第14話浮かれ気分でロケンロー
子汚い中年のおやじはすぐに特定された。そのお店の店長は実に優秀だった。
「あいつだろ?いつものせこい乞食だろ?」
携帯番号もライン登録もしている。メールアドレスも。顧客情報はすべて管理している。風俗店を利用する客は偽名を使うことが多い。子汚い中年のおやじが名乗っている名前が本名か偽名なのかは分からない。
「まあ、またそのうち来るだろう。なんならあいつにだけ特別優待券でもラインで送るか。50分コース無料券を送ればそっこーで来るでしょ」
ラインを送るとそっこーで食いつく子汚い中年のおやじ。
え!マジで!?50分コース無料券!?当選?やったぜ!指名は出来ないけどラッキー!無料券の有効期間は決められてるし、すぐに利用しないと使えなくなる。でもホテルは安いところでいいし。予定より早く遊びに行ける。別の店も考えてたけどラッキー!やらせてくれる女のところに行こうと思ってたけど。ラッキー!
店長は子汚い中年のおやじとプレイする女性スタッフにお小遣いを握らせる。
「うまくやってくださいね」
「大丈夫です。何かあればすぐにコールしますね」
お店に電話してくる子汚い中年のおやじ。またあのぼろくて安いホテルから。
「あのお、50分コース無料券でお願いします。はい、女の子はお任せします。でも出来るだけ若くて、痩せてる子でお願いします」
指名料は払わないけどちゃっかり自分の好みのタイプを思い切り主張してくる客は多い。子汚い中年のおやじもその一人。
「お待たせしましたー」
そしていつものパターン。
「やらせて」
「お店の人に怒られちゃうんでー」
「内緒にしとくからさあー。先っちょだけでいいから。二秒でいいから」
「それより『ラインの交換』しません?」
「え?」
「お店通して会うと私もお給料変わらないんでー。店外だと丸々自分のものになるもーん」
マジ!ラッキー!店外で俺専用の風俗嬢ゲット!時間も気にせずやれるじゃん!ラッキー!生でもゴムでもラッキー!一回一万ぐらい?でもこの店で50分コースの金額より安いじゃん。ラッキー!もしかしたらそのままセフレにしてしまえば毎回タダじゃん。ラッキー!風俗嬢のセフレゲット!ラッキー!
そして電話番号を交換。子汚い中年のおやじはプライベートの自分の携帯。女は店から持たされたお店用の携帯。
「それでー。実際の本名教えてくださいよー。鈴木一郎って絶対偽名でしょー?」
「本物だよ。なーんちゃって」
子汚い中年のおやじは寒い。
「本名はね」
「どの辺に住んでるんですか?遠いとあれだし」
「〇〇市だよ。最寄り駅は〇〇駅だよ」
「あ!私と近いー」
「ホント?『いいね』!『いいね』ボタン百回押したいぐらい『いいね』!」
子汚い中年のおやじは寒い。
「お仕事は…」
浮かれ気分のロケンローでペラペラ正直に個人情報を喋る子汚い中年のおやじは痛い。
「じゃあ、連絡するからねー」
「うん!待ってる!ていうか、早速送るからねー」
ラッキー!
藤田雄二 五十二歳。男性。☆1・05(98件)
「強姦、強姦未遂の常習犯」
「ドケチの乞食男。なんでももとを取らないと気が済まない男。牛丼屋のお持ち帰りで紅ショウガをあるだけ持ち帰ります。ドレッシングや七味も同じく」
「公共のお風呂に体を流さず飛び込みます。非常識すぎです」
「匿名で虚偽の書き込みをしまくりストレス解消してます。私も書かれました。営業妨害も普通にします」
「遅刻欠席がなく真面目に働く人」
「裏表が激しい。偽名を使って猥褻行為を繰り返してる」
「時間関係なくラインしてくる。相手のことを考えろ!ブロック」
子汚い中年のおやじの評価はもともとそんなものだったので特に生活に影響は出なかったが親族は非難された。
「へえー。あれってお前の親戚の人じゃね?」
「お前はいつまでも定職に就かずに何をやっておる!!妹の娘も学校で言われたぞ!!」
子汚い中年のおやじが反省したのかは分からない。ただ周りの人間に思い切り迷惑をかけた。
『人ログ』に書かれていたことは正しい。嘘は書かれていない。正しい評価である。
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