第21話て聞いたよ

「だってさあ。あの女、店長に特別扱いされてるのムカつかない?」


「そうねえ。私なんかいくら頑張っても時給は変わらないのに」


「え?そうなんですか?あの飯田さんは時給1100円にすぐ上がったって言ってましたよ」


 女同士の嫉妬心は恐ろしい。彼女のバイト先では他にパートで働く中年の女性や彼女より少し年上の大学生もいる。彼女は異性から興味を持たれやすい。外見もいいし、性格もいいし、何より若いから。でも時給は900円のままである。


「よく働くねえ。高校生なんでしょ?」


「ありがとうございます。実は訳アリでしてお金が必要なんです」


「そうなの?大変ね。頑張ってね。何かあったらいつでも相談にのるからね」


 彼女はバイト先の人たちもいい人ばかりだなあと思っていた。


「あれ?何?あのペンダント。あれってブランドものでしょ?」


「バイト代貯めて買ったの?」


「訳アリってなんだったの?てっきり進学費用とかそういうのを想像してたんだけど」


「ああ、ないない。だって自分で飽きっぽいって言ってたもん。どうせお小遣い稼ぎでしょ?訳アリ?ああ、なんか付き合ってる男が騙されたとかって聞いたよ」


「お客さんが言ってたけどなんかバトミントンで中学までは有名だったみたいよ。でもそれも飽きたからやめたって。どうせそんなもんでしょ。根性がないって言うか。今どきなんでしょ?」


 そして共通して彼女がバイト先の同僚である女から思われていたこと。


「ムカつく!ムカつく!ムカつく!ちょっと若くて見た目がいいからって調子に乗ってるよね!時給がすぐになんで私たちより上になるの?ムカつく!ムカつく!ムカつく!」


 でもそれは絶対に口にはしない。心の中で思ったり、それぞれの家庭や学校、友達に対しては吐き出す。そしてそれにひとりの人間が反応した。


「え?その子って〇〇高校じゃない?あそこってバイト禁止なはずだよ」


 それを聞いた女の一人が同僚と情報を共有する。そして加速する。

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