第13話プラス1Kで生中。即即。ざまあみろ!

 子汚い中年のおやじはまずお店のアンケートにボロクソ書いた。

 お店のホームページから送れる。サービス向上のためにお店はアンケートを送ってくれたお客さんには次回使える千円割引チケットをプレゼントしている。


「お相手した女性 『えり』


 手抜きにもほどがある。やる気のないサービス。こちらは高額な金を払っている。事務的でロボットのような流れ作業ではこっちも気分が悪い。二度と指名しない」


 次回使える千円ゲット。あの女にもダメージだ!今頃店の店長に怒られてるだろう。ざまあみろ!


 まだ気が済まない。誰が書いたか分からないだろう。バレないだろう。子汚い中年のおやじはお店のホームページの掲示板にも書き込んだ。


「えりさんは本番をやっています。こっちはそんなサービスを望んでいません。本番がしたければソープに行きます。いきなり跨られて挿入させられました。貴店はそんな女性を野放しにしているのですか?それともそういう教育をされているのですか?がっかりです」


 ざまあみろ!これであの女の評判はさらに落ちるぜ!店も困るだろう。あの女、めちゃくちゃ怒られるぜ!ざまあみろ!俺は正義のヒーローだ!


 まだ気が済まない。そういったお店専用の巨大掲示板に似た匿名の掲示板にも書き込む。


「〇〇の『えり』は生中。公衆便女。プラス1Kですぐやらせてくれるよ。即即。病気すごいので勇気ある方はどうぞチャレンジしてみては。店外も楽勝。歩く変態だからなんでもするよ。プラス1Kで」


 彼女はそういうサイトは見ないようにしている。


 ひそひそ。


 そういうサイトを見ている周りの女性スタッフが陰で話す。違和感を覚える彼女。自分の陰口が耳に入ってくる。接客したお客さんからも言われる。書き込みを見てそれを真に受けた客も殺到する。


「1Kでやらせてくれるんでしょ?」


「生中でしょ?」


「外で会おうよ」


「一週間風呂入ってない。はい、しゃぶって」


 嫌でも原因を知る彼女。それらを否定するが指名のお客さんは彼女がそんなことをしないのを知っているが新規の客はそれ目当てで来店する。店長に相談する彼女。韓流ドラマどころではない。源氏名を変えることも考えた。実際に退店したことにして源氏名を変えて新人扱いでホームページの写真を変える方法もある。でもいたちごっこで意味がない。店長はいい人だった。彼女をなんとか精神的に支え、少し休みを取らせたり、新規の客はつけないようにしたり。今まで真面目にやってきたのにと思う彼女。


 クソが!クソが!クソが!ぜったいあの子汚い中年のおやじに決まってる!あの乞食のせいで!クソが!クソが!クソが!ぶっころす!ぶっころす!ぶっころす!

 でも心で思うだけで口にはしない。


 泣き寝入りはしない。『人ログ』がある。

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