第20話飯田美恵子 十七歳。女性。☆2(1件)

 飯田美恵子 十七歳。女性。☆2(1件)


「学校で禁止されているアルバイトをしている。それで女子高生のくせに高額なペンダントをつけているのはちょっと…」


 さすがにスマホは持っている彼女だか料金を抑えるためにネットも使わない。通話もライン。ほぼ一番安いプランの基本料金を自分で支払っている。弟や妹たちに無料のゲームをやらせるためにもちょうどよかったのもある。課金はしない。だから『人ログ』もそういうサイトがあるんだぐらいに思っていたし、見たこともなかった。そこに自分の評価が書きこまれている。


「美恵子ぉー。あんた今までいっつも誘いを断ってたのって『バイト』してたから?」


「おい、飯田。昼休みに職員室まで来るように」


「えー、美恵子が?嘘でしょ?昔は一緒に真面目にバトミントンやってたのに。これ書き込んだの誰?」


「でも高級なペンダントって何?『人ログ』に『虚偽』の書き込みはアウトでしょ?それは本当なんでしょ?」


「じゃあバイトしてんじゃん」


「ひそひそ」


 彼女は平気で嘘をつく。


「すいませんでした。お小遣い欲しさでバレないと思ってバイトしてました」


「お前は中学までバトミントンでそれなりに活躍してたと聞いてたが。真面目に練習してない人間に活躍は出来んやろう。それがどうしてこんなことをしたんだ」


「だからお小遣いが欲しかったんです。いろいろ欲しいものがあるじゃないですか」


「そんなのみんな一緒だ!お前だから特別か!それに今の成績はなんだ!トップクラスで入学してきて大学もいいところを狙えるだろうが。それを校則違反までしてアルバイトか!それも勉強もおろそかにしてまで!真面目にやらんか!真面目に!他の頑張ってる人を見習え!」


「はーい。すいませんでしたー」


「なんだその言葉遣いは!そのペンダントとやらはどこにある!?先生が預かっておく!」


「いやです」


「なんだと!お前は校則違反をしたんだぞ!停学するか!それとも退学がええか!?それが嫌ならそのペンダントを持ってこい!先生から見て更生したと判断したら返してやる!」


 彼女は平気で嘘をつく。


「どうせ安物ですよ。捨ててもらってもいいですよ」


「なんだと!お前は反省しているのか!」


 パシーン!


 結局、ペンダントは没収され、彼女は一週間の停学処分となった。彼女の異変に気付いた母親が彼女に問いただす。


「なんかあったの?」


「ごめねえー。お母さん。あのペンダント、どっかに落としちゃった」


 彼女は平気で嘘をつく。


「あんたは…。まあ、別に私が勝手にプレゼントしたもんやし。あんたがそれでええならお母さんもそれでええから」


「うん…。でも多分いつか見つかると思う」


 彼女は停学中の一週間も普通に学校へ行くふりと帰ってくるふりを演じた。ただ、一人、部屋の中で泣いた。

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