第26話ど真ん中スローボール

「はい。ご主人様。先制点いただきましたよ。それでなんでしょうか?」


「結果的に『人ログ』サイトはあの先生の人生を狂わせてしまったと思うんですよ。それでも『人ログ』は『正義』なんでしょうか?」


「そうですね。ご主人様。確かに報告ではあの彼女の先生は結果的に職場を失い、自宅も引っ越してしまいました。でも現地からの『正確』な報告が別に届いてます。聞きますか?」


「え?そうなんですか?それは聞きたいですね。あ、代打を出すのでタイムお願いします」


 そして『れいるうえいず』の二番バッターに代打を送るご主人様。


「さすがですわね。ご主人様。攻撃力重視ならそこは代打しかありませんからね。で、報告ですが本当に聞きたいですか?」


「だから聞きたいと言ってますけど…」


「それなら今からど真ん中にスローボールを投げますけど見送ってください。ご主人様」


「え?でも…。ツーストライクと追い込まれてますけど…。それでも見送らないとダメなんでしょうか?」


「その選択はご主人様にお任せ致しますわよ。では投げまーす」


「ちょ、ちょっと、待ってくださいよー」


 ご主人様の待ってください発言を無視してど真ん中スローボールを投げ込む姉上殿。思わずそれを打ってしまいホームランをかっ飛ばしてしまうご主人様。


「あーあ。ご主人様。それでは聞きたくないということでいいですね」


「いや、ゲームは一日一時間ですし。あれを見逃すのは『ガチ』モードならだめでしょう。それより意地悪せずに教えてください。僕も後で一球スローボールど真ん中投げますから」


「なら教えます。ご主人様。あの後、現地からの報告によると飯田恵美子は何とか頑張って担任の先生の所在地を突き止めます。あの先生は別の私立の学校にて教職に戻っています。それから個人的に飯田恵美子とあの先生は健全な関係を取るようになりました。それから彼女は学校を卒業し、無事就職も決まりました。それからあの先生と正式に異性としてお付き合いするようになりました。そのことであの先生を貶めるような書き込みもありませんし、彼女を貶めるような書き込みも今のところございませんとのことです」


「へえー。そうなんですか?」


「そうですよ。ご主人様。『人ログ』があの二人の恋のキューピットを受け持ったような形ですね。まあ、そんなドラマがあるのが『人ログ』の一面でもあるんです。『人ログ』サイトは使い方次第です。決して『悪』だとか『正義』だとか決めつけなくてもよいかと思いますよ」


「ならいいんですけど。あ、同点で姉上殿の『なむすたーず』の四番バッターですね。ど真ん中スローボール投げましょうか?」


「じゃあ、お願いします。ご主人様」


 そして思い切りスローカーブを投げ込むご主人様。


「…。ご主人様?ブチ切れますわよ」


「冗談ですよー。まだワンストライクじゃないですかー。次はちゃんと投げますから。ほら」


 そしてまた思い切りスローカーブ。


「…。ご主人様?書き込みますわよ」


「…。分かりました…」


 そして三球目のど真ん中スローボールをホームランする姉上殿。


「これはいい試合ですね。試合を続けながら次のパターンも考えてみましょう」


「分かりました。ご主人様。あれ?バク転しないですね」

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