第23話友達

 彼女は友達と部屋の中で話をした。


「そっかあ…」


「うん。まあ、新しいバイトもほとぼりが冷めたら見つけようかなって」


「でも許せないじゃん!なんで美恵子があんなこと書かれなきゃいけないのよ!あんたは私のパートナーだったじゃん!あんたのことは私が誰よりも知ってるし。『人ログ』って何よ!絶対許せない!」


 彼女の友達は本気で怒っている。自分のためではなく他人のために本気で怒っている。そしてそれが本当の怒りであることも彼女は知っている。


「もういいよ。裕子が知ってくれてるだけで私はいいよ」


「あんたが良くても私はよくないの!」


 昔から変わらない友達の言葉が本当に嬉しい。でも、本当に彼女は『本当のこと』をこのパートナーが知ってくれているだけでそれでいいとも思っていた。それぐらい嬉しかった。


「でも学校の担任もあんなだし。『人ログ』って登録しないと書き込めないんでしょ?」


 彼女はあれから『人ログ』について調べた。母親にはいずれ書き込みがバレるのかなあと一番に心配した。それから『人ログ』に未成年が登録するには親や保護者の同意が必要なことも知った。めんどくさいなあと思った。ただ、母親や弟や妹が悪く言われたり、それを知ったら嫌だなあと思っていた。


「うーん。私もそういうのは卑怯なもんだと思ってるから見ないようにしてたけど。あのまま放置しとくわけにはいかない。だってあんなのであんたの何が分かるってのよ。私もあんなサイトに登録はしないし、出来ないけど…。何とかするから。絶対に許せないもん」


「でも…。それで裕子が下手に動いて…」


「ちょっとお。あんた、私が低評価の書き込みをされる心配とかしてんじゃない?」


「でも…。私をかばうとその可能性もあるし」


「私は何を書かれたって平気なの!ただ、私のパートナーを知りもしないやつがあんな評価をしてることにムカついてんの!あんたのことは私が一番知ってるんだから。あんたに点数をつける奴はどれだけ偉いってんだよ!」


「もういいよ。裕子みたいに分かってくれる人は分かってくれるし。それでいいじゃん?」


「だーかーらー、あんたは嘘が下手なんだって。任しときなよ。私がなんとかするからさ!それより明日も一緒にバトミントンやろうよ」


「え…、美恵子。部活の方は?」


「部活より大事なことがあるの!」


 彼女は部屋の中で泣いた。ただいつもと違うのは一人じゃないってこと。

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