でのやり取りでお願いしてもよろしいでしょうか?」


「ええ。書面もメールも同じですので。じゃあメールのやり取りでお願いします。いったん、こちらに送っていただけますでしょうか?」


「はい。今、パソコンの前にいますので。メールアドレスを教えてください」


「はい、すべて小文字でですね。チャイナのc、フランスのf」


「えー、復唱しますね」


「はい。それで合ってますね」


「では一度送信しますね。塚原の名前だけ入れて送ります。はい、今送信しました」


「はい。少々お待ちください。あ、確認とれました。このメールアドレスが塚原様のメールアドレスですね。それでは今後はメールでのやり取りでということでよろしいでしょうか?」


「はい。それでお願いします」


「ではよろしくお願います」


「はい。失礼します」


 そう言って電話を切る夫人の長男。先ほどまで話していた番号である服部弁護士の事務所の電話番号を『馬鹿弁護士服部』とスマホに登録する夫人の長男。そしてそこから攻防戦が始まる。と、同時に夫人の長男は『警察』、『役所』にもガンガンと電話をかける。これはすべて『司法に詳しい』知人からのアドバイスからの行動であった。

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